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透明なのに電磁波を遮蔽するガラス、AGCが2021年内に発売へ組み込み開発ニュース

AGCは、透明で電磁波の遮蔽(しゃへい)や吸収が可能なガラス「WAVETRAP」を開発したと発表した。高い透視性を持ちながら電磁波を遮蔽/吸収できる材料は「従来はなかった」(同社)という。2021年内の販売開始に向けて開発を進めている。

» 2020年12月15日 06時30分 公開
[朴尚洙MONOist]

 AGCは2020年12月14日、透明で電磁波の遮蔽(しゃへい)や吸収が可能なガラス「WAVETRAP(ウェーブトラップ)」を開発したと発表した。高い透視性を持ちながら電磁波を遮蔽/吸収できる材料は「従来はなかった」(同社)という。2021年内の販売開始に向けて開発を進めている。

 WAVETRAPは、2枚のガラスの間に特殊接着層で金属メッシュを挟み込むことで、ガラスの特性である高い透視性を生かしつつ、電磁波を遮蔽したり吸収したりできる。AGCが持つガラス複合化技術と電磁波制御技術により実現した。耐候性や耐水性、耐熱性も高い。高さ3.6×横幅1.2mという大型サイズの製造にも対応する。

 商品ラインアップとしては、電磁波遮蔽タイプの「WAVETRAP-S」と電磁波吸収遮蔽タイプの「WAVETRAP-AS」がある。WAVETRAP-Sは、開口率が78%で、電磁遮蔽性能は60dB(1GHzの場合)。主な用途は、電磁波から人体、通信機器、センサーなどを保護する場所を想定している。

AGCの電磁波遮蔽ガラス「WAVETRAP-S」 AGCの電磁波遮蔽ガラス「WAVETRAP-S」の外観(左)と断面図(右)(クリックで拡大) 出典:AGC

 WAVETRAP-ASは、電磁波を遮蔽する金属メッシュに加えて、電磁波吸収機能を持つ膜を挟み込んでいる。電磁波吸収性能は20dB、電磁波遮蔽性能60dB(915MHzの場合)。主な用途は、WAVETRAP-Sの用途に加えて、ETCやRFID(近距離無線通信)センサーゲートの開口部、間仕切りなどを挙げている。

 IoT(モノのインターネット)の本格普及に伴い、さまざまな人や物がネットワークでつながるようになっている。その一方で通信量が増大して多様な電磁波が飛び交うことにより、ネットワークの混線や通信の誤認識、機器の誤作動や故障などが発生するリスクも高まっている。これらのリスクを軽減するためには、電磁波を遮蔽できるパネルやフィルムを用いて電磁波の影響をコントロールする必要があるが、一般的に電磁波の遮蔽や吸収に用いられる発泡樹脂は高い透視性を確保することが困難だった。

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