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» 2021年02月01日 10時00分 公開

ETロボコンも初のオンライン開催に、シミュレーター活用で見えた新たな可能性〜ETロボコン2020チャンピオンシップ大会〜ETロボコン2020(3/3 ページ)

[大塚実,MONOist]
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アドバンストクラスでは企業チームを抑え専門校チームが優勝!

 アドバンストクラスのゲームは「ブロックビンゴ2020」だ。ルールはほぼ前回と同じで、走行体は3×3マスの円内に、同じ色のカラーブロックを運ぶことが基本。ブロックが3個並べばビンゴとなり、その数によって、シングルビンゴ(1列)の4秒から、フルビンゴ(4列)の18秒までのボーナスタイムを得ることができる。

 カラーブロックとは別に、2個の黒ブロックがあるが、これはランダムに指定された数字の円内に置くことで、追加のボーナスを獲得できる。リアル大会では、数字カードがコース上に置かれ、それをWebカメラで見て画像認識していたが、シミュレーターではそこまで模擬しておらず、スタート後に番号を通知する形になっている。

 同クラスには15チームが出場したものの、1列でもビンゴを達成できたのは上位のわずか3チームのみ。シミュレーターへの移植に苦労したというチームもあったが、ルールは前回とほとんど変わっていないので、もうちょっと頑張って欲しかったところだ。特に、半数以上のチームがビンゴに挑戦すらしていなかったのは残念だった。

「ブロックビンゴ2020」の内容 「ブロックビンゴ2020」の内容。ブロックの初期配置はランダムに決まる(クリックで拡大)

 唯一フルビンゴを達成できたのは「KAMOGAWA」(京都府立京都高等技術専門校 システム設計科)。最後のブロックを置いたのは2分ギリギリだったが、他の2チームはシングルビンゴ止まりなので、完成度の高さはダントツだった。同チームはモデル部門でも1位となり、文句なしの総合優勝を果たした。

KAMOGAWAの競技。Lコースがフルビンゴで、Rコースはトリプルビンゴだった(クリックで再生)

 競技2位の「PSDGs」(パナソニックシステムデザイン)は、ラインの上から投げるようなブロックの置き方がユニークだった。これはリアル大会でも見られた方法ではあるが、シミュレーター上でもしっかり再現したのはお見事といえるだろう。

PSDGsの競技。シングルビンゴのあと、ガレージインにも成功した(クリックで再生)

 走行で最速タイム(23.5秒)を記録したのは競技3位の「チームEYES」(アイズ・ソフトウェア)だ。このチームも、ほとんどラインを無視したような大胆なショートカットを披露。プライマリークラスの最速タイムをわずかに上回り、アドバンストクラスの面目を保った。

チームEYESの走行。イン側を豪快にショートカットし、シングルビンゴも達成(クリックで再生)
順位 チーム名
1位 KAMOGAWA(京都府立京都高等技術専門校 システム設計科)
2位 PSDGs(パナソニックシステムデザイン)
3位 チームEYES(アイズ・ソフトウェア)
表5 アドバンストクラス競技部門の結果

順位 チーム名
1位 KAMOGAWA(京都府立京都高等技術専門校 システム設計科)
2位 HELIOS(アドヴィックス)
3位 K-lab(宮崎大学片山徹郎研究室)
表6 アドバンストクラスモデル部門の結果

順位 チーム名
1位 KAMOGAWA(京都府立京都高等技術専門校 システム設計科)
2位 チームEYES(アイズ・ソフトウェア)
3位 HELIOS(アドヴィックス)
表7 アドバンストクラスの総合結果

シミュレーターの活用で開発の効率化も

 今回のシステムは、Unity上のシミュレーターでコースや走行体の物理計算を実行。走行体の制御ソフトウェアはエミュレータ「Athrill」で動作させ、シミュレーター側と同期通信することで、現実世界と同様の競技を再現していた。さらに、競技会場のシステムは「Azure」を活用。受付から試走までを、完全に自動化したという。

 初のバーチャル競技ということで、実装に苦労したチームもあっただろうが、シミュレーターを活用するのは、実際の開発現場でもよくあること。うまく利用すれば、開発を効率化し、短時間でより高品質にするようなことも可能だろう。

 そうしたシミュレーターならではの工夫について、モデルに記載したチームもあったという。例えば、「デンソルジャー」(デンソー)は、入力パラメータの書き込み、シミュレーションの実行、機械学習モデルの更新、というサイクルを完全自動化。その結果、よりよいパラメータを探索できたそうだ。

 また「HELIOS」(アドヴィックス)は、ブロックビンゴの攻略のために、自動でテストする環境を構築した。従来は、手動でさまざまなパターンの初期配置を試していたため、網羅性の検証に大きな工数がかかっていた。しかしこれを自動化したことで、ロジック検証の工数は80%削減、手戻り発生率も70%減少したという。

デンソルジャーの工夫HELIOSの工夫 デンソルジャー(左)とHELIOS(右)の工夫。まさにシミュレーターならではだ(クリックで拡大)

 次回の大会(ETロボコン2021)は、今回と同様のオンライン競技になることが既に正式発表されている。ただ今後、どこかの段階でリアル大会に戻ったとしても、シミュレーターの活用は大きな力になるはずだ。ETロボコンのレベルが一段階上がる可能性もあるのではないだろうか。

 今回の大会について、ETロボコン実行委員長の星光行氏は、「シミュレーター競技であることを忘れるくらい、遜色のない雰囲気で興奮できた。素晴らしかった」と評価。今後については、「新型コロナが終息したら実競技もしたい。実競技とシミュレーターを同時にできたらいいなと思っている」と言及した。

ETロボコン実行委員長の星光行氏もリモートで登壇 ETロボコン実行委員長の星光行氏もリモートで登壇。いつものように総評を述べた

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