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» 2020年11月16日 07時30分 公開

人工知能ニュース:視覚障害者を支援するAIスーツケースが実証実験開始、コンソーシアムも発足

アルプスアルパイン、オムロン、清水建設、日本IBM、三菱自動車の5社は「一般社団法人次世代移動支援技術開発コンソーシアム(CAAMP)」を設立し、AIを活用して視覚障害者の自立移動を支援する統合ソリューション「AIスーツケース」の社会実装を目指した実証実験を開始すると発表した。

[朴尚洙,MONOist]

 アルプスアルパイン、オムロン、清水建設、日本IBM、三菱自動車の5社は2020年11月12日、「一般社団法人次世代移動支援技術開発コンソーシアム(Consortium for Advanced Assistive Mobility Platform:CAAMP)」を設立し、AI(人工知能)を活用して視覚障害者の自立移動を支援する統合ソリューション「AIスーツケース」の社会実装を目指した実証実験を開始すると発表した。同日から三井不動産の商業施設「コレド室町3」(東京都中央区)での実証実験を開始しており、今後は、国内の商業施設、公共交通機関、大学構内などへ拡大させていく方針だ。

AIスーツケースの利用イメージ AIスーツケースの利用イメージ。なお、このAIスーツケースのスーツケース部分は、英国のスーツケースブランド「グローブトロッター」の製品を土台に吉本英樹氏(Tangent Design and Invention)がデザインしたという(クリックで拡大) 出典:三菱自動車
「コレド室町3」におけるAIスーツケースの実証実験の様子(クリックで再生) 出典:CAAMP

 AIスーツケースは、視覚障害者が自立して街を移動することを支援するために、日常生活で無理なく携行できることに着目したウェアラブルデバイスとスーツケース型ナビゲーションロボットから構成されている。ウェアラブルデバイスは顔画像認識用のカメラや触覚インタフェース、音声ガイダンス用のスピーカーなどが用いられており、スーツケース型ナビゲーションロボットは位置情報システムと周辺を認識するための距離センサー、加速度センサー、AI機能を担うPC、電源などから成る。

AIスーツケースの構成要素 AIスーツケースの構成要素(クリックで拡大) 出典:アルプスアルパイン

 AIスーツケースは、3つの移動を支援する機能と、3つの行動やコミュニケーションを支援する機能、合計で6つの機能を持つ。移動支援では、位置情報と地図情報から目的地までの最適ルートを探索する機能、音声や触覚などによる情報提示を交えながら誘導する機能、映像とセンサーの情報から障害物を認識し避ける機能がある。行動とコミュニケーションの支援では、位置情報とクラウド上の知識情報から、周囲のお店の案内や買い物の支援を実現する音声対話機能、映像から知人を認識し、表情や行動などから相手の状況を判断し、円滑なコミュニケーションを支援する機能、映像およびセンサーの情報から周囲の行動を認識し、「行列に並ぶ」などのその場に応じた社会的な行動を支援する機能を実現している。

 さらに、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対応する機能も追加した。映像およびセンサーの情報からソーシャルディスタンスを確保したり、映像からマスク着用有無を判定し音声と触覚(振動)で知らせてユーザーの状況に応じた行動を支援したり、マスク着用時でも映像から知人を認識し円滑なコミュニケーションを支援したりといった機能がある。RFIDを導入する店舗限定だが、商品タグのRFIDをスマートフォンで読み取らせることで、手に取った商品の情報を音声で伝え、買い物を支援する機能も用意した。

 CAAMPの参加企業と貢献技術は以下の通り。アルプスアルパインは触覚インタフェース、オムロンは画像認識および各種センサー、清水建設は建築計画や屋内外ナビゲーション、ロボティクス技術、日本IBMはAIやアクセシビリティー、屋内外ナビゲーション、コンピュータビジョン、クラウドコンピューティング、三菱自動車は自動車開発やモビリティ全般。代表理事と事務局は日本IBMが、理事はオムロンと清水建設が務める。

 なお、慶應義塾大学と早稲田大学が賛助会員として参画し、AIスーツケースをプラットフォームとした研究活動を行う予定だ。実証実験には日本点字図書館と日本盲導犬協会が参画し、視覚障害者の移動支援や技術的課題の解決に向けた知見を提供する。

 CAAMP設立のきっかけとなったのは、IBMフェローで視覚障害者でもある浅川智恵子氏が米国のカーネギーメロン大学(CMU)で行っていた視覚障害者のためのスーツケース型誘導ロボット「CaBot」の研究になる。今後はCMUをはじめとした各大学や関連する視覚障害者支援団体と協力して新しいアクセシビリティー技術の開発も進めるという。

 近年、高齢化に伴う視力の低下や緑内障をはじめとする目の疾患発症などにより、視覚障害者は増加している。日本眼科学会の調査によると、日本には推定164万人の視覚障害者がおり、その内、全盲の視覚障がい者数は18.8万人に上る。世界全体でも視覚障害者数は2050年までに3倍になるという研究結果もあり、その爆発的な増加は大きな社会課題となっている。

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