エッジコンピューティングの逆襲 特集

ソニーの「Spresense」が採用するオープンソースRTOS「NuttX」とはリアルタイムOS列伝(10)(2/3 ページ)

» 2021年05月10日 10時00分 公開
[大原雄介MONOist]

独自展開からApacheソフトウェア財団によるインキュベーションへ

 この頃からNuttXの配布場所も、Source Forgeからhttp://www.nuttx.org/という独自ドメインに切り替わっている。この当時の特筆すべき話は、新アーキテクチャへの移植を無償で受けていたことだ(図5)。

図5 図5 ちなみに“We are willing...”と書いてはあるが、この時点でNutt氏以外の従業員がいたかどうかは不明(クリックで拡大) 出典:Web Archive

 あくまでオープンソースコミュニティーが入手可能なハードウェアに限っており、また無制限というわけではないが、この時期は対応ターゲットを増やすことに注力していた感がある。ちなみに少し後の2015年4月における対応ターゲットは、CPUコアでいえば以下のようなものがある。

  • ARM:ARM7TDMI/ARM920T/ARM926EJS/Cortex-A5/A8/Cortex-M0/M0+/M3/M4/M7
  • Atmel:8bit AVR/AVR32
  • Freescale:M68HCS12
  • Intel:80x52/80x8
  • Microchip:PIC32MX(MIPS 24Kc)/PIC32MZ(MIPS M14K)
  • Renesas:SuperH/M16C/26
  • ZiLOG:ZNEO Z16F/eZ80 Acclaim!/Z8Encore!/Z180/Z80

 具体的には72ほどの製品ファミリーが並んでいる。よくもまぁ8052とかAVR32とかまでサポートしたものだという感じではあるのだが。

 さて、その後も開発はどんどん進み、NuttXのバージョンも上がっていくのだが、Nutt氏自身はNX Engineering, S.A.の経営からは手を引き(今はコスタリカ人の経営者が運営しているもよう)、非営利のコンサルタント的ポジションにいるらしい。またNuttXのサポートも、ハワイにあるNSC Dgという会社が引き継いだようで、実際にhttp://www.nx-engineering.comにアクセスするとNSC Dgに自動的に移動するようになっている。

 これと前後して起きたのが、オープンソースソフトウェアプロジェクト支援団体のApacheソフトウェア財団によるインキュベーションである。NuttXのプロジェクトは2019年12月にインキュベーション状態となり、プロジェクトそのものも「Apache NuttX」となった(図6)。引き続きNutt氏もこのApache NuttXのPPMC(Podling Project Management Committee)兼コミッターとなっており、実際同氏の経歴も最新の職業は“Open Source Developer”になっている。このあたり、形は違えど「Amazon FreeRTOS」の原作者であるRichard Barry氏がAWSチームに移籍して引き続きFreeRTOSに携わっているのに近いものがある。

図6 図6 「Apache NuttX」のWebサイト(クリックでWebサイトへ移動)

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