デジタルツインを実現するCAEの真価

流体解析におけるメッシュ作成の基礎、これからの設計者CAE実例で学ぶステップアップ設計者CAE(12)(3/3 ページ)

» 2021年05月06日 10時00分 公開
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計算結果の確認

 解析結果は以下の通りです。図7に圧力分布を、図8に流速分布を示します。

圧力分布 図7 圧力分布 [クリックで拡大]
流速分布 図8 流速分布 [クリックで拡大]

 これら結果を見てみると、モデル上部にある流体の入り口部分に近い所にあるノズル部は流速が速く、遠くなればなるほど流速が遅くなっていることが分かります。

 では、定常流れとしてではなく、非定常流れとして時刻歴的に見るとどのような結果が得られるでしょうか。任意の時刻の状態を示した結果(流速分布)が図9になります。

流速分布の時間変化(任意の時刻の状態) 図9 流速分布の時間変化(任意の時刻の状態) [クリックで拡大]

 このように、実際に時刻歴的な変化を見てみると、安定に至る間の各ノズルの流速の変化やバラツキが明確になります。設計者はこうした状態の確認までしっかりと行って、流路を検討しなければなりません。

これからの設計者CAE

 筆者が長年携わっている日本の装置産業界では、20年前以上からずっと品質、コスト、納期に対する厳しい要求が続いています。

品質、コスト、納期への要求 図10 品質、コスト、納期への要求 [クリックで拡大]

 そうした中、設計環境は3D CADの登場とその普及によって劇的に変化し、製造業においてもデジタルトランスフォーメーション(DX)の取り組みへの関心が高まり、単なるアナログからデジタルへの置き換えではない、デジタル化による業務プロセス変革を目指そうとする動きが生まれつつあります。また、このコロナ禍においては、働く場所に捉われない“新しい働き方(働き方改革)”も求められるようになり、クラウド活用を前提とした環境整備も積極的に行われるようになってきました。いつでも、どこでも、どんなデバイスからでも設計業務に携われる、そんな時代が実現されようとしているのです。

 同様に、CAEも時代とともに進化を遂げ、複雑な解析がより高精度に、より短時間にできるようになり、設計者でも扱いやすいツールなども登場し、以前よりもずっとCAEが扱いやすくなってきました。この強力な武器を使わない手はないでしょう。工学的な知識を身に付けながら、業務の中で積極的に設計者CAEを活用してみてはいかがでしょうか。本連載がそのきっかけになれば幸いです。

 学びに終わりはありません。筆者自身もCAEについてまだまだ学ぶべきことが多くあると感じています。今後も皆さんと一緒に学びを続けながら、設計者CAEの普及に努めていきたいと思っています。長期間お付き合いいただきありがとうございました! (連載完)

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Profile

土橋美博(どばし・よしひろ)

1964年生まれ。25年間、半導体組み立て関連装置メーカーで設計・営業・3次元CAD推進を行う。現在、液晶パネル製造装置を主体に手掛ける株式会社飯沼ゲージ製作所で3次元CADを中心としたデジタルプロセスエンジニアリングの構築を推進する。ソリッドワークス・ジャパンユーザーグループ(SWJUG)/SOLIDWORKS User Group Network(SWUGN)のリーダーも務める。


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