ロボットのルート探索を超効率化、ノルウェー発の物流自動倉庫システムが進化物流のスマート化

物流自動化システムを開発するノルウェー企業のAutoStoreは2020年10月27日、自動物流倉庫システム「オートストア」において、ロボットによる高効率なルート探索を実現するアルゴリズムなどを含んだソフトウェアスイート「Router」の開発を発表した。

» 2020年10月29日 14時00分 公開
[池谷翼MONOist]

 物流自動化システムを開発するAutoStoreは2020年10月27日、自動物流倉庫システム「オートストア」における、ロボットによる高効率なルート探索を実現するアルゴリズムなどを含んだソフトウェアスイート「Router(ラウター)」の開発を発表した。

既存の物流倉庫よりも省スペース化

 AutoStoreはノルウェーに本拠地を置く企業だ。オートストアの内部には、格子状に組まれたロボットの走行用レール「グリッド」が設置されている。このグリッドの下部には「ビン」と呼ばれる専用コンテナが格納されており、グリッド上を走行するロボットは目的のビンをピックアップして、外部の受け取り口(ポート)にまで搬送する。ロボットやビン、ポートの数は顧客の要望に応じてカスタマイズして提供する。

オートストアの外観と内部イメージ オートストアの内部構成イメージ[クリックして拡大]出典:AutoStore

 作業用通路などを排した構造のため、通常の物流倉庫に比べて約4倍のスペース効率を実現している。このため都市型物流倉庫など、比較的敷地面積が狭い場所に設置するのに適している。省電力性にも優れており、ロボット10台の稼働に必要な電力量は一般的な掃除機1台分の消費電力と同程度で済むという。

AutoStore CEOのKarl Johan Lier氏

 オートストアは米国や欧州、韓国、日本を中心に、世界30カ国で500件以上の導入実績がある。製造業分野をはじめ、アパレル業界や、サードパーティーロジスティクス(3PL)などの物流業界、生鮮食品業界などを中心に多数の引き合いがある。国内では2014年から販売を開始し、パートナー企業であるオカムラと提携した他、2019年1月からは東京に拠点も設立するなど積極的に事業展開を進めている。国内での累計販売実績は40件以上で、ニトリやパナソニック、コープさっぽろをはじめとした多数の企業が導入する。

 AutoStore CEOのKarl Johan Lier氏は「都市部を中心にEC需要が急増しており、都市型物流倉庫の需要も高まっている。これに伴ってオートストアのニーズも増加していくと考えている」と展望を述べた。

Routerでスループットを従来比4倍に

AutoStoreのJonas N. Jakobsen氏

 既存の顧客からは、オートストアのポートから送り出されるビンの量(スループット)をさらに増やしたいという要望も多く寄せられる。このため顧客はロボット数やポート数の増加を希望するのだが、AutoStore システムデザイン担当ディレクターのJonas N. Jakobsen氏は「多くのロボットがオートストア内で動き回っている状態だと、ロボットにとって最適な走行ルートを導出し、制御するために複雑な計算を行わなければならない。また、稼働するロボットが一定数以上に増えると、かえってビンの運搬効率が低下してしまうという問題点もあった」と課題を抱えていたことを説明する。

 こうした課題点を可能にするべく開発したソフトウェアがRouterだ。ロボットのルート探索アルゴリズムを改良し、他のロボットの走行状況を踏まえながら、最適なルートをリアルタイムで判断する。これによって、既存のソフトウェアと比較して、ポートからのスループット量を約4倍程度向上させることができたという。

Routerの実装によってロボットのルート探索効率は向上する[クリックして拡大]出典:AutoStore

 「従来、例えば2万5000個のビンを格納しているオートストアでは、ロボットの台数は140〜160台をピークに運搬パフォーマンスは低下する傾向にあった。しかし、Routerを使用すると稼働台数を増やしてもパフォーマンスの低下は見られない。それでいて、高水準なスループットを達成する」(Jakobsen氏)

従業員の待機時間を減らし、生産性向上に貢献する[クリックして拡大]出典:AutoStore

 AutoStoreはRouterを既に6社の顧客に対して導入している。Jakobsen氏は実際の導入事例も紹介した。160台のロボットと6万7000個のビン、22のポートを備えたオートストアにRouterを導入したところ、ロボットの走行動作全体の最適化により、結果として、ポート前でビンの受け取りを待つ作業員の待機時間を62%削減することに成功した。Routerの導入が、倉庫作業に関わる従業員の生産性向上につながる可能性が見えてきたという。

Routerの実装によってロボットのルート探索効率が向上する[クリックして拡大]出典:AutoStore

 Jakobsen氏は「Routerでロボットの走行を最適化すれば、当然、1つのオートストア内でより多くのロボットを稼働させることが可能になる。だが、それと同時に走行の効率性を高めることで、ロボットの数を減らすという選択肢も取れる。ロボットの台数を減らせば、メンテナンスコストも抑制できる。倉庫を拡張するのではなく、コンパクトにするという方向性は、近年国内外でニーズの高まっているマイクロフルフィラメントセンターを考える上でも重要になってくるだろう」と指摘した。

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