「つながるクルマ」が変えるモビリティの未来像

トヨタの超小型EVは“エンジン車並み”を意識せず、電池を含めたビジネスの第一歩に電気自動車

トヨタ自動車は2020年12月25日、2人乗りの超小型EV(電気自動車)「C+pod(シーポッド)」を法人や自治体向けに限定発売したと発表した。日常生活の近距離移動や定期的な訪問巡回に向けたモデルだ。WLTCモードで高速道路モードを含まない走行距離は150km。最高速度は時速60km。個人向けの本格販売は2022年を予定している。価格は165万〜171.6万円。

» 2020年12月28日 08時00分 公開
[齊藤由希MONOist]
超小型EV「C+pod」を限定発売した(クリックして拡大) 出典:トヨタ自動車

 トヨタ自動車は2020年12月25日、2人乗りの超小型EV(電気自動車)「C+pod(シーポッド、以下C+pod)」を法人や自治体向けに限定発売したと発表した。

 日常生活の近距離移動や定期的な訪問巡回に向けたモデルだ。WLTCモードで高速道路モードを含まない走行距離は150km。最高速度は時速60km。個人向けの本格販売は2022年を予定している。価格は165万〜171.6万円。

 C+podは従来の売り切り型のビジネスではなく、EVならではのビジネスモデルの構築や普及に向けた体制づくりを前提としている。具体的には、最適な充電設備工事とCO2フリー電力などEV向け電力プランを1つの窓口でサポートする法人向けサービス「TOYOTA GREEN CHARGE」を中部電力ミライズと共同開発した。関西電力や東京電力エナジーパートナーとも提携して、同様のサービスを展開する。また、観光情報とスマートフォンで利用できるカーシェアサービス「TOYOTA SHARE」を活用した観光向けEVカーシェアリングなど順次進めていく。

C+podの外観デザイン(クリックして拡大) 出典:トヨタ自動車

 C+podの生産はトヨタ自動車の元町工場(愛知県豊田市)で行う。車両サイズは全長2490×全幅1290×全高1550mm、最小回転半径は3.9mとすることで取り回しの良さを実現する。リチウムイオン電池の総電力量は9.06kWh。シート足元の床下にバッテリーを搭載し、段差の少ない低床フラットフロアとした。

軽自動車とC+podのサイズ比較(クリックして拡大) 出典:トヨタ自動車
C+podのインテリア(クリックして拡大) 出典:トヨタ自動車

 駆動用モーターは最高出力9.2kW、最大トルク56Nmで、リアに配置する。独立懸架式サスペンションにより、乗り心地の良さと安定感の走りを両立した。電力の消費を抑えながら快適性を確保するため、上位グレードには温熱シートとクーラーを標準装備とする。充電は普通充電で行う。外出先での充電は、トヨタの充電会員サービス「EV・PHV充電サポート」に加入することでトヨタ販売店4200基の他、全国1万800基が利用できる。外部給電は合計1500Wまで対応する。

 安全装備も充実させた。衝突安全では、新設された超小型モビリティ用の安全基準に対応。衝突エネルギーを多くの部材で分散吸収する構造の採用などにより、前面・側面・後面などの衝突に対する安全性を追求した。歩行者への衝撃を緩和する歩行者傷害軽減ボディーも採用している。ADAS(先進運転支援システム)では、昼夜の車両と歩行者、昼間の自転車運転者を検知できる自動ブレーキや、踏み間違い事故を防ぐインテリジェントクリアランスソナーを搭載。センサーは自動ブレーキで単眼カメラとミリ波レーダーを、インテリジェントクリアランスソナーはソナーを使用する。

電池の品質が中古車販売やリユースに直結する

 トヨタ自動車は2019年6月に超小型EVの投入を公表。A〜Bセグメントの小型EVはスズキやダイハツ工業と企画し、実際の開発はスズキとダイハツが担う。C〜DセグメントのセダンやSUV、ミニバンなど向けのEV専用プラットフォームはスバルと共同開発中だ。2020年代にEV10車種をグローバルで展開するという目標も掲げている。

 トヨタは軽自動車よりも小さい超小型モビリティからDセグメントまでEVをそろえるが、こだわるのは駆動用バッテリーだ。耐久性の高い高性能なバッテリーでEVとしての商品力を向上するだけでなく、電池の残存価値を生かした中古車の販売、車載用以外の用途でのリチウムイオン電池のリユース、希少資源の回収のためのリサイクルまでを“EVのビジネスモデル”としている。C+podに搭載する駆動用バッテリーも、家庭用蓄電池と同等の容量とした。今後のリユースや、車載用以外へのバッテリーの横展開などを想定している。

 電池の容量維持率は「プリウスPHV」の現行モデルで約75%だったが、中国向けに投入する「C-HR」のEVモデルではさらに高い容量維持率を目指す。EVをグローバル展開する段階では、さらに高い耐久性の達成を目標としている。プリウスPHVの初代モデルから培った材料、構造、制御システムなど電池の劣化を抑制する技術の蓄積が強みになるという。

 トヨタ自動車 取締役の寺師茂樹氏は超小型EVを披露した2019年6月の説明会において、「これまで、EVを普及させようとしたときには、EVは従来のエンジン車と比べて減点されていた。走行距離の短さや充電に要する時間を改善すればEVが売れるという議論があった。しかし、毎日長距離を運転するわけではない人や、充電時間の長さが気にならない使い方の人もいる。移動距離が短くても構わない移動体としてみれば、EVが使いやすい場面がある」と述べていた。

C+podの使用パターンのイメージ(クリックして拡大) 出典:トヨタ自動車

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