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» 2021年03月29日 11時00分 公開

われわれは貧困化している!? 労働賃金減少は先進国で日本だけ「ファクト」から考える中小製造業の生きる道(1)(1/4 ページ)

苦境が目立つ日本経済の中で、中小製造業はどのような役割を果たすのか――。「ファクト」を基に、中小製造業の生きる道を探す本連載。第1回では、労働賃金が下がり続ける日本の現状について紹介します。

[小川真由/小川製作所,MONOist]

 はじめまして! 小川製作所の小川と申します。今回から統計データという事実(ファクト)から、中小製造業の生きる道を探っていくという連載記事を書かせていただくことになりました。どうぞお付き合いのほど、よろしくお願いいたします。

はじめに

 突然ですが皆さんは、先進国でわれわれ「日本だけ」労働者の給与が減っているということをご存じでしょうか? それどころか、国として最も重要な経済指標であるGDP(国内総生産)も停滞が続き、右肩上がりで成長し続ける世界の中で、日本だけすっかり置いていかれているようなのです。

 日本は経済規模ではまだGDP世界第3位を誇りますが、それは先進国の中で「人口が多いから」というのは多くの皆さんがうすうす気付いているのではないでしょうか。1人当たりの経済指標を見ると、日本は今では世界のトップレベルでも何でもない「凡庸な先進国」というレベルです。しかもこの状況が改善するどころか、現在も絶賛停滞中で、どんどん他の国に抜かされている状況なのです。まさに、「衰退先進国」とも表現できるような状況です。

 最近になり、ようやくテレビなどでもこのような事実を報道されるようになりましたが、事態はわれわれが感じているよりもずっと危機的だといえます。このように聞くと「なぜ日本だけがこのような状況なのか」「そしてわれわれがその状況を打開できる余地があるのか」ということが、とても心配になりますね。

 今回は、日本の経済統計を可視化し共有ながら「われわれ現役世代(特に中小製造業)がこの日本の停滞を打破できるヒントはないか」ということを一緒に探る趣旨で執筆の機会をいただきました。

photo 150本以上のブログ記事を掲載する小川製作所のWebサイト(クリックでWebサイトへ)

 申し遅れましたが、私は零細町工場のいわゆる“アトツギ”として毎日全身真っ黒になりながら金属加工をしている研磨職人“兼”経営者です。ライフワークで経済統計をグラフ化しブログTwitterで共有させていただいています。

 この連載では、われわれ企業で働く人々が、沈みゆく経済大国日本の中で、今後生き延びていくために必要な考え方や、目指すべき方向性とはどのようなものかを、一緒に統計データを共有しながら考えていきたいと思います。

 連載全てを通じてキーメッセージだと考えているのは「国内経済」で「中小企業」の「経営者」が「付加価値」を重視した経営に転換していくことです。実は国内経済では、中小企業こそ主役だといえます。その経営者は、まさに日本経済復活のためのキーパーソンです。すなわち、中小企業経営者が長期的視野で考え、利益ではなく付加価値を最大化する経営に転換していくことが、日本経済を再び成長させるための大きな原動力になるのではないかと考えているのです。

 私はこれまでさまざまな統計データから数百の統計グラフを作成し、それを150以上のブログ記事にまとめてきました。その上でこの考えに至ったエッセンスを、この連載でまとめていきたいと考えています。

 ショックを和らげるためにあらかじめお伝えしておくと、これから出てくる統計データは日本の停滞や没落を裏付けるような悲観的なものばかりです。ただ、その中にも、日本経済が復活を遂げ、われわれが将来にわたり、より豊かになるために必要なヒントがちりばめられていると考えています。

 加えて白状しておきますと、私は経済学の専門家でも何でもありません。単なる零細町工場の「アトツギ」ですし、専門は「工学」で、仕事は「製造業」です。ですから、この連載では日本経済を学術的な側面から語るようなことはできませんし、むしろ経済学の“常識”とは異なる意見となるかもしれません。ただ、それは自らが労働者としても働く実経済の当事者として、実際のビジネスで感じ取ってきた経験と、これから皆さんと共有していく「統計データ=ファクト」に基づく意見です。それをどのように解釈して、自らの糧としていくのかは、この記事を読まれた皆さん次第です。

 この連載では、以下の順番で記事を展開していくつもりです。

  1. 日本経済の現状を知る
  2. その中で起きている変化と課題を把握する
  3. あるべき企業の姿を見定める
  4. 今後考えていくべき方向性を共有する

 内容については、主に私と同じような中小製造業のアトツギの皆さんや、企業でエンジニアなどとして働く労働者の皆さんを思い描きながら、話を進めていきます。それでは、まずファクトに基づき、日本経済の現状を知ることから始めていきましょう!

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