その新製品は大丈夫? 製品評価・安全のプロ集団がイノベーション創出を伴走イノベーション協創プログラム「NICE」

現在、多くの企業が取り組むイノベーション創出だが、従来のモノづくりのように自社の強みや得意分野のみでそれを成し遂げることは困難だ。また、これまでにない技術や製品を世に送り出す際、その安全性をどのように評価すべきか非常に悩ましい。そこで頼りになるのが、製品評価技術基盤機構が立ち上げたイノベーション協創プログラム「NICE」だ。

» 2021年01月20日 10時00分 公開
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 なぜ今、イノベーションが求められているのか。その背景にあるのは、さまざまな「変化」である。生活形態が変わり、人々のニーズも変化し、また多様化している。人口比率の変化に伴う労働人口の減少、CO2やプラスチックごみの問題など、社会情勢や環境に関する課題も多い。

 このような状況下において、従来の産業構造のまま、これまでと同じような製品を作り続けていては、生活を豊かにするどころか、社会課題の解決も難しいだろう。言い換えれば、従来の延長線上でモノやサービスを提供し続けているようでは、産業自体を維持、発展させることができない。市場ニーズに応えるためにも、日本の産業をより発展させるためにも、新たな発想や視点、すなわちイノベーションが求められているのだ。

 製品やサービスを通じて便利さや快適さを実現する一方で、安全性が重要であることは言うまでもない。しかし、今までになかった新たな技術や製品カテゴリーには、そもそも品質や安全評価基準などが整備されていない。それ故、非常に優れたものであっても、一度重大事故が発生すれば、その新カテゴリー自体が「危ないもの」とされ、普及や社会実装の機会を妨げてしまう恐れがある。

 さまざまな変化に応え、かつスピーディーに開発しつつ、品質や安全性をどこまで担保できるのか、モノづくりの在り方や体制にもイノベーションが必要とされているのだ。


イノベーションのハブとなる「NICEプログラム」

 このような時代の変化を受け、製品評価技術基盤機構(NITE:National Institute of Technology and Evaluation)が2020年2月に立ち上げたのが、イノベーション協創プログラム「NICE(NITE Innovative Collaboration Expert)」(以下、NICEプログラム)である。

イノベーション協創プログラム「NICE」のイメージ図 ※出典:製品評価技術基盤機構 図1 イノベーション協創プログラム「NICE」のイメージ図 ※出典:製品評価技術基盤機構

 経済産業省所管のNITEの主たる業務は、法律執行や政策の支援だ。工業製品に関する技術上の評価、品質に関する情報の収集、整理、提供などによって、工業製品の品質の向上や安全性の確保、取引円滑化のための技術開発基盤を整備することが根幹である。NITEは大きく「バイオテクノロジー」「化学物質管理」「適合性認定」「製品安全」「国際評価技術」の5つの分野から構成される。分かりやすい例を挙げると、化学物質管理分野では、新たな化学物質の事前審査支援やリスク評価など、製品安全分野では、製品事故に関する情報収集や調査・原因究明など、また国際技術評価本部では、JIS(日本産業規格)やISO(国際標準化機構)といった基準づくりなどを行っている。

 NICEプログラムは、NITEがこれまで蓄積してきた豊富な知見・経験を生かし、製品やサービスの創出時における研究開発上の課題や、新技術の社会実装における課題の解決などを支援するために立ち上げられたプログラムだ。事業者からの相談・提案を受け付け、事業者が抱える課題に対し、NITEの各分野との連携によって最適なソリューションを提供する。

製品評価技術基盤機構 企画管理部 広報・イノベーション支援課 主任の福田淳氏 製品評価技術基盤機構 企画管理部 広報・イノベーション支援課 主任の福田淳氏

 「イノベーションは、分野の“はざま”で生まれるといわれています。従来、各企業はそれぞれ得意とする分野の中でモノづくりをしてきたわけですが、近年では異分野とのコラボレーションが必要なケースも増えています。安全面や法規制への対応でお困りになることも多いでしょう。NITEでは、これまでも部門・分野単位でのイノベーション支援を行ってきましたが、これからは分野間連携による支援が必要だと考え、イノベーションのハブ機能としてNICEプログラムを立ち上げました」と、NITE 企画管理部 広報・イノベーション支援課 主任の福田淳氏は話す。


