神経信号で動きを検知するARグラス向けリストバンド、Facebookが構想VRニュース

Facebookは2021年3月17日(日本時間)、AR技術を搭載したスマートグラス向けの入力インタフェースとして、運動神経の電気信号を読み取るリストバンドの構想を発表した。装着者の指や手などの動きを検知し、AR空間内でのクリック操作などをより直感的にする。

» 2021年03月24日 14時00分 公開
[池谷翼MONOist]

 Facebookは2021年3月17日(日本時間)、AR(拡張現実)技術を搭載したスマートグラス向けの新たな入力インタフェースとして、運動神経の電気信号を読み取るリストバンドの構想を発表した。装着者の指や手などの動きを検知し、AR空間内でのクリック操作やタイピング入力などを、より直感的なものにする。

EMGを活用したリストバンドのデモ

EMGを活用して直感的操作をサポート

 Facebookは、Facebook Reality Labs(FRL) Research(前身はOculus Research)を通じてVR(仮想現実)やAR、AI(人工知能)などを用いて新しいインタフェースを開発する取り組みを数年前から続けている。その一環として行っているのが、ARスマートグラスの開発だ。

 ただ、現時点のARスマートグラスには、UX(ユーザー体験)に関わる課題がいくつかある。その1つが、AR空間内での各種入力を行うためのインタフェースだ。FRL Researchはスマートグラスの装着者がより豊かなUXを得るには、AR空間内での仮想オブジェクト操作といったアクションや、タイピングを通じた文字入力などをより直感的に行うためのインタフェースが必要になると考えている。

AR空間での操作をより直感的に*出典:Facebook[クリックして拡大]

 そこで構想しているのが、運動神経の電気信号を測定するEMG(筋電図)を利用したリストバンドである。脊髄で発せられて手首まで伝わってきた神経信号を読み取り、リストバンド着用者の指や手などの動作検知を行う。手首から伝わる運動神経信号は読み取りやすいため、ほんのわずかな動きも正確に読み取れるという。

 これにより、AR空間の仮想オブジェクトをクリックする、つまむ、投げるといった動作を、現実世界と同じ感覚で行えるようになる。AR空間内で仮想キーボードを使ったタイピング入力もできるため、従来よりも高速のテキスト入力を実現する。FRL Resarchは、将来的にはAIを組み合わせて、個人的な習慣や状況に合わせて最適な選択肢を自動提案する「インテリジェントクリック」も可能になると説明する。

EMGを活用したリストバンドのタイピングデモ

 リストバンドへのハプティクス(触覚技術)の導入も検討しているという。具体的には、8つの空気圧ベローズを搭載した「Bellowband」と、8つの振動アクチュエーターを搭載した「Tasbi(Tactile and Squeeze Bracelet Interface)」という2つのハプティクス機構を試作中だ。それぞれ手首に圧力や振動を与えることで、AR空間内の動作に応じた触覚フィードバックを得られる。例えば、弓を引く動作を行った際に、手首に適切な圧力をかけることで、弓を引き絞る感覚をリアルに着用者に伝える。この他、ARアプリケーションの一機能として、メールや電話を受信した際に着用者に振動して通知する機能としても活用可能だという。

アクションの触覚フィードバックを実現し得る*出典:Facebook[クリックして拡大]

 FRL Resarchはリストバンドの実用化時期については明言していない。今後の課題としては、リストバンドを通じて取得し得る操作データなどの保存に関するプライバシー問題について、オープンかつ透明性の高い方法で議論していく必要があるとした。

⇒その他の「VRニュース」の記事はこちら

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.