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» 2021年03月20日 08時00分 公開

“避けられない不可抗力”が増えていく時代にどう備えるべきなのか自動車業界の1週間を振り返る(2/2 ページ)

[齊藤由希,MONOist]
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 ここで興味深い判断をしたのはGM(General Motors)です。半導体不足への対策として、本来は搭載している燃料管理モジュールを装着しないモデルを生産しているとロイターが報じました。この措置により燃費が悪化しますが、性能を犠牲にしても商品を届けることを優先しています。この方策がどんな製品でも真似できるとは限りませんが、生産を止めるのではなく“いま作れるものを作る”という判断が求められる場面が、さまざまな業種においてあるのかもしれません。

 どこでどうやって部品を調達して製品を作るか。その難しさを『輸出か現地調達か、「どこで生産するか」は自動車業界の永遠の悩み』で解説しています。「永遠の悩み」だというのは決して大袈裟ではないのだと実感します。市場の伸び方やニーズの変化を踏まえると、いつまでも同じ場所で同じ量の生産し続けるだけではいけません。ただ、地産地消を推し進めようにも、ハードルがあります。今後は進出する地域で再生可能エネルギーによる発電がどれだけ普及しているかなど、電源構成まで考慮しなければならない可能性もあります。生産の在り方を考える上で検討すべき事項が広がっていますね。

 今週は電池に関する発表が続きました。1つはフォルクスワーゲン(VW)が予告していた会見で、同社の2030年に向けたバッテリーの開発や生産の方針が発表されました(関連記事:VWは3種類の電池でEV展開を推進、コストアップ前提の高性能セルも)。バッテリーの生産は、設備投資も、材料などのランニングコストも負担が大きいと言われています。電池の材料メーカーと比べてセルメーカーは利益率を確保しにくいとも指摘されています。VWがバッテリーの生産に関して大々的な目標を打ち出したことは、収益性の難しいところも含めて状況を動かしていこうとする決意のように見えました。

 もう1つの電池に関する発表は、ソフトバンクです。自動車だけをターゲットにした製品の発表ではなく、長期戦で取り組む課題も含んだ戦略でしたが、「ソフトバンクが取り組む新しいデバイスにどんな電池が必要か」という視点からスタートしたユニークな内容でした(関連記事:ソフトバンクの次世代電池が、寿命より質量エネルギー密度を優先する理由)。

 ソフトバンクで次世代電池の研究を担当するのは、先端技術開発本部という部門です。次世代電池関連の担当部長の齊藤貴也氏は電池業界に長くいて、ソフトバンクに移ってきた方でした。電池づくりをよく知った上で一般的な路線とは違う開発アプローチをとるのは、おそらくご本人にとってやりがいのある取り組みでしょう。次世代電池の出口となる製品をソフトバンク自身で手掛けることも、一般的な電池メーカーとは違うところかもしれません。

 ソフトバンクの次世代電池は、多少の低寿命でもまずは質量エネルギー密度を優先して製品化します。その後で長寿命化を図るのは、決して難しいことではないと見ているようです。長寿命化を達成できれば自動車向けにも、という考えです。楽しみですね。

→過去の「自動車業界の1週間を振り返る」はこちら

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