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» 2021年04月13日 10時00分 公開

クラウド環境で自動運転車の走行テスト、既存ツールよりもシンプルな操作で自動運転技術

自動運転システムの開発は、実走行のテストだけでは検証できない複雑さに突入しつつある中、走行テストで得たデータをシミュレーションまでスムーズに活用する「データドリブン開発」の重要性が高まっている。dSPACEは、データドリブン開発をさらに効率的に回すための新たなツールの提供を開始した。

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スキルのあるドライバーより優れた運転システムへ

 レベル3の自動運転システムの市場投入がいよいよ始まった。レベル2までの自動運転システムは、自動運転とは言っても従来通りドライバーが周辺を常に監視する必要があり、運転操作の主体もドライバーだが、レベル3からは周辺監視もシステムが担う。製品化に当たっては「合理的に予見される防止可能な人身事故が生じないこと」が要求される。レベル3の自動運転システムが事故を起こさないと客観的に証明する必要があるのだ。

 事故を起こさないということは、スキルのあるドライバーよりもレベル3の自動運転システムの運転が安全でなければならない。現時点での法規制では、渋滞中など一定以下の速度域で車線変更せず、同一の車線を走行する場面でレベル3の自動運転システムの使用が認められている。つまり、同一車線内を運転している限りは、割り込みがあっても衝突せず円滑に運転することが求められる。

 UN/ECE(国連欧州経済委員会)では「スキルのあるドライバー」のモデルが定義されており、その定義されたモデルに対して、開発したレベル3の自動運転システムがあらかじめ定義された割り込みなどの全ての状況において安全な動作ができることを示す必要がある。

スキルのあるドライバーよりも安全運転であることを示す必要がある 出典:dSPACE

 「割り込みへの対処」だけであれば一見シンプルなチャレンジに思える。しかし、レベル3の自動運転システムを製品化した自動車メーカーは、延べ130万kmのリアルワールドでの走行テストに加えて、シミュレーターやバーチャルなテストを活用して1000万通りの検証を行って、安全性を確かめた。今後、レベル3以降の自動運転システムが動作する場面を増やしていくには、バーチャルなテストの効率化は避けて通れない。また、自動運転システムの開発が実走行のテストだけでは検証しきれない複雑さに突入していることは言うまでもない。

 こうした背景を受けて、dSPACEでは「データドリブン開発」の提案を強化している。データドリブン開発は下記の一連の流れを、自動運転システムが作動する場面のシナリオに基づいてシームレスにつなげる。

  1. 走行テストを行う車両に搭載した各種センサーのデータ収集
  2. 収集したセンサーデータ活用してバーチャルなシミュレーション空間を構築
  3. そのシミュレーション空間を基にHIL(Hardware-in-the-Loop)やSIL(Software-in-the-Loop)での検証を回す
  4. 成果を実車での走行テストに反映させる

 従来のシミュレーション環境の構築と同様に、時間やコスト、人手など多くのリソースを要する工程を効率的に行えるようサポートしていく。

 レベル3以降の自動運転システムや高度なADASの開発においては、先述した通り従来以上の規模でテストを繰り返し行うことが必須だ。ただ、そうした分野において、dSPACEが応えきれていないニーズがあった。それは、エンジニア向けのユーザビリティだ。

テストを迅速に行うため、シンプルな環境の需要が高まる

 dSPACE Japan ソリューション技術部 グループリーダーの山本光氏によると、「(同社の)ツールを使いこなすまでのハードルが高い」という声がユーザーから寄せられていた。dSPACEの開発環境を活用するには、PCにソフトウェアをインストールする必要があるだけでなく、複数のソフトウェアツールについて熟知しなければならない。1つの作業を行うときに同時に複数のソフトウェアを扱うことも多い。

dSPACE Japanの山本光氏

 「自動運転システムやADASのコントローラーに携わるエンジニアの方々は、アルゴリズム開発とテストで業務を分担しています。コントローラーそのものを開発するエンジニアの方はもともとdSPACEのツールを熟知している方が多いですが、テストエンジニアの方は開発者と同等の知識が必須というわけではありません。しかし、従来のツール群ではテストエンジニアの方にもコントローラー開発者の方と同じように使いこなしていただく必要があり、そこが課題となっていました」(山本氏)

 そこで提供するのが、Webブラウザベースのクラウドシミュレーションプラットフォーム「SIMPHERA(シンフェラ)」だ。車両に搭載する周辺監視用センサーの取り付け位置や車両の諸元値、テストしたい走行場面のシナリオなどをWebブラウザ上のGUIで設定し、シミュレーションの準備が完了する。dSPACEのツールに関する深い知識がなくてもシンプルな操作で作業することができる。

 Webブラウザベースである特徴や、シミュレーションを実行する環境をセットアップしたPCを全員に配布する必要がないという点は、リモート環境やグローバル開発も含めた多様な働き方の実現にも寄与しそうだ。

 SIMPHERAでは、これまでクライアント側で立ち上げる必要のあったdSPACEツールなどが不要となるだけでなく、操作が徹底してシンプルになっている。例えば、シミュレーションで検証する周辺監視用のカメラ、レーダーやLiDARは、サプライヤーが手掛ける実在の製品から選択し、3D CGによるバーチャル環境の車両モデルにドラッグアンドドロップで取り付けることが可能だ。その取り付け位置でのセンサーの画角や視野も直観的に確認できる。

