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» 2020年11月02日 06時00分 公開

日本は「自動車産業After2050」を考えるときではないか和田憲一郎の電動化新時代!(39)(2/3 ページ)

[和田憲一郎(日本電動化研究所 代表取締役),MONOist]

2050年以降の真空地帯をどう読むか

 各国規制でも2050年以降の動向については語られていない。またこの時点になると、各国市場もゼロエミッション車となっており、そこから先はある意味、真空地帯といえる。未来の話なので、見当もつかないと思われる方もいるかもしれないが、現時点で幾つか推定できることもある。あくまで筆者の考えであるが、その時起こると思われる現象を、キーワードとして3つ挙げてみたい。

(1)自動車動態の変化

 全てがゼロエミッション車となると、好むと好まざるにかかわらず、2050年以降は乗用車だけでなく、バスやトラック、タクシー、鉄道など多くの分野において自動運転車が普及するだろう。

 「普及」を現時点でイメージしやすいのは、自動運転車のみが走行できる新都市・中国の雄安新区だ。雄安新区は、日本の最小都道府県である香川県とほぼ同じ面積を有し、第1次完成となる2035年の時点で人口100万人を計画している。着々と建設を推進しており、2050年ごろには目標とする人口200万〜250万人が自動運転車のみで生活をすることとなる。日本国内で比べると、札幌市の人口が197万人、名古屋市の人口が232万人だ。

 このような規模の人口で自動運転車を利用するとき、誰が自動運転車をコントロールするかと考えると、途中で停止した場合や事故発生時の対応、日々の充電など、さまざまな要素が絡むことから、おそらく全体をコントロールするサービス企業に任せることが多くなるのではないか。このサービス企業は、自動車メーカーが運営する場合もあるかもしれないが、モノづくりとはやや分野が異なり、IT企業がその役目を担う可能性が高い。中国の例でいえば、杭州で都市交通全体をコントロールしているのはアリババ(アリクラウド)で、深センで同様な事業を展開しているのはテンセントである。

 乗用車や移動専用車で自動運転が多くなると、ユーザーはあまりクルマのスタイリングに関心を持たなくなるだろう。何人乗りか、キャリーバッグが幾つ積めるかなどが重視される。そうなると自動車メーカーはユニークなクルマを製造するか、このような汎用(はんよう)性の高いクルマを製造するかに分かれる。いずれにしても自動車メーカーの数は激減し、1社当たりの生産数や販売数は増加する。

 また、バスやトラック、タクシーなど旅客・物流関連のドライバーも激減する。特に高速道路などで自動運転車レーンを設定すると、市街地では手動運転でも、高速道路は完全自動運転ということも起こり得る。バスやトラックなどでも、高速道路の始点までは手動運転で来て、そこからは無人の完全自動運転に任せることも可能になる。いずれにしても、ドライバーの職業は大幅減少し、産業構造上、大きな変化となるであろう。

図表3:推定される自動車動態の変化(クリックして拡大) 出典:出典:日本電動化研究所

(2)PHEVの立ち位置変化

 もう1つの懸念はPHEVの立ち位置の変化である。これまでEVは電池容量に限りがあり、走行距離に対して不安が伴うことから、それを補う技術としてPHEVが開発されてきた。しかし、構造が複雑であり、かつ近年はZEV規制などを受けてモーターのみで走行できるEV走行距離を長くすることが求められた結果、大型の電池を搭載する例が増えてきた。EVにかなり近づいたといえる。

 また環境規制では、ゼロエミッション車の一部、もしくは新エネルギー車のカテゴリーとして捉えられてきた。しかし、2035年のZEV規制や欧州各国におけるガソリンエンジン車・ディーゼルエンジン車の販売規制を考えると、筆者の推測であるが、2050年前後にはZEV規制や新エネルギー車の対象車から外されていくように思える。

 さらに、2035年前後からガソリンスタンドの廃業が相次ぎ、PHEVの減少に拍車を掛けるであろう。ユーザーも将来のガソリンスタンド減少を考えると、購入候補から外してしまうのではないか。現在PHEV開発に注力している企業は、今後PHEV存続の危機に対して覚悟が必要であろう。

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