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インタビュー
» 2020年11月17日 06時00分 公開

センシング:LiDARの小型化と広視野角の両立へ、三菱電機の社内にそろっていた基盤技術 (1/2)

LiDARを手掛けるサプライヤーが多い中、どのように技術的な強みを発揮するか、三菱電機 先端技術総合研究所 先進機能デバイス技術部長の山向幹雄氏に話を聞いた。

[齊藤由希,MONOist]

 LiDAR(Light Detection and Ranging、ライダー)を採用する量産車両が少しずつ現れ始めた。LiDARは、車両や歩行者などの周囲にある対象物にレーザーを照射し、反射してくるまでの時間を計測することで正確な距離を測定し、周辺の状況をリアルタイムかつ立体的に把握できるセンサーだ。複雑な条件に対応した高度なADAS(先進運転支援システム)や自動運転技術の実現に不可欠なキーデバイスといわれている。

 LiDARを採用したモデルはいずれも各社のフラグシップセダンだ。レベル3の自動運転システムなど、周辺環境の高度な認識が求められる車両制御技術を搭載するという共通点がある。

 アウディは、レベル3の自動運転に対する認可がどの地域でも下りていない段階で「A8」を先陣切って発表。また、2021年半ばにドイツの高速道路でレベル3の自動運転の利用が承認されるのを受けて、メルセデスベンツは「Sクラス」の新型車でオプション装備としてレベル3の自動運転システム「DRIVE PILOT」を設定する。LiDARはDRIVE PILOTを選択した車両に追加される。

 トヨタ自動車は2020年初冬に日本で発売予定のレクサス「LS」の新モデルで、車両の前後左右に4つのLiDARを搭載。そして、「世界初」(国土交通省)となるレベル3の自動運転車の型式指定は、ホンダ「レジェンド」が取得した。レジェンドにも4つのLiDARが搭載される。

 現時点で自動運転車などの実証実験に用いられているLiDARは、モーターで回転するミラーにレーザーを照射し、周囲の状況を計測する「機械式」が主流だ。ただし、モーター駆動部の部品数が多くなることから小型化が難しく高コストであり、モーターを常に駆動させるため温湿度や振動などに対する耐久性も課題になっていた。非機械式LiDARは、自動運転車を実証実験レベルから量産段階に進めるのに実用化が必須といわれている。

 このような環境を踏まえ、三菱電機も2018年からLiDARの研究を進めている。ターゲットとするのは、検知距離の長さよりも視野角の広さが求められる一般道の自動運転システムだ。小型化と広い水平視野角の両立に取り組んでおり、現時点では外形寸法が108×105×96mm、水平視野角120度を達成した。2025年以降の事業化に向けてさらなる小型化と垂直視野角の拡大に取り組む。

 LiDARを手掛けるサプライヤーが多い中、どのように技術的な強みを発揮するか、三菱電機 先端技術総合研究所 先進機能デバイス技術部長の山向幹雄氏に話を聞いた。

大型LiDAR、微細加工、光学設計……社内に基盤技術があった

三菱電機の山向幹雄氏

MONOist 開発期間が約2年と短いですね。

山向氏 要因としては、MEMSや微細加工、光学設計、LiDARの基盤技術が社内にあったのが大きいです。車載用ではありませんが、LiDARを製品化した実績もあります。風力発電や航空安全の用途で、風の向きや風速を計測するための「風計測LiDAR」です。

 数十km離れた高さのちりの動きをLiDARで観測し、上空の風向きの急激な変化を検知します。成田空港や羽田空港、香港国際空港などに設置されています。コストやサイズを度外視して最大限の技術で開発するとどんな性能が出せるか、試作したこともありました。LiDARを組み上げる技術は社内に持っていましたが、車載用の大きさに落とし込む難しさがありました。

MONOist 水平視野角の広さを強みとしています。

山向氏 複数のレーザー光源と、広い振れ角の大型軽量MEMSミラーを組み合わせることで実現しています。MEMSミラーのサイズは7×5mmで、車載用に開発しました。他の用途でこの大きさはあまり例がありません。一般的にはMEMSミラーを振る角度の2倍が視野角ですが、レーザー光源を複数にすることで視野角を広げています。

 LiDARが大きくていいのであればできないことはありませんが、LiDARとしてのサイズを小さくしながら精度を確保しなければなりませんでした。光学部品や制御回路、電源回路を小さな本体に詰め込むことに加えて、MEMSミラーをよく振れるようにすることが課題となりました。

開発したLiDARで取得した3次元画像(クリックして拡大) 出典:三菱電機

 現時点でのMEMSミラーは水平振れ角が±15度、垂直振れ角が3.4度ですが、MEMSミラーは大きくすると振れません。大きいけれども重くならないようにする必要がありました。ただ、軽くするとひずみがでやすいので、その対策も工夫しました。MEMSミラーの部分は、特に社内で開発できるメリットがある分野です。ニーズがあれば水平視野角をさらに広げることにも取り組みます。MEMSミラーをさらに振れるようにしたり、レーザー光源を増やしたりして対応します。

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