 また、走行テストのシナリオは、NCAP(新車アセスメントプログラム)のテスト項目に準拠したものをdSPACEで用意している他、dSPACEのツールを使って独自に作成したシナリオをアップロードして使うことにも対応している。割り込んでくるクルマとの車間距離、自車や割り込み車両の速度などのシナリオのパラメータもWebブラウザ上で設定できる。

 レベル3の自動運転システムでの割り込みへの対処を検証するには、自車と割り込み車両の速度、車間距離などのパラメータをそれぞれ変えながらテストする必要がある。例えば自車が時速40km、他車両が前方10mの位置に時速35kmで割り込んできた場合はどうか、車間距離が同じでも自車が時速45km、割り込み車両が時速40kmの場合は……と、パラメータの上限と下限の範囲内で、速度と車間距離を一定刻みで自動変更して総当たりで検証する。こうした細かな設定もSIMPHERAではGUIで簡単に指定できる。

 SIMPHERAにはクラウドならではの利点もある。計算ノードを増やせば並列処理でシミュレーションを実行することができるため、同じ所要時間でより多くのテストを行うことが可能だ。ユーザーの希望に応じて、パブリッククラウドでもプライベートクラウドでも利用できる。

 レベル3以降の自動運転システムの開発ではバーチャルテストの数をこなすことが鍵を握る。ユーザビリティを高め、シンプルな操作でテストを行えるようにしたSIMPHERAはデータドリブン開発のサイクルを加速するために不可欠なプラットフォームとなる。

KPIを基準に自動的にテストパラメータを生成できる

 SIMPHERAでは、dSPACEのASMやVEOS、「ModelDesk」「MotionDesk」「ControlDesk」といったソフトウェアと同等の機能を持つ。しかし、ただ既存のツールをWebブラウザベースに置き換えただけのものではない。「インテリジェントテストコントロール(ITC)」というテスト自動化に向けた新しい試みが初めて取り入れられたツールでもある。インテリジェントテストコントロールが活躍するのは、衝突する可能性が生じ始める境目のケースを洗い出すときだ。

 人間が運転する場面を想像してみよう。割り込んできたクルマに対して「衝突した」「衝突しなかった」という2つの結果の間には実際の危険度に濃淡があり、ヒヤッとする場面もあれば、余裕を持って回避する場合もある。自動運転システムの安全性を検証するシミュレーションにおいても、衝突したかどうかという一元的な評価では不十分だ。

衝突したかどうかという一元的な評価ではなく、KPIを基に分析することで安全運転の度合いが見えてくる 出典:dSPACE

 例えば、衝突するケースは、割り込んできたクルマに追突する場合と、割り込んできたクルマのサイドに衝突する場合に分けられる。さらに、自車と割り込み車両の速度差によっては、割り込み車両が自車の後方に入る場合も想定される。割り込み車両に対してどの程度余裕があったかを評価するには、あと何秒で衝突したかを示す「Time to collision」や、割り込み車両との距離を示す「Minimum Headway」という指標(KPI)がある。

 従来のdSPACEの開発環境でも、こうした細かなKPIに基づいてテスト結果を分析することはできた。インテリジェントテストコントロールは繰り返し実施したテストの膨大な結果から、KPIを基に危険なケース(コーナーケース)を判定し、その周辺をさらに重点的に自動でテストのパラメータを変更しながら検証できるようにする点が特徴だ。

 ユーザーが重視するKPIを選択することで、インテリジェントテストコントロールのアルゴリズムがKPIを基にしたコーナーケースを自動的に判断するのだ。割り込みへの対処を例にすると、自車と割り込み車両の速度によっては、10m以上の距離を保てる安全なケース、時速30km以上の相対速度で衝突する危険度の高いケース、その中間=KPIでテスト結果を分類する。

 コーナーケースを特定できるまでテストを繰り返し、その上でコーナーケースを踏まえた検証を人力で繰り返すのは負担が大きい。膨大なシミュレーションを自動的に実行し、エンジニアがコーナーケースの検証に集中できるのは、データドリブン開発のサイクルにおいて大きなメリットだ。

 SIMPHERAでは、同一車線を走行するレベル3の自動運転システム以外にも対応できるさまざまなKPIを用意している。例えば、車両が右左折などで横断歩道を横切る場面で、人と車両の移動の軌跡が交差するまでの時間を評価する「Post Encroachment time」、ブレーキやステアリングを操作するまでの時間、歩行者や他の車両までの最短距離など、さまざまなKPIをユーザーの要求に応じて提供する。

 山本氏は「KPIをベースに次のテストのパラメータを決定できるインテリジェントテストコントロールは、他社にはない、われわれ独自の取り組みです」と語る。現在、インテリジェントテストコントロールはSIMPHERAのシナリオベーステスティング(ScbT)の1つの機能として提供するものだが、将来的にはHILにも適用範囲を拡大する。コーナーケースを重点的に検証できるインテリジェントテストコントロールの広がりは、自動車メーカーやサプライヤーでの自動運転システム開発の競争力向上に大きく貢献するだろう。

インテリジェントテストコントロールによって、シミュレーションでの走行テストの進め方が変わる 出典:dSPACE

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提供:dSPACE Japan株式会社
アイティメディア営業企画/制作:MONOist 編集部/掲載内容有効期限:2021年5月19日