世界が挑む「バイオものづくり」、日本は高機能化学品にチャンス材料技術(2/2 ページ)

» 2021年02月04日 07時30分 公開
[朴尚洙MONOist]
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成功事例に学ぶ、コハク酸のバイオ合成は化学合成よりも安価

 バイオものづくりを今後広げていく上では成功事例に学ぶことも必要だ。先述したコハク酸のバイオ合成は、化学合成に比べて廃水量が多いという課題があるものの、最適な生産経路を設計することでトータルコストは化学合成よりも安価になっている。同様に、味の素のアミノ酸発生産プロセス、カーギル(Cargill)のバイオベースアクリル酸、スパイバーの高タンパク質素材デザインプラットフォームなどが成功事例になるという。これらの他、工業用アクリルアミドは、2015年時点で流通量の70%をバイオ合成品が占めている。

コハク酸のバイオ合成のトータルコストは化学合成よりも安価 コハク酸のバイオ合成のトータルコストは化学合成よりも安価(クリックで拡大) 出典:NEDO
バイオものづくりの成功事例バイオものづくりの成功事例 バイオものづくりの成功事例。味の素のアミノ酸発生産プロセス、カーギルのバイオベースアクリル酸、スパイバーの高タンパク質素材デザインプラットフォーム(左)、工業用アクリルアミド(右)(クリックで拡大) 出典:NEDO

 水無氏は「日本は原料となるバイオマスを多量に確保できないという現状がある。そういった量的な制約を前提に、まずは日本の化学産業の強みを生かしやすい付加価値の高い高機能化学品や、年産数千トンクラスのミドルマス品をターゲットに取り組みを進めるべきだろう」と述べる。

バイオものづくりの対象候補化学品マップ バイオものづくりの対象候補化学品マップ。日本ではグラフ右側の汎用化学品ではなく、左側の高機能化学品やミドルマス品をターゲットにすべきだという(クリックで拡大) 出典:NEDO

 これらバイオものづくりに向けて主導的な役割を果たすこと期待されているのは化学メーカーになる。ただし、「ユーザーサイドのニーズも取り込んでいくため電機メーカーや自動車メーカーの参加も必要になる。先進的な技術を持つスタートアップも巻き込んで、世界のバイオ戦略に対抗していきたい」(水無氏)としている。

機能性化学品や生分解性プラスチックのニーズは高い 機能性化学品や生分解性プラスチックのニーズは高く、アカデミアでも基盤技術開発が進んでいる(クリックで拡大) 出典:NEDO

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