特集:IoTがもたらす製造業の革新〜進化する製品、サービス、工場のかたち〜
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» 2020年12月23日 09時30分 公開

「小さく始める」が「小さいまま終わり」に、SAPが第4次産業革命で訴える危機感第4次産業革命の現在地(1/2 ページ)

SAPジャパンは2020年9月にインダストリー4.0戦略の具現化を支援する戦略施設「Industry 4.Now HUB TOKYO」を設立した。同施設設立の狙いと、日本におけるインダストリー4.0の推進状況について、SAP Labs JapanのHead of Digital Supply Chain Managementである鈴木章二氏に話を聞いた。

[三島一孝,MONOist]

 「日本の製造業による第4次産業革命の動きは『小さく始める』が小さく終わってしまっている。大きな青写真がないまま局所的な取り組みを進めているケースが多い」と危機感を訴えるのが、SAP Labs JapanのHead of Digital Supply Chain Managementである鈴木章二氏である。

 SAPジャパンでは2020年9月にインダストリー 4.0戦略の具現化を支援するグローバル組織の日本拠点「Industry 4.Now HUB TOKYO」を設立した。SAPでは工場を中心としたインダストリー4.0の動きと、企業全体のビジネス戦略を結び付ける取り組みとして「Industry 4.NOW」を提唱しており「Industry 4.Now HUB」はその展開拠点である。同拠点の役割と、日本におけるインダストリー4.0への取り組みの動向について、鈴木氏に話を聞いた。

「小さく始める」が「小さいまま終わる」

MONOist SAPはドイツにおいてインダストリー4.0の中心的な推進企業です。SAPジャパンでも日本企業に対し、インダストリー4.0のコンセプトを推進するさまざまな支援を行ってきましたが、あらためて「Industry 4.Now HUB TOKYO」を設立した狙いについて教えてください。

鈴木氏 日本企業におけるインダストリー4.0についての取り組みは「小さく始める」がそのまま「小さいまま終わる」ということが非常に多いと感じている。本来はうまくいけば大きく拡大するために行うのがスモールスタートの意味だが、いつまでたっても大きな規模に転換できずに、局所的な取り組みで終わってしまう。これには、企業全体に関係する形で大きな青写真が描けていないということが要因としてあると考えている。インダストリー4.0を進めるには、大きな青写真とそこに向けた小さな実行計画が重要で、その仕組みが不足していると感じている。こうした仕組みを用意し、支援していくのが「Industry 4.Now HUB TOKYO」の役割となる。

photo SAP Labs JapanのHead of Digital Supply Chain Managementである鈴木章二氏

 そもそも、ドイツにおけるインダストリー4.0も日々進化している。日本でインダストリー4.0といえば、RAMI4.0(Reference Architecture model for Industrie4.0)など標準アーキテクチャやそれに基づくエコシステム、この枠組みを生かしたデバイスやツールが注目されている。しかし、ドイツでのインダストリー4.0のコンセプトは「2030年ビジョン」で循環型経済を訴えるなど、もう少し大きな枠組みまで描いている。工場での取り組みだけでなく、工場の外、さらに他の企業や他の業界まで結ぶ世界を構築する発想が必要だ。日本企業での取り組みは工場の中での局所的な取り組みから抜け出せず、さらに広い世界を結んでいくところまでは考えられていない。拡大する展開が見通せていないという点に、危機感があった。

photo インダストリー4.0 レファレンスアーキテクチャモデル(RAMI 4.0)(クリックで拡大)※出典:実践戦略

インダストリー4.0を推進する経営の役割

MONOist 局所的な取り組みに終わってしまっている要因としてはどういうことがあると考えますか。

鈴木氏 DX(デジタルトランスフォーメーション)などと同じ傾向だといえるかもしれないが、主に3つの点が課題だと感じている。

 1つ目は、経営陣の参画である。こうした取り組みは経営陣が積極的に参画し部門間の整理などを進めていかなければならない。予算を付けるだけでは進めていくのは難しいものだ。

 2つ目は、ITリテラシーの問題だ。インダストリー4.0でもITを中心としたデジタル技術の活用が前提となっている。これらの知見不足が新たな取り組みの阻害要因となっているケースがある。

 3つ目は、グローバルプロジェクトの経験の不足だ。ここ20年の経済停滞などにより、グローバルを前提に新たなプロジェクトを推進した経験が日本企業のリーダーには少ないと感じている。工場の海外移転や、企業買収などはこの20年でもいろいろあったが、これらは「日本のやり方をそのまま海外で展開する」や「海外は海外、国内は国内のやり方で進める」などで、グローバルで意思統一をして一体化した形でプロジェクトを進めるということは本当に少ない。

 これらの要因で、どうしても現場の範囲内で収まるプロジェクト推進にとどまり、そのノウハウや知見を、より大きく展開するということが苦手な体質が生まれてしまっている。

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