「データ」「モノ」「スキル」「ヒト」:4つの柱で事業者を支援

 「NITEは、製品開発の最終段階である社会実装に関しての豊富な知見を持っています。われわれの強みは、社会実装を踏まえた助言を、研究開発の段階からできることです」と福田氏。NICEプログラムでは、NITEが有する「データ」「モノ」「スキル」「ヒト」の4つの柱を組み合わせて、各社の課題解決を支援してくれるのだ。

事業者を支援する4つの柱(データ、モノ、スキル、ヒト) 図2 事業者を支援する4つの柱(データ、モノ、スキル、ヒト) ※出典:製品評価技術基盤機構

 もう少し具体的に見ていこう。まずデータには大きく分けて、安全・安心に関する情報、研究開発に有用な情報、画像や動画の3つがある。安全・安心に関しては、最新の製品事故やリコール、化学物質管理に関する法規制、法に基づいた試験を行ってくれる事業者などの情報を提供する。例えば、事故情報データベースには、約5万件に上る製品事故が蓄積されている。

 研究開発に有用な情報としては、微生物の産業利用における研究開発時に有用なデータ、認定の産業活用事例などが挙げられる。例えば、生物資源データプラットフォームにより、微生物に関連するさまざまな情報にワンストップでアクセスできる。また、製品事故の注意喚起、微生物に関する知識・技術の普及啓発に関する画像や動画などの提供も行っている。テレビやWebのニュースなどで、家電製品が火を吹く事故の再現動画などを見たことがあるのではないだろうか。

 次にモノだ。NITEでは家電製品などの大規模な燃焼試験が行える大型燃焼実験室や、製品から放散される化学物質放散量を測定できるVOC(揮発性有機化合物)等放散測定大形チャンバーシステムをはじめとするさまざまな試験設備、NITEにしかない設備を保有している。また、産業利用可能な各種微生物約9万株を保存しており、それらの提供を受けることもできる。

 スキルに関しては、NITEが各種技術基準の作成および評価方法を検討する中で確立した手法や、取得した特許を開放している。例えば、世界各国の貿易、流通市場における信頼性の向上、公正な取引の促進や、消費者の安心が高まることが期待される「獣毛鑑別法」の国際標準化においては、NITEが開発した試験方法が大きく貢献している。

 ヒトは、NITEに所属する各専門分野に精通したエキスパートの派遣である。各分野の国内委員会や国際会議で活躍する専門人材を、講演会の講師や社内ワークショップなどのアドバイザーとして招くことができる。

製品評価技術基盤機構 広報・イノベーション支援課 専門官 吉田耕太郎氏 製品評価技術基盤機構 広報・イノベーション支援課 専門官 吉田耕太郎氏

 NITE 広報・イノベーション支援課 専門官 吉田耕太郎氏は「例えば、製品安全の分野ならば、NITEがこれまで積み重ねてきた事故調査の知見から、どこを押さえておけば事故を防げるか、あるいはその予兆を検知できるかということがある程度予測できます。そういった助言をすることで、製品事故の未然防止につなげていきたいと考えています」という。研究開発の早期から過去の事故情報を知ることができ、社内にはない異分野の情報や知見も得られれば、製品開発もより効率的に行えるはずだ。


大手企業だけでなく、中小企業やスタートアップからの相談も

 NICEプログラムの運用開始(2020年2月末)以降、相談件数も順調に増えており、既に40件以上にもなるという。実際、NITEの資産や知見はどのような使われ方をしているのか、製造業に関連するいくつかの事例を見ていこう。

 例えば、村田製作所は大型蓄電池システムの燃焼試験をNITEの蓄電池評価センター(NLAB)で実施。その結果、システム内部の蓄電池モジュールに発火・破裂などの異常は生じず、火炎にさらされた場合でも蓄電池の安全性が十分に保たれていることを確認している(※1)。

 同じく、カシオ計算機では腕時計をはじめとする製品試験などで活用。製品使用時に起こり得る可能性のある事象を疑似的に再現して、内蔵のリチウムイオン電池が燃えるのか、燃えるとしたらどうなるのかなどの評価を行い、自社製品の安全性について検証を行った。

