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» 2020年11月09日 11時00分 公開

商品改良時の特許保護と海外における特許取得の注意点弁護士が解説!知財戦略のイロハ(7)(2/3 ページ)

[山本飛翔,MONOist]

海外で特許取得するための4つの方法

 海外地域で特許権の取得を目指す場合、以下の手段が考えられます。

(1)各国へ直接出願(基礎出願無し*2)

(2)パリ条約を利用して各国へ出願(基礎出願あり)

(3)PCTを利用して各国へ出願(基礎出願の有無にかかわらず可能)

(4)(欧州へ進出する場合)EPC出願


*2)基礎出願とは、優先権を主張する際に基礎となる日本国内での出願のこと

 以下、それぞれについて簡単に紹介しますが、いずれの選択肢を選ぶべきかは個別の案件により異なるため、以下の概要を理解した上で、弁理士や弁護士にどの手段をとるか相談することが望ましいでしょう。

(1)各国へ直接出願

 この場合、権利の取得を希望する国の特許庁に、その国の国内法と言語に準じて出願書類を作成し、出願する必要があります。現実的には、国内の法律事務所や特許事務所に相談し、各国の代理人を紹介してもらい、国内の代理人を通じて当該国の代理人とコミュニケーションをとりつつ出願書類を作成することになるでしょう。

 ただし、基礎出願を活用しない類型になるため、日本で先に特許出願していた場合には、当該出願も特許性の判断資料になります(特許性を判断する基礎となる資料は世界中のものが対象となる)。当該出願で開示された内容で特許出願を行うと、新規性がないと判断されるおそれがあります。

(2)PCT を利用する場合(PCTルート)

 PCTとは「Patent Cooperation Treaty」、すなわち「特許協力条約」の略称です。PCT出願では、PCT加盟国である自国の特許庁に対して、特許庁が定めた言語(日本の特許庁の場合は日本語もしくは英語)で作成した、国際的に統一された出願願書を1通だけ提出します。すると、その時点での全PCT加盟国に対して「国内出願」を出願したのと同等の扱いを得ることができます(みなし全指定)。出願時に特許を得たい国を決めておく必要はなく、(日本国内での)基礎出願日を全てのPCT加盟国で出願日として取り扱うことができます。

 ただし、発明に対する特許の付与は国ごとに行われます。そのため、最終的には特許を取得したい国を決めた上で、それらの国に対してPCT出願の明細書など全文の翻訳文を提出し(国内移行)、かつ特許付与の可否についての実体審査を受ける必要があります(国内段階)。この国内移行手続きは、後述のパリルートと組み合わせて優先権を主張した場合*2)はその優先日から、初めからPCT出願をした場合には国際出願日(PCT出願の出願日)から原則30カ月以内に行えばよいと定められています。パリルートに比べて、非常に長い猶予期間が与えられているのが特徴の1つです。

*2)PCTの加盟国について、特許庁のウェブサイトを参照されたい。

 PCT出願は出願の手続きを簡素化するだけでありません。国際出願に関する独自の便利な制度も利用可能になります。例えば、PCT出願をすると、その発明に関する先行技術があるか調査する国際調査が、全ての国際出願に対して行われ、その結果(国際調査報告)が出願人に提供されます。その際には、その発明が進歩性、新規性など実体的な特許要件を備えているかについての見解書(国際調査見解書)も提供され、自社の発明について評価をするための有効材料として利用できます。

 さらに、希望すれば特許取得のための要件について予備的な審査(国際予備審査)も受けられます(各国が行う特許付与のための審査ではない)。

(3)パリ条約を利用する場合(パリルート)

 パリ条約を利用して海外に出願する場合、基礎となる日本の出願から1年以内に出願手続きを行う必要があります。この期限を順守すれば、特許性が認められるかという判断基準は基礎出願日にすることができます。PCTルートと比較した場合のパリルートのメリット、デメリットは以下の通りです。

(i)パリルートのメリット

  • 先述のPCTルートの場合に比べて、早期権利化が図れる可能性が高い
  • 1〜2カ国出願の場合、PCTルートよりも安価に出願できる

(ii)パリルートのデメリット

  • 基礎出願から1年以内に外国出願をしなければならない
  • PCTの国際調査報告書のような特許性判断資料提供がない

(4)EPC出願

 EPCは「European Patent Convention」、欧州特許条約の略称です(正式名称はConvention on the Grant of European Patents:欧州特許の付与に関する条約)。出願は、特許を得たい欧州圏の国への出願をまとめて行うもので、手続きが簡素化されるため、出願人の労力や費用負担が軽減されるメリットがあります(出願国が多いほどメリットは大きい)。EPC出願は、直接EPC出願を行う場合のみならず、パリルートを経由することやPCTルートを経由することも可能です。

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