複雑化する自動車の設計開発、ワークステーションの性能を倍化して対応せよ設計開発

これまでも自動車の設計開発では先端の3D技術がフル活用されてきた。そこから生み出される3Dモデルは、複雑さを増しながら大規模化しており、これら3Dグラフィックスの表現の進化はGPUに支えられている。NVIDIAの最新GPUボード「NVIDIA RTX A6000」は従来比2倍という飛躍的な性能向上を遂げており、設計開発に用いられるワークステーションの進化に大きく貢献している。

» 2021年05月12日 10時00分 公開
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 CASE(コネクテッド、自動化、シェアリング/シェアード、電動化)という言葉に代表されるように、100年に1度の大変革の真っただ中にいる自動車業界。その設計開発やデザインの現場では、これまで以上に高い柔軟性やスピードが求められており、高度な3Dソリューション活用が必須となっている。

 これまでも自動車の設計開発では、3D CADや3D CG、CAE、VR(仮想現実)/AR(拡張現実)といった先端の3D技術がフル活用されてきた。さらにそこから生み出される3Dモデルは、近年複雑さを増しながら大規模化している。これら3Dグラフィックスの表現の進化はGPUに支えられており、GPUの持つ機能はAI(人工知能)などにも積極活用されている。

 もし、ハードウェアの選定が不適切なために、設計開発者が使用している設計ツールの動きが鈍くなり、手元の作業が止まることがあれば、その思考も止まってしまう。並行してさまざまな検討や作業を行っている、常に多忙な設計開発者やデザイナーにとって、日々使用するこれら3Dソリューションが快適に動くということは非常に重要なことなのだ。

飛躍的な性能向上を遂げたAmpereアーキテクチャ

エヌビディアの高橋想氏 エヌビディア ビジネスデベロップメントマネージャーの高橋想氏

 NVIDIAは、世界を代表するGPUのベンダーであり、その力を3DグラフィックスだけでなくAIにも展開していくことで知られている。自動車業界では、自動車メーカーだけでなくティア1サプライヤーと協業しながら、開発現場のニーズを反映する技術開発を続けている。

 直近の大きな開発成果の一つとなるのが、2020年に発表された最新のAmpereアーキテクチャのGPUを搭載するGPUボード「RTX A6000」である。前世代のTuringアーキテクチャのGPUを搭載する第1世代のRTX製品の後継となり、RTXを冠する製品として第2世代となる。エヌビディア ビジネスデベロップメントマネージャーの高橋想氏は「第1世代のRTXでも、これまでと同様に従来比で1.2〜1.3倍という性能向上を果たしましたが、AmpereアーキテクチャがベースとなるRTX A6000の性能向上は約2倍となり、大幅な飛躍を遂げています」と語る。

「NVIDIA RTX A6000」の概要 「NVIDIA RTX A6000」の概要(クリックで拡大)

 例えば、GPU上で並列処理を行うCUDAコア数でみれば、RTX A6000では1万752コアとなり、前世代のRTX 6000の4608コアと比較して約2.3倍となっている。また、設計開発で用いられるシミュレーションやHPCなどと関わりが深い単精度浮動小数点演算性能も2倍となっている。

 リアルタイムレイトレーシングなどの3Dレンダリングで力を発揮するRTコアも第2世代へランクアップし、コア数も72コアから84コアに増え、こちらの処理性能も最大2倍となった。3Dアニメーションをよりリアルにするモーションブラーレンダリングについては、最大7倍の高速化を実現している。もちろん、同時レンダリングやノイズ除去、シェーディングの性能も大幅に向上した。

 AI処理に用いられるTensorコアも第3世代となり、処理性能は最大5倍となっている。さらに、深層学習の計算の精度を犠牲にせずに効率を大幅に高められるスパース化(Sparsity)に対応することで、処理性能の向上は最大10倍まで跳ね上がる。

