特集:IoTがもたらす製造業の革新〜進化する製品、サービス、工場のかたち〜
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» 2020年11月02日 11時30分 公開

モノづくり最前線レポート:デジタル時代の製造業、勝ち筋は80%をつかみ取る「人中心」の考え (1/2)

「ロボット新戦略」に基づき「ロボット革命」を推進するために民間主導で設立された組織的プラットフォーム「ロボット革命・産業IoTイニシアティブ(RRI)」は2020年10月27日、国際シンポジウム「製造ビジネス変革 日本の道」を経済産業省の共催で開催した。本稿では、その中で「日本の製造業の生きる道」をテーマとしたパネルディスカッションの内容を紹介する。

[三島一孝,MONOist]

 「ロボット新戦略」に基づき「ロボット革命」を推進するために民間主導で設立された組織的プラットフォーム「ロボット革命・産業IoTイニシアティブ(RRI)」は2020年10月27日、国際シンポジウム「製造ビジネス変革 日本の道」を経済産業省の共催で開催した。

 ロボット革命・産業IoTイニシアティブ協議会は「ロボット新戦略」実践組織として2015年5月に発足。「世界のロボット・イノベーション拠点としての日本」「世界一のロボット利活用社会」「IoT時代の到来を見据えたロボット新時代への世界の中でのイニシアティブの発揮」などを目標に掲げている。もともとは「ロボット革命イニシアティブ協議会」という名称だったが、実質的には「ロボット」の枠にとどまらない取り組みを行っていることから2020年6月に「ロボット革命・産業IoTイニシアティブ協議会」へと改称している。

 RRIは毎年活動報告も兼ねたシンポジウムを開催してきたが2020年はオンラインを中心に10月12〜14日、10月27日という4日間の開催となった。本稿では、その中で10月27日に開催された、「日本の製造業の生きる道」をテーマとしたパネルディスカッションの内容を紹介する。パネルディスカッションは、RRI会長で三菱重工 相談役の大宮英明氏、システムイノベーションセンター 代表理事・センター長で、ファナック 副社長の齊藤裕氏、東芝 執行役上席常務 最高デジタル責任者の島田太郎氏が登壇した。モデレーターは野村総合研究所 産業ITイノベーション事業本部 主席研究員の藤野直明氏が務めた。

photo RRI国際シンポジウムにおけるパネルディスカッションの様子(クリックで拡大)出典:RRI

製造業にとってDXはどういう意味を持つか

photo システムイノベーションセンター 代表理事・センター長で、ファナック 副社長の齊藤裕氏

 最初のテーマとしては「DX(デジタル変革)が製造業にどういう意味を持つか」という問いかけとなった。ファナックの齊藤氏は「日本は数十年前に制御システムでは世界1位となった。制御システムではデジタル技術が活用されており、デジタル化を経験していないかというとそういうわけではない。しかし、ITの進化の中で、より個々の人に最適化するUX(ユーザー体験)が重視されるようになっている。その変化に日本は対応できていない。つまりモノ中心から人中心に考え方を変えなければならない。人中心でかなえるとモノではなく、つなぎ合わせる『システム・オブ・システムズ』の考えが重要になる。またエコシステムを作るプラットフォームが重要になる」と「人中心」の考え方の重要性を訴えた。

 一方、東芝の島田氏も「人中心」の考えに同意する。「米国でプラットフォーマーが成功したのは、個人にとっての価値を追求したからだ。それが自然発生的にプラットフォーマー化していっただけで結果論である」との考えを述べた。

 ただ、こうしたプラットフォーマーが生まれてきた流れを知見として活用すべきだとし「スケールフリーネットワーク」と「パーコレーション理論」について説明した。「人のつながりは正規分布にならず、一部が大部分のつながりを持つべき分布になりカオスの状況が生まれている。これがスケールフリーネットワークでこれが社会そのものである。こうした中では、一定の使用者数が増えると一気に定着するパーコレーション理論が当てはまる。こういうことを考えると、プラットフォームやシステム・オブ・システムズの仕組みは壮大で堅牢なシステムを想定しがちだが、実はシンプルでありきたりなシステムやネットワークでこそ生まれるものになる。ドイツのインダストリー4.0では管理シェルが重要視されているがこれはスケールフリージェネレーターと呼ばれている。その意味で『コトが起きる場所を作ること』がプラットフォームやDXの本質だ」と島田氏は強調した。

 RRI会長で三菱重工の大宮氏は製造業の現状からの変化を示した上で問題提起を行った。「デジタル化のインパクトとして、開発手法の変化、製品メカトロニクスの革新、顧客オペレーションの最適化、バリューチェーン全体のデジタルツイン化によるビジネス革新、競争優位確保の難しさなどさまざまな変化が起こっている。特に顧客提供価値が大きく変化している。製造業のバリューチェーンの中で設計開発や製造などのモノづくりにおけるすり合わせが従来は大きな価値を持っていたが、その価値が下がり、企画・計画段階におけるアセット管理コンサルティングや、販売後のオペレーションデータの活用が重要になってきている」と語った。

価値のネットワーク化をいかに簡単にするか

 これらのDXについての考えに対し齊藤氏は「データドリブンとされる今の動きはファクトで改善する製造業の『三現主義』が世の中に広がったものだということもいえる。DXでより広い範囲に価値を適用することで生まれる新しい価値がある。フリースケールジェネレーターという話もあったが、世の中を変えるためには、自分や自社だけではだめだ。さまざまな人が参加して相互運用性の中で発展するものとなる。その場の1つが今注目されているプラットフォームだと考える。その中で共創環境、競争環境を作っていく。そういうことが『もっと良い生活』や『もっと良い仕事』につながっていく」と述べている。

 加えて、島田氏は「ネットワーク化の簡単さ」次第では日本の製造業には大きな可能性があると訴える。「オンラインショッピングの機能がどれだけ発展してもデジタルの世界だけで完結するのは20%だといわれている。80%は実際の店舗で購入したいというのが人の本質的な特性だといえる。Amazon.comなどがリアル店舗に参入しているのはこうしたデジタルでは届かない領域があることを示している。しかし、フィジカルの世界は今ネットワーク化されておらず、デジタル世界と同等の利便性が実現できていない。80%のフィジカル世界をコネクテッド化していくことが日本の役割だと考えている。まさにデジタル第2戦の幕が切って落とされた状況で、ここでは勝者になれる可能性がある」と島田氏は訴えている。

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