特集:IoTがもたらす製造業の革新〜進化する製品、サービス、工場のかたち〜

IoTデバイスにも必須の「技適」とは何か、どんなデバイスを選ぶべきか経験ゼロから始めるIoTデバイス入門(後編)(1/3 ページ)

IoTデバイスの基本的な構成から、必要な認証、デバイス選定までを前後編で解説する本連載。後編では、IoTデバイスを日本国内で使うために必要な認証いわゆる“技適”についての解説を行った上で、目的に応じてどのようなデバイスを選定していくべきかについて紹介する。

» 2021年03月09日 10時00分 公開

 IoT“Internet of Things”に欠かせない存在であるデバイスについて、基礎知識から解説する「経験ゼロから始めるIoTデバイス入門」。前編では、セルラー通信を利用した無線デバイスを例として、基本的な構成要素の「アンテナ」「無線モジュール」「SIMカード」について解説しました。

 今回の後編では、より実践的な内容として、デバイスを日本国内で使うために必要な認証いわゆる“技適”についての解説を行った上で、目的に応じてどのようなデバイスを選定していくべきかについて紹介します。

“技適”〜無線デバイスを安心して使うために〜

 IoTに限らず、世の中には無線を送受信して通信を行うデバイスが非常に多く存在しています。それらは通信の目的に応じてさまざまな種類の電波を用いて通信をしています。通信を行うためには同じ条件の電波を利用する必要があるため、通信の種類ごとに規格を統一しています。身近な例でいえば、セルラー通信のLTEや3G、家庭でも利用されるWi-Fi、昔からあるFMラジオもそういった規格のうちの一つです(表1)。

LTE Wi-Fi FMラジオ
周波数帯 800M〜2.5GHz 2.4G〜5GHz 76.1M〜89.9MHz
通信速度 50M〜1Gbps 11M〜3Gbps ー(アナログのため)
通信可能距離 〜数十km 〜数十m 〜100km程度
変調方式 OFDM OFDM、DSSS FM(アナログ)
表1 さまざまな通信規格とその特徴

 それぞれの規格では電波の周波数や変調方式、出力などが細かく定められており、お互いに問題なく通信ができるようになっています。しかし、そういった規格に従わず勝手に電波を発するデバイスがあったらどうなるでしょうか。そういった規格に沿わない電波を利用すると、そのデバイスが通信できないだけでなく、他のデバイスの通信に影響を与え、通信ができなくなる可能性があります(図1)。

図1 図1 違法電波デバイスによる通信の妨害の危険性(クリックで拡大)
図2 図2 技適マーク

 そのため、日本では無線を発するデバイス(総称として無線局と呼ぶ)に関するための法律が「電波法」として定められており、無線局の開設(無線局から電波を発する状態にすること)は原則として「免許」が必要です。しかし、携帯電話機のように小規模かつ広く使われる無線局においては免許制とすることが実運用上難しいため、総務省で定める「特定無線局」においては電波法に基づいて事前に基準認証を得ることで免許不要で開設することが可能です。

 この認証が「技術基準適合証明及び工事設計認証」と呼ばれる、いわゆる“技適”になります。技適を受けたデバイスには技適マークが添付されます(図2)。

技術基準適合証明と工事設計認証の違いとは?

 この技適を取るための方法として「技術基準適合証明」と「工事設計認証」の2つが存在しています。技適という省略形の元となっている「技術基準適合証明」は聞いたことがあるかもしれませんが「工事設計認証」にはあまりなじみがないかもしれません。それぞれには以下のような違いがあります。

技術基準適合証明(技適)

 登録証明機関が申請された無線設備1台1台について現物を用いて試験を行い、審査を行った上で証明を行います。

工事設計認証

 認証を受ける無線設備が基準適合しているかを、現物ではなくその設計資料(工事設計)や生産設備の品質管理方法等から登録証明機関が判定し、証明を行う制度です。

 量産され多くが市場に出回るようなデバイスについては工事設計認証によって技適を取得するのが一般的です。逆に市場に数が出回らないような一点物の場合は技術基準適合証明によって認証が行われます。よって、みなさんが利用するようなスマートフォンやIoTデバイスなどは工事設計認証によって認証されたものがほとんどになると考えてよいでしょう。

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