 これらの圧倒的なAmpereアーキテクチャの性能向上により、RTX A6000の単精度浮動小数点演算性能は40TFlopsに達する一方で、消費電力は第1世代のRTX 8000/6000より少し増えた程度に抑えられている。また、グラフィックスバスとして最新のPCI ExpressであるGen4に対応している点もうれしいところだ。高橋氏は「Turingアーキテクチャではリアルタイムレイトレーシングを可能にするRTコアを初搭載するという大きな転換期を迎え、GPUボードの製品名もRTXとなりました。そして今回のAmpereアーキテクチャでは、第1世代のRTXで得られた機能について大幅な性能向上をもたらしてくれました」と強調する。

 例えば、自動車の内装や外観のデザインプロセスで広く用いられているAutodeskの3Dビジュアライゼーションシステム「VRED」のユーザーによるベンチマークテストでは、RTX A6000は前世代の「RTX 6000」と比べて2倍以上の表示性能をたたき出している。また、3D CGソフトウェアである「Blender」「V-Ray」「REDSHFT」のレンダリングパフォーマンスも2倍近い表示性能を確認できている。

「VRED」を用いたユーザーによるベンチマークテスト結果 「VRED」を用いたユーザーによるベンチマークテスト結果(クリックで拡大)

 3D CADベンダーもRTXの高い表現力を活用した新機能の開発を進めており、ダッソー・システムズの「CATIA」はRTXによりリアルタイムレンダリングが可能になるという。

 さらに、2021年4月に行われたNVIDIAのユーザーイベント「GTC 2021」では、第2世代RTXのフラグシップとして既に販売を開始していたRTX A6000に続き「RTX A5000」と「RTX A4000」を投入することが発表された。併せて、モバイルワークステーション向けにも第2世代RTXを展開していく方針だ。「薄型軽量を目指すモバイル向けとデスクトップ向けのRTXは仕様が異なっていますが、GPUがAmpereアーキテクチャであることは同じです。これにより、お客さまの使い方に応じて最適な第2世代RTXの製品を選んでいただけるようになりました」(高橋氏)。

新たに「RTX A5000」と「RTX A4000」がラインアップに加わった 新たに「RTX A5000」と「RTX A4000」がラインアップに加わった(クリックで拡大)

ダウンタイムを大幅に軽減するデルのワークステーション「Dell Precision」

 この高性能なNVIDIAのGPUボードに対応するワークステーションでグローバルに大きな存在感を放っているのがデルだ。同社のワークステーションの歴史は、20インチCRTディスプレイが主流であった1997年にスタートし、2001年には他メーカーに先駆けてモバイルワークステーションを、2008年には2Uラック型ワークステーションを市場投入している。

 現在、デルのワークステーションは「Dell Precision」のブランド名で展開されている。このDell Precisionブランドの中で、RTX A6000を活用するのに最適なのがタワー型ワークステーション「Dell Precision 7920 Tower」である。

デルのワークステーションのフラグシップモデル「Dell Precision 7920 Tower」 デルのワークステーションのフラグシップモデル「Dell Precision 7920 Tower」(クリックで拡大)

 Dell Precision 7920 Towerは、インテルの「Xeonスケーラブル・プロセッサー」をデュアルコアで搭載するとともに、6TBの高速メモリ「Optane DC」を利用できるDell Precisionブランドのフラグシップモデルとなる。筐体に多数のスロットを備えており、高い拡張性を有している。

高い拡張性を「FlexBay」で有効活用できる 高い拡張性を「FlexBay」で有効活用できる(クリックで拡大)
デル・テクノロジーズの中島章氏 デル・テクノロジーズ アウトサイドスペシャリスト 部長の中島章氏

 この高い拡張性を有効活用するための仕組みとして取り入れているのが「FlexBay」というコンセプトだ。FlexBayは、ワークステーションに必要な設計を内外から再検討した上で導き出したもので、筐体の前面や背面から工具を用いることなく、容易に各種デバイスの取り付けや取り外しを行えるようになっている。アクセスが簡単な一方で、ロック機能によってセキュリティ性も確保した。

 そして、1400Wという大容量の電源を搭載することで、RTX A6000をはじめとするNVIDIAのGPUボード製品を複数枚搭載しても安定稼働できる点も大きな特徴になる。デル・テクノロジーズ アウトサイドスペシャリスト 部長の中島章氏は「電源は高品質なものを搭載していますが、万が一故障した際もメンテナンス性の高いツールレス(工具不要)ユニットにより、代替の電源ユニットが届き次第、短時間で交換作業ができるので、マシントラブル時のダウンタイムを大幅に軽減することができます」と述べる。

