特集:IoTがもたらす製造業の革新〜進化する製品、サービス、工場のかたち〜
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» 2020年11月18日 11時00分 公開

サブスクで稼ぐ製造業のソフトウェア新時代(7):サブスクに必要なのはセキュリティだけじゃない、求められる“総合力” (1/3)

サブスクリプションに代表される、ソフトウェアビジネスによる収益化を製造業で実現するためのノウハウを紹介する本連載。第7回は、サブスクなどのソフトウェアビジネスによる収益化に踏み出すことをためらわせるセキュリティ対策について解説する。

[前田利幸(日本セーフネット/タレス・グループ),MONOist]

 日本の製造業はGDP(国内総生産)の2割程度を占めており、日本経済を支える主要産業となっている。日本の貿易輸出額全体に対して、一般機械と電子機器が占める割合は37%にもなり(出典:経済産業省、2019年)、さらには多くの企業が海外にも拠点を構えてグローバルビジネスを展開している。今後ビジネス革新が進んで、提供する製品はハードウェアだけでなく、ハードウェアをプラットフォームとしてソフトウェアも同様に海外展開していくことに期待したい。

 ソフトウェアは、企業にとって知的財産を多く含む無形資産である。製造業にとってAI(人工知能)やIoT(モノのインターネット)といったソフトウェアベースのテクノロジーが製品に付加価値を与え、ソフトウェアを中心としたサブスクリプションビジネスにシフトしていく場合に、ソフトウェアを保護するセキュリティについても考慮する必要性に迫られることになる。

 特に海外でソフトウェアをサブスクリプションで提供して、ソフトウェアが不正利用された場合の企業の損失は計り知れない。そこで、グローバルでソフトウェアのサブスクリプションに踏み出す上で、ソフトウェアのセキュリティ強化としてどのような対策が必要なのか考えてみたい。

⇒連載「サブスクで稼ぐ製造業のソフトウェア新時代」バックナンバー

激化する技術競争、AIが握る製造業の成長戦略

 AIソフトウェアの市場規模は2025年には1186億米ドルに達すると予想され、2019年からは現実的に活用される段階に突入していると分析されている(出典:情報処理推進機構、2020年)。

AIソフトウェアの世界市場 AIソフトウェアの世界市場(クリックで拡大) 出典:情報処理推進機構

 DX(デジタルトランスフォーメーション)の中核を担うAIは、製造業に製品付加価値を高める主要なソフトウェアの一つとなり、企業の成長戦略を描くために主要な役割を担うことになる。

 それに伴い、AI技術競争の動向にも目が離せない。AIに関する世界の特許出願状況(出典:情報処理推進機構、2020年)を見ると、2002年ごろまでは日本と米国が年間出願数の大半を占めていたが、2011年以降は中国が頭角を現し、今では日本を圧倒して米国に迫る勢いで世界を席巻しつつある。

AI関連特許出願数と推移 AI関連特許出願数と推移(クリックで拡大) 出典:情報処理推進機構

 日本はAI技術が遅れている「AI後進国」といわれて久しいが、中国と米国の2大巨頭がけん引していくAI技術競争は、次第に激しさを増していくことになるだろう。

グローバルビジネスに潜む脅威

 AIに代表される技術や機能、機密性の高いデータは、企業にとって付加価値の源泉である。成長力に大きな影響を与え、将来的に生み出される収益に投資家からの期待が高まっている。それ故、悪意を持った人や組織から攻撃されて、技術を盗み出される危険性から保護する必要性が出てくる。

 海外にはリバースエンジニアリングを請け負うような組織が存在する。機密性の高い製品を解析し、クライアント企業にレポートするような組織だ。解析された製品はクローンを製作されるなど、海外企業の生産技術の向上によって、ハードウェアはいとも簡単にコピーが生産されるようになった。さらに、ハードウェアに搭載されるソフトウェアもリバースエンジニアリングが施され、企業が投資してきたソフトウェアの技術は流出する懸念もある。海外でよく似た製品が安価に出回り、市場が破壊される恐れもあるだろう。そして、悪意を持ってリバースエンジニアリングが行われた製品の企業は、組織の実績としてWebサイトにさらされることもある。ハッキングされたことによって、企業ブランドの失墜は免れない。

 よって、ソフトウェアを保護するセキュリティを強化しないことで、本来得られるはずの収益が得られないだけでなく、技術の流出によって将来得られるはずの利益や、企業の競争力をも失うことになる。ハードウェアが簡単にクローンを作られるようになった今、最後の砦はソフトウェアである。今後、ソフトウェアが企業の戦略上重要な役割を担うことから、ソフトウェアを保護するセキュリティについても真剣に取り組む必要性に迫られることになる。

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