エッジコンピューティングの逆襲 特集
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» 2020年12月03日 06時30分 公開

AWSがエッジへの浸透強める、製造業が求める予知保全とAIカメラを実現エッジコンピューティング

Amazon Web Services(AWS)は、オンライン開催となったユーザーイベント「AWS re:Invent 2020」において、製造業をはじめとする産業分野を対象とした5つの機械学習ソリューションを発表した。

[朴尚洙,MONOist]

 Amazon Web Services(AWS)は2020年12月1日(現地時間)、オンライン開催となったユーザーイベント「AWS re:Invent 2020」において、製造業をはじめとする産業分野を対象とした5つの機械学習ソリューションを発表した。センサーからゲートウェイ、クラウドまでを含めたエンドツーエンドの予知保全システムを提供する「Amazon Monitron」、既設のセンサーから収集したデータを基に予知保全を実現するAI(人工知能)モデルを構築するサービス「Amazon Lookout for Equipment」、既設のネットワークカメラなどに接続してAI機能を付加するエッジデバイス「AWS Panorama Appliance」、AWS Panorama Applianceと同じエッジAI機能を持ったカメラの開発を可能にする「AWS Panorama SDK(Software Development Kit)」、カメラの画像データを用いて高精度に異常を検出できるAIモデルを構築する「Amazon Lookout for Vision」である。

AWSのアンディ・ジャシー氏 「AWS re:Invent 2020」の基調講演で新たな機械学習ソリューションを紹介するAWSのアンディ・ジャシー氏(クリックで拡大)

 同社 CEOのアンディ・ジャシー(Andy Jassy)氏は、AWS re:Invent 2020の基調講演において、機械データ(Machine Data)が対象となるAmazon MonitronとAmazon Lookout for Equipment、コンピュータビジョンを実現するAWS Panorama ApplianceとAWS Panorama SDKを分けて紹介。同氏は「製造業などの産業分野の企業は機械学習の活用で顧客体験や工場に変革をもたらせることは分かっているが、そのための技術や人材が不足している。この課題を解決するために開発したのがこれらのソリューションだ」と強調する。

「Amazon Monitron」のセンサーとゲートウェイ 「Amazon Monitron」のセンサーとゲートウェイ。センサーはBluetooth接続で、電池駆動により約3年動作するという(クリックで拡大) 出典:AWS

 Amazon Monitronは、設備の予知保全を行いたいが現時点でセンサーなどを設置していない顧客向けとなるエンドツーエンドのソリューションだ。設備の振動や温度をモニタリングできる外付けのIoT(モノのインターネット)センサー、IoTセンサーのデータを収集しAWSのクラウドに送るゲートウェイ、機械学習やクラウドの経験がなくても設備の予知保全を行うためのAIモデルを構築できる機械学習クラウドサービスなどが含まれている。また、設備の状態を現場の技術者などに知らせるモバイルアプリケーションも利用できる。Amazon Monitronは既に一般向けの提供が可能な状態にある。

 一方、Amazon Lookout for Equipmentは既に設備にセンサーを設置するなどしてデータを収集できている顧客向けのサービスだ。例えば、センサーデータをAWSのクラウドストレージ「S3」にアップロードしてAmazon Lookout for Equipmentで読み込むだけで予知保全のためのAIモデルを構築してくれる。また、AWSの「AWS IoT SiteWise」や、OSISoftの「PI System」などで収集したデータとの連携も可能だ。Amazon Lookout for Equipmentは現時点でプレビュー版が提供されている。

「Amazon Lookout for Equipment」の概要 「Amazon Lookout for Equipment」の概要(クリックで拡大)

 AWS Panorama Applianceは、一般的なカメラとネットワーク接続することでそのカメラにAI機能を付与することができるハードウェアアプライアンスである。産業分野向けに最適化されたAIモデルが既に組み込まれており、カメラとを接続すると、映像のストリーミングデータを自動で識別するとともに、AIモデルによる推論も実行できるようになっている。また、AWSの機械学習サービスやIoTサービスと統合されているのでユーザー自身によるAIモデルの構築も可能だ。20本までの映像のストリーミングデータに対してAIモデルを並列に適用することもできる。AWS Panorama Applianceは現時点でプレビュー版が提供されている。

「AWS Panorama Appliance」の概要 「AWS Panorama Appliance」の概要(クリックで拡大)

 AWS Panorama SDKは、AWS Panorama ApplianceのようなAI機能を備えたカメラの開発を可能にするソフトウェア開発キットだ。AWSの機械学習サービス「Amazon SageMaker」などで構築したAIモデルを簡単に組み込んだり、関数機能の「AWS Lambda」と連携してメールによる警告を出したりすることもできる。AWS Panorama SDKも現時点でプレビュー版が提供されている。

「AWS Panorama SDK」の概要 「AWS Panorama SDK」の概要(クリックで拡大)

 AWS re:Invent 2020の基調講演では言及がなかったAmazon Lookout for Visionは、Amazon Lookout for Equipmentのコンピュータビジョン版という位置付けであり、収集した画像データを基に高精度に異常を検出できるAIモデルを構築できる。最低30枚の正常な状態の画像データを基にベースラインを設定し、そこからの外れ値を基に異常検出を行うといったことも可能だ。Amazon Lookout for Visionは、AWS上で提供可能になっているが、2021年にはAWS Panorama ApplianceやAWS Panorama SDKでも利用可能になるという。

 これら5つの機械学習ソリューションのうち、Amazon MonitronとAWS Panorama Applianceは、現場となるエッジに設置するハードウェアが軸になっている。また、Amazon Lookout for Equipment、AWS Panorama SDK、Amazon Lookout for Visionも、AWSのクラウドと接続できないローカルのエッジ環境でも利用可能なことが大きな特徴になっており、AWSが製造業をはじめとする産業分野において、よりエッジを重視していく姿勢を強く感じさせる発表となった。

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