特集:IoTがもたらす製造業の革新〜進化する製品、サービス、工場のかたち〜
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» 2020年11月30日 11時00分 公開

OPC UA最新技術解説(6):カバー範囲広げるOPC UA、「つなげる」「安全に」「伝える」がさらに進化 (1/2)

OPC UAの最新技術動向について紹介してきた「OPC UA最新技術動向」。今回は、2020年6月にオンラインで開催されたセミナー「OPC Day International 2020」で発表された新技術動向を中心に、ここ1年の技術的なアップデートについて「つなげる」「安全に」「伝える」の3つの視点で紹介する。

[藤井稔久/日本OPC協議会 技術部会長,MONOist]

 本連載「OPC UA最新技術解説」では、2019年に5回にわたり、OPC UAの最新技術動向について紹介してきました。そこから約1年がたち、日本でも産業オートメーションの製品やサービスへのOPC UAの導入・活用が進展し、適用領域を拡大する活動が続いています。そこで、今回はあらためて第6回として、2020年6月にオンラインで開催されたセミナー「OPC Day International 2020」で発表された新たな技術的な内容について、OPCの基本コンセプトである「つなげる」「安全に」「伝える」の3つの観点で整理してご紹介します。

 この1年のOPC UAの新たな展開を見ていると、標準化の範囲は抽象的なインタフェースまでとし、新たな技術を柔軟に取り込むことにより長期のライフサイクルを実現するという設計指針があらためて正しかったと感じています。実際にさまざまな技術や標準との組み合わせにより、カバー範囲を広げる動きが目立ったのが特徴だといえるでしょう。

「つなげる」の広がり

 OPC UAの特徴である「つなげる」は、OPC UAアプリケーションがプラットフォームに依存せずに動作して通信し合えるように、標準となるコミュニケーションインタフェース仕様は抽象的なレベルまでとし、それぞれの動作環境に特化する部分を通信スタックという最下層のソフトウェアに隠蔽(いんぺい)する仕組みによるものです。

 利用する通信スタックがどのようなプロファイルをサポートしているかで、産業オートメーションの現場や、インターネットを介したエンタープライズ環境に適した手段で通信が行えます。この「つなげる」の観点での動きは、通信スタックのプロファイルを追加することで、通信可能な領域をますます広げていくということになります。

 具体的に活発化している動きでは、フィールドレベルへの対応として、「Ethernet-APL」という防爆対応イーサネット通信への対応が新たにスタートしています。フィールドレベルの通信への対応としては、既に「OPC UA over TSN」の活動がありますが、TSNに加えて防爆対応のネットワークとの連携も進めていく方針だということになります。Ethernet-APLはPA(プロセスオートメーション)市場を主な対象にしており、OPC UAがFAおよびPAのフィールドレベル通信へ普及することが期待されます。

 さらに、フィールドレベルでは、通信スタックより上位の階層で、デジタル通信を使用した安全通信仕様である「OPC UA Safety」が設計されたことも新たなポイントだといえるでしょう。

photo 図1 OPC UA Safetyの仕組み(クリックで拡大)出典:日本OPC協議会

 上位のネットワークとの連携については、クラウドでの利用を後押しするための活動が進んでいます。現在のOPC UAのクラウドへの接続は、クラウドの手前までをOPC UAで対応し、クラウド内部は独自ソリューションで処理するのが一般的です。しかしクラウド上でもOPC UAアプリケーションを動作させようとする試みが検討されています。

 「Cloud Relay」という活動ではクラウド上に存在するOPC UAサーバに対してOPC UAクライアントが通信できる仕組みを検討しています。もう1つの「UA for Cloud Library」という活動は、OPC UAのPublish/Subscribe通信モデル(パブサブモデル)の通信を対象としクラウド連携を進めるものです。クラウド上にPublishでアップロードされたデータをクラウド側で自由に活用できるように、オンプレミス側からOPC UAの情報モデルにおけるメタ情報をクラウド側に展開する仕組みを考えています。

 これらのように、フィールドレベル、クラウドレベルそれぞれで「つなげる」の幅を広げ、データを活用しやすくなるようなさまざまな活動が進んでいます。

photo 図2 クラウドに関する取り組み(クリックで拡大)出典:日本OPC協議会

「安全に」の広がり

 OPC UAにおける「安全に」は、ITで一般的なセキュリティ仕様があらかじめ設計に組み込まれていることを指しました。ここでも「つなげる」の場合と同様に、その仕様を実現する具体的なセキュリティ技術、特に暗号方式のアルゴリズムは通信スタックの中に隠蔽されており、プロファイルによって選択します。

 このセキュリティに関する話題でも、新たなプロファイルのサポートについて報告がありました。楕円曲線暗号(ECC)という暗号方式が2020年内にリリース予定のプロファイルです。ECCの特徴としては、実装がそれまでのものと比較して簡単であり、小規模なデバイスにも適用できることが挙げられます。これにより、セキュアな通信をサポートするOPC UAアプリケーションの範囲が広がることが期待されています。

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