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» 2021年03月27日 08時00分 公開

素材メーカーが指摘する「ナイロン不足で慌てない会社」の特徴自動車業界の1週間を振り返る(1/2 ページ)

土曜日です。1週間、おつかれさまでした。週末でものびのびするどころではないという人もいらっしゃるかもしれません。年初から車載半導体の供給不足、航空便や船便といった物流網の逼迫(ひっぱく)、2月の米国テキサス州での大寒波の影響を受けた素材メーカーのフォース・マジュール宣言といったイレギュラーな出来事が続いていました。

[齊藤由希,MONOist]

 土曜日です。1週間、おつかれさまでした。週末でものびのびするどころではないという人もいらっしゃるかもしれません。年初から車載半導体の供給不足、航空便や船便といった物流網の逼迫(ひっぱく)、2月の米国テキサス州での大寒波の影響を受けた素材メーカーのフォース・マジュール宣言といったイレギュラーな出来事が続いていました。

 そこに追い打ちをかけるように、先週末(3月19日)にルネサスエレクトロニクスの那珂工場(茨城県ひたちなか市)で火災が発生。23日朝(現地時間)にはエジプトのスエズ運河で大型コンテナ船が座礁しました。日本海事新聞によれば、現地が満潮となる27日夜(日本時間)に離礁を目指しているとのことです。スエズ運河は自動車船にも無関係ではありません。欧州航路の物流はただでさえ遅延が慢性化していましたが、その状況がさらに悪化するのではないかと同紙は報じています。

 共同通信の報道によれば、今回のルネサスの火災で2021年度上期の日系自動車メーカーの減産が165万台に上ると証券会社によって試算されているようです。生産停止に伴う出荷への影響について、ルネサスは「後工程製造ラインで仕掛かり中の製品の出荷が終わる約1カ月後から生じる」としており、4月中旬以降にまた一山あるのでしょうか。なお、3月30日にルネサスがオンラインで会見を開き、その後の状況を説明する予定です。

 今回の火災を受けて、以前取材したことのあるルネサスの役員を思い出しました。那珂工場も被災した東日本大震災から数年たっても「あの時は自動車業界に大変なご迷惑をおかけした」と何度か言及しました。前後の文脈はうろ覚えですが、ルネサスが担っている役割や責任を忘れない、という話の流れで出てきた言葉だったと思います。今回の火災からの復旧は、大手自動車メーカーや電装品メーカーから50人規模の人的支援を受けながら進めています。焼損した装置の代替品の調達にメドはついていないとのことですが、経済産業省は製造装置の代替品を迅速に調達できるよう支援するなど、早期復旧を後押ししていく方針です。

 半導体に関しては明るいニュースもあります。テキサス州オースティンに半導体工場を持つInfineon Technologies(インフィニオン)とNXP Semiconductorsが、寒波で止まっていた工場の操業を再開したのです。両社の工場は停電した2月15日から稼働を止めていました。空調システムを含め全ての設備で動作を確認しますが、高度で繊細な設備は電源を入れることさえ慎重になる必要があったそうです。現地の電力が復旧してから1カ月弱で生産を再開するまで、自身の住環境でさえ寒波の影響を受ける中で、たくさんの人が尽力されたことと思います。

 2021年の自動車業界にはどうしてこんなにトラブルが重なるのだろうか、と部外者ながら暗い気持ちになりました。こうしたそれぞれの事象について、プレッシャーの中で対処し続けている方がたくさんいらっしゃることと思います。どうか、休めるときに少しでも休んでくださいね。

あなたの会社にとっての産業のコメ、どこまで把握できていますか

 さて、「産業のコメ」と聞いて真っ先に思い浮かべるものは何でしょうか。私の場合、初めて耳にした産業のコメはベアリングでした。一般的に産業のコメが指すのは高度成長期では鉄鋼、1970年代からは半導体になったようです。この他にも、積層セラミックコンデンサやモーター、電池についても、産業のコメと呼ばれるのを見聞きしたことがあります。水晶デバイスは「産業の塩」と呼ぶのだとか。ナイロンを含めさまざまな樹脂材料の供給不足の要因となっているヘキサメチレンジアミン(HMDA)は、素材産業のコメと言えるかもしれません。

 お米のように「手に入らないとたくさんの人が困る」という部品や素材は、挙げるとキリがありません。しかし、疫病や寒波、地震のように避けられないトラブルはどこにでもやってきます。トラブルがいつ起きてもおかしくないという前提に立たなければなりません。非常時の対応を準備しておくことはもちろん重要ですが、日々できることも多いのではないでしょうか。

 ナイロンの代替材を持つ素材メーカーの担当者は「今回のナイロン不足では大慌ての会社と、あまり慌てていない会社に分かれている。慌てていない会社は、現場だけでなくマネジメント層も含めて素材メーカーと日頃から情報交換する姿勢がある。また、何か起きる前から、さまざまな材料で置き換えの可能性を検討している」と指摘しました。先日、フォルクスワーゲン(VW)がバッテリー関連の戦略会見で「電池の材料や化学技術もサプライチェーンに含めて考えていくべきだ」と述べたことも、この指摘と根っこは同じところにあるように思えます。

 慌てている会社と冷静に構えている会社に分かれているのは、2月の自動車メーカー各社の決算会見でも同様でした。車載半導体の供給不足の影響に対する見立てが各社とも違いましたよね。例えば、10次サプライヤーまで含めたサプライチェーンの稼働状況を把握できるシステムを持っているトヨタ自動車は、冷静に構えている方の代表例でした。「2次サプライヤーや3次サプライヤー、ましてやその先なんて、うちの直接の取引先じゃないから」などと軽く捉えるような考えって、まだまだ根強いのでしょうか(そんなことはないですよね?)。

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