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» 2020年10月29日 10時00分 公開

3Dプリンティングの未来は明るい、今こそデジタル製造の世界へ踏み出すとき3Dプリンタ インタビュー(2/3 ページ)

[八木沢篤,MONOist]

シンガポール、日本での新たな取り組み

――特にHPが3Dプリンティングの展開に力を入れているシンガポール、日本において、今どのような新しい取り組みが進んでいますか。

ルミエール氏 私がよく知るシンガポールでは、政府の後押しもあり、産学官によるエコシステムづくりに力を入れている。2020年1月には、HPと南陽工科大学(NTU)、シンガポール国立研究財団(NRF)が共同で「HP-NTU Digital Manufacturing Corporate Lab(HP-NTU Lab)」を開設した。ここでは主に、HPの研究開発(R&D)部門のリソースを活用しながら、大学とともに応用研究に取り組んでいる。

「HP-NTU Digital Manufacturing Corporate Lab」について 「HP-NTU Digital Manufacturing Corporate Lab」について ※出典:HP [クリックで拡大]

 このラボでの成果物の1つに、製品パッケージのための「モールデッドファイバー(Molded Fiber)(※1)」の開発がある。これは独自の演算アルゴリズムを用いて目的の形状に適したモールデッドファイバーをデジタル設計、製造するもので、サスティナビリティ(持続可能性)の観点からも注目されている、既に商用化されたソリューションだ。

※1:古紙などの植物繊維を主原料とする紙製の成形品で、緩衝材などに用いられる。「パルプモールド」とも呼ばれる。

 また、3DプリンティングやAI(人工知能)、ロボティクスなど、「インダストリー4.0」に関する技術を研究・分析し、HP製品の製造プロセスの向上を目指す「Smart Manufacturing Application&Research Center(SMARC)」という施設がHPのキャンパス内にある。シンガポール経済開発庁(EDB)の支援を受けており、HP自身の製造プロセスの向上だけでなく、ここで培ったスキルや知識をサービスやコンサルティングとして、お客さまにも提供する取り組みも行っている。新たに、Singapore Manufacturing Federation(SMF)とMOU(基本合意書)を締結し、シンガポールの製造業に対して、3Dプリンティングの普及やイノベーション創出を支援していくことになっている。

Smart Manufacturing Application&Research Center(SMARC) Smart Manufacturing Application&Research Center(SMARC) ※出典:HP [クリックで拡大]

ルミエール氏 このようにHPはシンガポールにおいて、産学官連携を進め、地場のエコシステムづくりにも力を注いでいる。HP-NTU LabやSMARCなどを通じて、専門家や最先端のテクノロジーにすぐにアクセスできるため、シンガポールでの3Dプリンティングのさらなる普及が期待される。

日本HP 3Dプリンティング事業部 事業部長の秋山仁氏 日本HP 3Dプリンティング事業部 事業部長の秋山仁氏

秋山氏 一方、日本では、シンガポールとはまた違った視点でのコラボレーションが進んでいる。メーカーと受託造形を行うサービスビューロとのコラボレーションだ。こうした取り組みが国内で進みつつある。

 サービスビューロの立場で見ると、これまではメーカーからパーツ造形などの依頼を受けてモノを作り(造形して)、納品するといういわゆる“試作屋”の意味合いが強かった。だが、彼らが保有する3Dプリンティングに関するノウハウや高度な技術は、今後、メーカー自身が3Dプリンタを導入・適用する際の助けとなり、単独で全てをやるよりも、プロフェッショナルであるサービスビューロの力を借りて、一緒に3Dプリンタの適用を検討した方が近道になる。こうした考え方が、今、広まりつつあるのだ。

メーカーとサービスビューロの連携 メーカーとサービスビューロの連携(コラボレーション)について ※出典:HP [クリックで拡大]

 また、自社で3Dプリンタを保有せずに、サービスビューロと一緒にMulti Jet Fusionを用いて試作開発から最終製品の製造まで進め、ビジネスを展開する企業も増えてきている。ベンチャー企業のOUIが開発する眼科疾患を診断するための医療機器「Smart Eye Camera」がその一例だ。

ベンチャー企業のOUIが開発する医療機器「Smart Eye Camera」 ベンチャー企業のOUIが開発する医療機器「Smart Eye Camera」 ※出典:SOLIZE Products [クリックで拡大]

“トラステッド・パートナー”としてのHP

――これから先、ニューノーマル(新常態)の時代において、3Dプリンタメーカーに求められるものとは何でしょうか。そうした声に対して、HPはどのように応えていきますか。

ルミエール氏 3Dプリンティング領域において、今、お客さまが求めているのは信頼できるパートナー、“トラステッド・パートナー”の存在だ。その点、HPは長年グローバルでビジネスを展開しており、世界中の多くの企業に対して製品、サービス、ソリューションを提供してきた実績がある。

 3Dプリンタに対する顧客要件としては、コスト、スピード、品質などが考えられるが、最も重要なのはスキルセットだ。HPはグローバルで高度な専門知識を有するエンジニアが多数おり、検討・検証から導入、立ち上げ、スケール(適用拡大)までの全てにおいて必要な知識や技術を提供し、3Dプリンタ活用を全面支援する用意がある。また、そのとき、必要に応じて強力なパートナーエコシステムを動員して、支援することも可能だ。グローバル展開し、複数拠点に分散して3Dプリンタを活用するようなケースであっても、HPとそのパートナーエコシステムであれば皆さんのビジネスを後押しできる。

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