※1:村田製作所へのイノベーション支援事例は、NICEプログラムの正式運用開始前に行われた先駆的な取り組みの1つである。

 もちろん大手製造業の多くは、自社内の研究施設などでも安全や品質に関する十分な試験を実施しているが、それらに加え、豊富な知見を持つNITEが試験することで、自社製品の“安全性の確実さ”をより高めているのだ。

 利用しているのは大手企業ばかりではない。「むしろ中小企業やスタートアップの方が、情報や試験の場を必要としているのではないかと思います」と福田氏。実際、スタートアップからの相談も増え始めているそうだ。新しい技術を搭載した製品を初めて世に送り出す際、どのようなリスクを想定すべきかの判断は非常に難しい。社内に十分な知見や情報がないスタートアップならばなおさらだろう。

 また、これまで自社では扱ってこなかった分野・領域が絡む製品開発でも、NICEプログラムが頼りになる。例えば、3Dプリンタで作成したものに関する安全性ならば、製造物の統一的な仕様や規格は適合性認定、事故が起きた場合の原因究明は製品安全、製造時の環境衛生は化学物質管理と、いくつもの専門分野の知見が必要になる。NICEプログラムに相談すれば、NITEの適切な担当部門につないでくれるため、足りない知識や知見を補うことができる。


「協創」は「対話」から――開発早期からの相談がオススメ

 NITEが2018年に策定した2021年に向けた中期方針では「安全等の評価技術を活用した社会・経済の制度構築」と「企業・業界団体におけるイノベーションの促進」を活動の両輪と位置付けている。つまり、技術や安全性などに関する相談に応じるだけでなく、イノベーションや新たな技術、サービスの普及を過度に妨げず、かつ安全で健全な制度設計に向け、事業者側のニーズに寄り添う姿勢を示しているのだ。

NITEの中期方針:2021年におけるNITEの絵姿 図3 NITEの中期方針:2021年におけるNITEの絵姿 ※出典:製品評価技術基盤機構
製品評価技術基盤機構 広報イノベーション支援課 兼 経営企画課 新規事業開発室 主任の田邊尚輝氏 製品評価技術基盤機構 広報イノベーション支援課 兼 経営企画課 新規事業開発室 主任の田邊尚輝氏

 「新しい技術や製品が世に出た後、事故などが起こってから動くのではなく、開発段階から意見を交わし、イノベーション創出に向けたお手伝いをさせていただきます。これまでの法律執行支援業務に加え、NICEプログラムという新たな業務を通じて、「安全・安心な国民生活の実現」「健全で持続性のある産業発展」を実現するため、行政や企業・業界団体への働き掛けもしていきたいと考えています」と、NITE 広報イノベーション支援課 兼 経営企画課 新規事業開発室 主任の田邊尚輝氏。NICEプログラムが掲げる「『協創』は『対話』から」には、イノベーション創出に向けた幅広い困りごとに対し、事業者とNITEの各分野の連携、協創により解決を目指すという姿勢が集約されている。

 「これまでNITEの存在を知らなかった、知っていたがハードルが高いと感じていたという事業者も少なくないと思います。NITEの協創窓口として機能するNICEプログラムを通じて、われわれが事業者の皆さまのイノベーションを支援していること、相談や提案を受け付けていることをあらためて知っていただきたいと思っています」と福田氏。相談が増えれば事業者が抱える共通の課題も浮き彫りとなり、そういった「協調領域」への取り組みを国が推進していくといった発展も期待できる。そうなれば、イノベーション創出を目指す事業者にとっても大きな助けとなるはずだ。

 「ぜひ、開発の早期にお声がけください」と福田氏が言うように、研究開発、あるいはモックアップ製作の段階でNICEプログラムに相談してみることを強くオススメしたい。関連する法制度やリスク、必要な試験などのアドバイスを受ければ、開発をより効率的に進めることができ、品質の高い、安全な製品を市場に送り出すことができる。「この新製品にどのようなリスクが考えられるか」「どのような試験を追加すべきか」「類似製品で過去にどのような事故があったか」「関連する法規制はどのようなものがあるか」といった疑問に直面したら、まずはNICEプログラムに相談してほしい(⇒ NICEフロント[ご相談・ご提案の窓口])。

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提供:製品評価技術基盤機構
アイティメディア営業企画/制作:MONOist 編集部/掲載内容有効期限:2021年2月19日