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» 2021年02月26日 06時00分 公開

気象海象のリアルタイム分析で燃料コストが500万円減、船の排出削減の最新事情船も「CASE」(1/3 ページ)

東京と伊豆諸島を結ぶ航路に2020年6月から就航した「さるびあ丸」は、タンデムハイブリッド方式推進システムを採用して燃費と静粛性を向上させるなど、数多くの新しい船舶関連技術を導入している。採用された新技術の1つに「気象・海象情報を分析する最新の航海支援システム」がある。

[長浜和也,MONOist]

 東京と伊豆諸島を結ぶ航路に2020年6月から就航した「さるびあ丸」は、タンデムハイブリッド方式推進システムを採用して燃費と静粛性を向上させるなど、数多くの新しい船舶関連技術を導入している。採用された新技術の1つに「気象・海象情報を分析する最新の航海支援システム」がある。

 今回は、さるびあ丸に最新航海支援システムを導入した目的と、いかにして気象海象の予測情報を航海支援に活用しているのか、そして、導入したことによってどのような成果があったのかを、東海汽船の船舶部門工務グループ グループ長を務める青木貴司氏と、さるびあ丸船長の石井孝仁氏に聞いた。

2020年6月に東京と伊豆諸島を結ぶ航路に就航した“3代目”の「さるびあ丸」(クリックして拡大)

環境を守るために開発した最新航海支援システム

 さるびあ丸に導入した航海支援システムは、NPOのマリン・テクノロジストが開発している。このNPO法人は、日本の海事技術を継承するとともに海運における環境負荷低減を目指した研究開発に海事技術の側面から支援することを目的として、海事技術専門家の有志が集まって設立している。

 その事業に「海事技術支援事業」と「ソフトウェア・物品等販売事業」がある。この事業に基づいて、マリン・テクノロジストは、環境負荷軽減と経済効率を向上させる運航支援サービス「eE-NaviPlan」(いーなびぷらん)と「eE-Plan」(いーぷらん)を開発して船会社に向けて販売している。eE-Planは配船支援サービスを、eE-NaviPlanではこの記事で取り上げる運航支援の機能をそれぞれカバーする。東海汽船は、この運航支援サービスをさるびあ丸に導入した。

 eE-NaviPlanは、提供するサービスの対象によって「最適航海計画立案サービス」「船隊運行管理情報提供サービス」「省エネ効果解析評価サービス」に分かれる。最適航海計画立案サービスは、船長を支援するサービスで、燃料消費量を最小限に抑えつつ目的港に予定通り入港できる最適な航海計画を提供する。

 船隊運行管理情報提供サービスは、陸側の運行管理者(貨物船の場合は荷主も)に向けたサービスで、船舶の動静や運航状況、航海実績に関するデータをWebで提供する。このうち、運航状況では、航海スケジュールと実際の航海のずれ、船舶が載せている機関の状態を把握し、航海実績では燃費削減量や運航効率を把握できる。

 省エネ効果解析評価サービスは、船長、運行管理者、荷主など、船舶運航に関わる全ての人を対象としたサービスで、航海ごとの燃料消費とCO2排出量を第三者審査機関がその妥当性を確認した方法で解析して評価する。

 船長向けの最適航海計画立案サービスが、冒頭で述べた“気象・海象情報を分析”する航海支援システムにあたる。外洋を航行する船舶の航海では、常に風や波、潮流の影響を受ける。特に進行方向側から吹く風、押し寄せる波、流れてくる潮流は船の速度を急激に低下させるので、速度を維持するためには機関の回転数を上げなければならない。しかし、それは同時に燃料の消費量とCO2排出量を増やすことにつながる。

 この、経済的にも環境負荷的にもマイナスな要因をできるだけ抑制できる、すなわち、気象と海象の影響をできるだけ受けない最適な航海計画を提案するのが、eE-NaviPlanの目的だ。

環境省の実証実験では、ある海運会社に所属する36隻の船隊全体で4%、稼働率上位6隻で10%のCO2削減が確認できたという(クリックして拡大)

 従来も、この目的のために気象と海象を考慮した航海計画を提案するサービスはあったが、出港前の時点における情報までを考慮した計画なので、出港後の気象と海象変動は反映できなかった。そのため、船側は出港後に予報がずれる可能性を考慮して、少しでも早く目的港に到達できるよう、提案された計画より速い船速で(正しくは機関の回転数を上げて)航行して目的港の沖合で時間を調整するのが一般的だった。このような航海では、CO2排出量は計画より増える傾向にあった。

 eE-NaviPlanでは、燃料消費を必要最小限に抑えるエンジン回転数までも考慮した航海計画を提案し、かつ、気象・海象の予報を3時間おきに更新して船側にリアルタイムで提供できる。そのことで目的港への到達が遅れるリスクを低くできるため、速力を抑えて(正しくは機関の回転数を抑えて)航行できる。その結果、燃料消費量とCO2排出量も抑制できるという。

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