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» 2021年01月26日 14時00分 公開

教師データは深層学習の10分の1、スパースモデリング活用の外観検査AIキット製造現場向けAI技術

HACARUS(ハカルス)は2021年1月7日、AI技術の一分野であるスパースモデリング技術を活用した外観検査AIスターターキット「SPECTRO GO」の提供を開始した。同技術はディープラーニングと比較すると、より少ない画像数で高精度のAIモデルを作成できるという強みがある。

[池谷翼,MONOist]

 HACARUS(ハカルス)は2021年1月7日、AI(人工知能)技術の一分野であるスパースモデリング技術を活用した外観検査AIスターターキット「SPECTRO GO」を提供開始した。同技術はディープラーニングと比較すると、少ない教師データで高精度のAIモデルを作成できるという強みがある。提供価格は100万円(税別)。

congatecの「Qseven」を採用

 SPECTRO GOはハカルスが開発した外観検査AI「SPECTRO」のエントリーモデルとして開発されたキットだ。AIエンジニアがいない企業でも、AIソリューションの試験導入を手軽に行い、SPECTROの機能性やメリットを体験できる内容になっているという。

SPECTRO GOの使用例*出典:ハカルス[クリックして拡大]

 キットにはSPECTROを実行するためのボックス PCの他、Baslerの外観検査用カメラやレンズ、カメラスタンドやスタンドに付けるLEDライト、撮影用マットが含まれている。ボックス PCはドイツのCPUボードメーカーであるcongatecの「Qseven」を採用した。CPUはIntelの「Pentium N4200」を使用。製造機械への組み込み用外観検査アルゴリズム「SPECTRO CORE」の評価ライセンス6カ月分も付属する。

congatecの「Qseven」*出典:ハカルス[クリックして拡大]

教師データが深層学習の“1000分の1”で済む場合も

 昨今、生産ラインなどで不良品の外観検査にAI活用を試みる事例が増えている。これらの事例では、ディープラーニングを用いたAIモデルを用いるケースも少なくない。しかし、ディープラーニングで十分な認識精度を実現するためには大量の教師データが必要となる。外観検査の場合は不良品画像を大量に収集する必要があるが、一般的に、正常な製品と比べると不良品は発生頻度が著しく低いため、そもそも収集可能な画像が少ないという問題があった。

 また、ハカルスの担当者は「ディープラーニングの学習は時間がかかるため、クラウドのリソースを用いて学習させるケースが多い。しかし、製造業の現場ではセキュリティへの懸念からクラウドにデータを上げづらいという声も多い」と指摘する。この他、ディープラーニングは多くの場合、計算処理にGPUを使用するため設備投資費がかさみやすく、消費電力が多いことからコスト高になりやすいという問題もある。

 これに対してスパースモデリング技術は、ディープラーニングと比較するとAIモデル制作に必要な教師データが少なくて済む点が特徴だ。具体的には「ディープラーニングの10分の1程度の画像量で済む。当社が過去に手掛けたソーラーパネルの画像検査では10分の1以下のデータ量で、ディープラーニングよりも高精度かつ高速での検査を実現したケースもある。場合によっては100分の1、1000分の1のデータ量でも高精度の分析が可能だ」(同担当者)という。

 なお、ハカルスはスパースモデリングの技術開発に特化しているわけではなく「当社は、顧客の導入領域に応じて特徴量を設計し、問題やデータの特性に合わせて最適なアルゴリズムを選択できるだけのドメイン知識を含めて技術力と知見を有している点を強みとしている」(同担当者)という。

 スパースモデリング技術の可能性について、ハカルスの担当者は「IoT(モノのインターネット)アプリケーションや5G通信のさらなる普及が見込まれる中で、GPUを使わずに済むほど計算量の“軽い”スパースモデリングには多大な可能性がある。例えば、エッジデバイスに搭載した場合、サーバシステムへのデータ転送量が大幅に削減される効果が期待できる」と語った。

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