「パナソニックの持つ多様性を価値に転換する」、新CTOの小川氏が会見研究開発の最前線(1/2 ページ)

パナソニックの技術トップとして新たに執行役員 CTO、薬事担当に就任した小川立夫氏がオンライン会見を行った。今回の会見は、小川氏のパナソニックにおける経歴や技術開発についての考え方などを説明すもので、具体的な研究開発の方向性などについて踏み込むことはなかったが、その基盤となる考え方を示唆する内容となっていた。

» 2021年04月22日 06時30分 公開
[朴尚洙MONOist]

 パナソニックは2021年4月21日、同社の技術トップとして新たに執行役員 CTO、薬事担当に就任した小川立夫氏のオンライン会見を行った。同社は2022年4月をめどに持ち株会社制に移行することを決めており、そのための新たな技術戦略も現在策定中である。今回の会見は、小川氏のパナソニックにおける経歴や技術開発についての考え方などを説明すもので、具体的な研究開発の方向性などについて踏み込むことはなかったが、その基盤となる考え方を示唆する内容となっていた。

パナソニック 執行役員 CTO、薬事担当の小川立夫氏 パナソニック 執行役員 CTO、薬事担当の小川立夫氏(クリックで拡大) 出典:パナソニック

 小川氏は1964年12月生まれの56歳。神戸生まれ神戸育ちで、大阪大学理学部で合成化学の研究を行ってから、1989年に当時の松下電子部品に入社し電子部品研究所に配属された。1991年からは本社R&D部門に所属して米国デュポン(DuPont)との共同研究に参画するなどし、1993年からは松下電子部品に戻って樹脂多層基板「ALIVH」の開発と、その事業化に向けた量産立ち上げに携わっている。

 2000〜2001年に米国ジョージア工科大学パッケージリサーチセンターで次世代半導体実装材料の研究を行った後、2002〜2004年に本社経営企画グループでデバイス事業分野の企画業務に従事した。2004年からは本社技術部門で再び研究開発の現場に戻り、実装関連の材料・プロセス開発、印刷エレクトロニクスやEMC(電磁両立性)などを担当。2013〜2015年は全社CTO室 室長(その後R&D戦略室長も兼務)として再び企画業務に携わった。その後、2016〜2017年はオートモーティブ&インダストリアルシステムズ(AIS)社の事業部次長、2017〜2019年は生産技術本部 本部長、2019年10月〜2021年3月はオートモーティブ(AM)社 副社長(車載エレクトロニクス事業部長兼CMO)を歴任し、2021年4月1日付で、現職となる執行役員 CTO、薬事担当に就任している。

小川氏は生産技術本部 本部長時代に何度か会見に登壇している 小川氏は生産技術本部 本部長時代に何度か会見に登壇している。2018年7月の会見では、創業100周年に向け新たに定めた「モノづくりビジョン」について説明した

会社に入って「実験をすると給料がもらえる」ことに驚く

 小川氏は、会社に入ってまず驚いたのが「学生時代までは学費を払って実験していたのに、会社は実験をすると給料がもらえること」だったという。「これはなぜなのか。この給料は回り回ってどうして自分のところにくるのか。今でも問い続けていることでもある」(同氏)としている。

 自身の仕事観で重視しているのは「分野の先端に立つ」「問いを立てるための方法論を学ぶ」「“考え方”についてとことん“考える”」の3つ。「先端から何が見えるのか、見えたことに対してどのような問いを立てられるのか。そして問いを立てるための考え方を身に付けられるようにしておかなければならない」(小川氏)。

 小川氏は自身でも「転勤族」と言うように、パナソニック社内で研究開発業務が中心ではあるものの、企画部門をはじめさまざまな業務に携わった上で、今回CTOに就任している。これらの経歴も踏まえてか、キャリアデザインについては「いろんな仕事を受けていく中で迂回的に形成されるもので、英語で言う“Calling”(呼ばれるもの)ではないか」(小川氏)としている。また、ビジネスにおけるコミュニケーションについても、お金や技術など等価交換的に表に見えているもの以上に「その裏で交わされている信用や尊敬といったものの積み重ねが基本になる」(同氏)という持論がある。

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