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» 2020年11月10日 06時00分 公開

コロナ禍でも圧倒的に強いトヨタ、「下請けたたき」は本当かいまさら聞けない自動車業界用語(7)(2/4 ページ)

[カッパッパ,MONOist]

厳しい価格要求の根拠になっているのは

 ただし、トヨタの中で作る内製部品は全体の30%に過ぎません。それ以外の70%を占める、サプライヤーからの調達部品にも原価低減は必要です。世間では「トヨタというブランドや購買力でサプライヤーの部品を安く買いたたいている」とよく言われますが、果たしてそれは正しいのでしょうか。

 実際、サプライヤーの立場からすると、トヨタに対して高い利益を乗せて部品を販売することは非常に難しくなっています。それはトヨタが部品の適正価格を把握する査定力を持っているからです。

 トヨタは自社内で1円にも満たないところも含めて極めて細やかな原価管理を行っているため、こうした自社の実績やノウハウを基に、購入部品の材料や生産工程、工法を推定することが可能なのです。これにより、サプライヤーの見積もりに対して価格を類推し、精査できるという強みがあります。

 その力は、自動車の生産以外でも発揮されています。中部セントレア空港の建設がスタートするとき、中部国際空港の初代社長に就任したトヨタ出身の平野幸久氏は、トヨタ流のコスト削減を徹底して業者を選定しました。これにより、通常の公共事業のように予算を使い切るのではなく、予算に対し総事業費の2割削減を達成しました。

過去の記事から再掲。目標原価は既存の設計に対する改善で達成できる(クリックして拡大)

 ただ、トヨタでも自社で開発したことのない部品に関しては、的確な価格を査定することができません。そうした場合、トヨタは自らその部品を開発し、社内ノウハウを蓄積するという道を選ぶことがあります。半導体や電子部品がその一例です。

 かつて、車載半導体や車載電子部品はトヨタの内製ではなく、グループ会社であるデンソーが担当していました。そのためトヨタには半導体の生産ノウハウがなく、部品単価が適正であるか分からないという課題がありました。そこでトヨタは半導体や電子部品を手の内化するために広瀬工場を建設し、設計から内製化を始めました。結果として数千億円の投資となりましたが、トヨタはデンソーに対し自社の原価をもとにした部品単価を要求できるようになりました。

 外注部品にコストを垂れ流すのなら、自社で多額の投資をしてでも内製化して研究し、原価をつかむ……部品の原価査定力はトヨタの大きな強みなのです。外注部品に不必要にコストをかけないのは、クルマを買う人のためにトヨタが絶対に譲れないポイントです。系列のサプライヤーをもうけさせるために、車両の販売価格が高くなるとしたらどうでしょうか?

 また、トヨタはサプライヤーに対して年次ごとに単価を下げるよう、価格改定を申し入れます。売上高や会社規模により改定率は異なりますが、サプライヤーは利益を上げるため、価格改訂以上の原価低減をしていかなくてはなりません。

サプライヤー選びは価格だけで決まるわけではない

 しかしながら、トヨタに部品を供給するサプライヤーは価格だけで選ばれるわけではありません。安定した品質と納期で供給できることが大前提として求められます。クルマはたった1つの部品が欠けただけで生産が止まりますし、一度採用が決まれば開発から量産、補給期間を含めると10年を超える付き合いになります。その期間、安定して供給できることが何より重要なのです。

 もし、サプライヤーが赤字で取引を続けて経営が破綻し、部品を納入できなくなれば、トヨタもクルマを作ることもできなくなります。原価低減のために部品の値段を抑える必要はありますが、サプライヤーが利益を上げながら継続して部品を納められる値段を、トヨタとサプライヤーの双方で決めています。トヨタ側から一方的に値段を決めているわけではありません。

 サプライヤーは厳しく査定された値段から少しでも多くの利益が出るよう、生産性を向上させます。また、年次の価格改訂にも対応できるよう、日々カイゼンを積み重ねていきます。こうした結果、他の自動車メーカーから見てもグローバルで通用する価格競争力の部品を作り出す事ができているのです。トヨタの厳しい原価査定力は、サプライヤーの成長にもつながっているのです。

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