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» 2021年01月19日 15時00分 公開

歯工連携で、口の中の傷をよりよく治す安全安価な生体材料を開発医療技術ニュース

新潟大学は、ヒトの口腔粘膜特有の波状構造を魚コラーゲン製の移植材料に付与する技術を確立し、口の中の傷をよりよく治す可能性がある、安全で安価な生体材料を共同開発した。

[MONOist]

 新潟大学は2020年12月18日、ヒトの口腔粘膜特有の波状構造を魚コラーゲン製の移植材料に付与する技術を確立し、口の中の傷をよりよく治す可能性がある新しい生体材料を開発したと発表した。早稲田大学、多木化学との共同研究による成果だ。

 ヒトの口の粘膜や皮膚は、表皮と結合組織から成る2層構造をしている。境界面の結合組織はマイクロパターンと呼ばれる波状構造で、表皮と結合組織が接する面積が増える分、剥がれにくくなる効果を持つ。

キャプション ヒト口腔粘膜の構造。左:模式図、右:顕微鏡組織像(クリックで拡大) 出典:新潟大学

 今回、研究チームは、廃棄物質であるイズミダイのうろこコラーゲンを原材料にし、半導体基板作成に用いる微小電気機械システム技術を活用して、ヒトの歯肉に存在するマイクロパターンをコラーゲン膜の表面に加工、付与することに成功した。

キャプション マイクロパターン(矢印)が付与された足場材表面 出典:新潟大学

 続いて、マイクロパターンを付与したコラーゲン膜表面にヒトの歯肉の細胞を培養したところ、ヒトの歯肉とよく似た組織が再現できた。

キャプション ヒト培養口腔粘膜の顕微鏡組織像(クリックで拡大) 出典:新潟大学

 研究チームは今後、ブタの口の中の傷に、今回開発したコラーゲン製人工歯肉を移植し、傷の治りを検証する。さらに、ヒトのさまざまな組織が持つ固有のマイクロパターンやサイズを最適化し、口の中の傷だけでなく、外の傷にも適用可能なコラーゲン製材料の開発を目指す。

 マイクロパターンは、傷を治す上で重要な構造だが、市販の生体移植材には付与されていなかった。また、現在、口腔内手術後の傷を治す目的で使用されているウシやブタ由来のコラーゲン製人工皮膚は、材料のもろさや価格に課題があり、狂牛病のような未知の病原体による伝染性感染症リスクもゼロではなかった。

 魚コラーゲンは、一般的なコラーゲンドリンクの主原料として広く利用されている。今回開発した生体材料は、伝染性感染症リスクのない、安全で安価な生体移植材料として、今後の活用が期待される。

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