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» 2021年03月18日 09時30分 公開

問題の解決策を見つけるための演繹法入門(その2)VUCA時代のエンジニアに求められるコンサルティング力(11)

VUCAの時代を迎える中、製造業のエンジニアという職業は安泰なのだろうか。本連載のテーマは、そういった不確実な時代でもエンジニアの強みになるであろう「コンサルティング力」である。第11回は、「演繹法」の要素を具体的に広げるための「抽象度」を上げる作業について解説する。

[太田剛(株式会社VSN),MONOist]

 前回は、演繹法における要素の出し方を説明しました。今回は、要素がすぐに具体的になりなかなか広がらない場合に要素の「抽象度」を上げる作業について解説したいと思います。

⇒連載「VUCA時代のエンジニアに求められるコンサルティング力」バックナンバー

 例えば「東京から大阪に移動する」というテーマを設定し、これを「移動方法」という視点で分解してみます。ひとまず、前回行った要素を3つで出すマジックナンバーの法則にのっとって、「新幹線で移動する」「特急電車で移動する」「クルマで移動する」という要素に分解してみましょう。これらの要素をよく見ると、上位概念がありそうなことに気付きます。「陸路で移動する」です。「新幹線」「特急」「クルマ」といった具体的な要素が「陸路」へと一段階抽象化することが可能なことが分かります。

 この抽象化の作業を、コンサルティングの世界では「中間概念を見つける」と表現します。もともとのテーマと、そこから最初に出てきた要素の「中間」に当たる要素だからです。この作業によって発想が広がり、より多くの要素を出すことが可能になります。最初の要素が具体的であればあるほど、抽象化の作業はやりやすいでしょう。

抽象化の作業によって解決法が増える

 「新幹線で移動する」「特急電車で移動する」「クルマで移動する」という要素の上のレイヤーに「陸路で移動する」を置くと、これもこのレイヤーにおける1つの要素となります。ここでも3点セットの法則で、他に2つの要素を出してみましょう。これはすぐに出てくると思います。「空路で移動する」と「海路で移動する」です。順序は、「速さ」の視点で「空路で移動する」「陸路で移動する」「海路で移動する」と並べておきましょう。こうして、上のレイヤーにも要素が出そろったことになります。

 前回の「マラソンの順位がなかなか上がらない」というテーマでも同じ作業をしてみましょう。分解して出てきた3要素は「筋力を上げる」「走る技術を習得する」「道具をよくする」でした。これを抽象化すると、例えば、「平均走行タイムを短縮する」となるでしょう。これを一段上のレイヤーにおいて、さらに2つの要素を考えてみます。ここでは「攻略法を定める」と「体調を整える」にしておきましょう。これら3つは順序を決めにくいので、取りあえずフラットに並べておきます。

 さらにここで新たに出てきた2要素の下位概念も3点セットで考えてみることにします。「攻略法を定める」を分解して出てくる下位概念は、例えば「自分に合った大会を選ぶ」「走行ラインを定める」「ペースメーカーの同行」、同じく「体調を整える」の下位概念は「風邪などの感染症を予防する」「けがしにくい練習を選ぶ」「食事量や内容に配慮する」としてみます。

 以上の作業を示したのが図1です。これで要素がかなり増えたことが分かると思います。抽象化のコツは、「目的」を意識することです。「マラソンの順位を上げるためには何が必要か」という目的に向けて要素の抽象度を上げていくと、新しい要素を思い付きやすくなります。

図1 図1 「中間概念を見つける」ことで演繹法の要素を思い付きやすくなる(クリックで拡大)

 抽象化の作業を行うのは、発想の幅を広げるためです。自分の経験や知識から自然に出てくるものには限界があります。特に、自分が携わる業務においては、無意識に発想を制約している場合も少なくありません。その制限された発想を広げるために必要な作業が「中間概念を見つける」です。これによって、思いもしなかった要素が出てくることがあるのです。

 ここまでの一連の作業で出てきた要素は、全て課題の解決策の候補となります。その全てに取り組むことは難しいので、それぞれの現場、ビジネス、プロジェクトなどの状況に合わせて優先順位を付け、最も重要で、かつ取り組むことが可能な解決策から順番に実行に移していくことがこの次のステップとなります。



 さて次回は、ここまで説明してきた演繹法を使って、以前からのテーマであるリモートワークの課題の解決法を考えてみたいと思います。

筆者プロフィール

アデコ株式会社 太田 剛

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大手メーカーへ新卒入社し、エンジニアとして勤務後、2005年にエンジニア派遣事業を展開する株式会社VSNへ中途入社。エンジン、トランスミッション、エアーバッグ、カーオーディオ、ブレーキ、メーターなどの頭脳部分となる車載用マクロコンピュータの開発に従事後、エンジニア全体の組織の管理職としてエンジニアの組織化を推進。

その後、問題解決の育成プログラムの構築やコンサルティングサービスの促進を担当。2021年1月からグループ会社であるアデコ株式会社のアウトソーシング部門へ出向し、請負業務におけるコンサルティング視点での活動強化に携わる。

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