トヨタの「X prologue」にVWの「Power Day」、電動化でどんな発表が?自動車業界の1週間を振り返る(2/2 ページ)

» 2021年03月13日 08時00分 公開
[齊藤由希MONOist]
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材料化学が自動車の鍵を握る!

 さて、今週MONOistで公開した記事も紹介していきたいと思います。まずは電池の基礎解説連載「今こそ知りたい電池のあれこれ」の第2回「リチウムイオン電池で発熱や発火が起きる要因を整理しよう」です。第1回はリチウムイオン電池が膨らむ理由を取り上げました。リチウムイオン電池が膨らんでしまうのは、多くの人が経験していますね。また、リチウムイオン電池の発火は時折ニュースにもなりますので、いつ自分の周りで起きてもおかしくありません。

 リチウムイオン電池のユーザーはもちろん、リチウムイオン電池を使った製品を扱う人にも知ってほしいテーマで、電池のプロが書いている連載です。「そういえばどうなっているんだっけ」と思った方はぜひお読みください。

 電池つながりですが、車載用リチウムイオン電池に関して新たな協議会が発足します(関連記事:電池メーカーなど28社が「電池サプライチェーン協議会」、日本の国際競争力を強化)。

 電池サプライチェーン協議会(Battery Association for Supply Chain、BASC)の会員企業を見ると、車載用リチウムイオン電池のサプライヤーとして知られた企業や、素材メーカーが名を連ねており、自動車メーカーではホンダも加盟しています。全固体リチウムイオン電池についてもオールジャパンの取り組みがありますね。材料からバッテリーセルまで、そうそうたるメンバーが集まることができるのは頼もしいですよね。

 電池に関しては、以前ボッシュがバッテリーセルの内製を断念したのが記憶に残っています。ただし、バッテリーのシステムとしての開発や、バッテリーセルの技術仕様の策定などは引き続き自前で取り組んでいます。電動化事業で重要なのはバッテリーセルへの理解であり、セルの内製化を断念することは競争力の低下にはならないと強調していました。

 オールジャパンの取り組みの中で電池の生産拡大がどうなっていくかはまだ分かりませんが、これだけの企業が集まって材料からリチウムイオン電池や全固体電池を突き詰めていけるのは、競争力になるのではないかと思います。

 電池つながりで材料化学に関して、住友ゴム工業がスーパーコンピュータ「富岳」を使ったシミュレーションや、ゴム破壊の様子を撮影するX線CT撮影の高速化の取り組みを発表しました。富岳によるシミュレーションは、分子レベルでゴムの内部構造を解析し、摩耗や経年による性能低下の抑制に活用します。これにより、新品の性能が長く持続できるようになるそうです。また、高速X線CT撮影では、高速回転によって引っ張られたゴムに穴が開いていく様子が鮮明に捉えられています。摩耗するときにどのような変化が起きるのか、近い状態を再現して撮影し、分析することで耐摩耗性能を向上します。

 新しいEVメーカーは、どこの国からでも生まれるかもしれません。しかし、材料からよりよい性能を追求して自動車や部品に取り入れることができる国ばかりではありません。強いところが磨かれて生かされる環境であってほしいです。

→過去の「自動車業界の1週間を振り返る」はこちら

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