デル・テクノロジーズの川口剛史氏 デル・テクノロジーズ クライアントテクノロジストマネージャーの川口剛史氏

 また、AIの活用で各種アプリケーションのレスポンスとパフォーマンスを向上してくれるマシン管理ソフトウェア「Dell Optimizer for Precision」が無償で付属している。デル・テクノロジーズ クライアントテクノロジストマネージャーの川口剛史氏は「『Dell Optimizer』は全てのデル製品に付属していますが、Dell Precisionブランド向けのDell Optimizer for Precisionのみ、ストレージベースでアプリケーションの動的最適化を行う機能が入っています。さまざまなツールを扱う設計開発者の皆さまにとって、それぞれのツールの動作に最適な条件を使っていくうちに導き出してくれるので、メリットは大きいと思います」と強調する。

 この他、デルの特許技術である「Reliable Memory Technology(RMT) Pro」により、メモリに障害が起きた際にも問題のある領域だけを除外してワークステーションの利用を継続できる。これも、ワークステーションを用い業務のダウンタイムを大幅に軽減するための仕組みといえるだろう。

 なお、Dell Precision 7920 Towerは、後付けのオプション品としてRTX A6000が既に販売されている。2021年5月からは、RTX A6000を組み込んだ状態での出荷も始める予定だ。

2枚の「RTX A6000」で、GPUサーバクラスの性能を実現

アスク プロダクト・コンテンツグループの白澤圭司氏 アスク プロダクト・コンテンツグループの白澤圭司氏

 NVIDIAとデルの販売パートナーであるアスクも、RTX A6000やDell Precision 7920 Towerの展開を強力に推進してきた。アスク プロダクト・コンテンツグループの白澤圭司氏は「自動車業界の設計開発者やデザイナーは、自身の設計した内容の評価、検討を円滑に進める上で、より高機能のGPUを求めています。RTX A6000は従来比2倍という大幅な性能向上によって、そのニーズに対応しました」と語る。

 アスクでは、新製品を矢継ぎ早に投入するNVIDIAのGPUボードの性能が、設計開発プロセスにどのような効果があるかを分かりやすく示すためのデモンストレーションなどを行っている。ここから、VREDを用いたRTX A6000に関するベンチマークテストの結果を見ていこう。

 レイトレーシング時の表示フレームレートについては、一般的なワークステーションのCPUである「Xeon Silver 4114」では1fpsに満たない程度だ。これに対して、RTX A6000を2枚搭載するPrecision 7920 Towerでは9〜10fpsとなる。一方、RTXの第1世代品である「RTX 8000」と「RTX 6000」をそれぞれ4枚、合計8枚搭載するGPUサーバは13fpsを上回る。「ここで重要なのは、2枚のRTX A6000で、RTXの第1世代品を8枚搭載するGPUサーバの半分以上の性能を出せているというところです。実質、ワークステーションでGPUサーバクラスの性能を実現できていると言ってもいいのではないでしょうか」(白澤氏)。この他、アンチエイリアスの処理時間や4K静止画の出力時間などについても、2枚のRTX A6000とDell Precision 7920 Towerの組み合わせは高い性能を確認できたという。

「RTX A6000」2枚を使用した「VRED」によるレイトレーシング結果 「RTX A6000」2枚を使用した「VRED」によるレイトレーシング結果。画面左上に平均FPSとして「9.2」という数字が出ている(クリックで拡大)

自動車の設計開発環境の大革新を支えるGPU

 このようにRTX A6000は、自動車をはじめとする製造業の設計開発プロセスに大きな効果をもたらすポテンシャルを有している。何より、従来比2倍という飛躍的な性能向上は、ユーザーにとって魅力的なのではないだろうか。

 もちろん、AmpereアーキテクチャはAI処理性能についても大幅な向上をもたらしており、データサイエンス用途でも高い評価を得ている。設計開発ツールには、さまざまな形でAI機能が盛り込まれており、それらの性能向上にもRTX A6000は大いに役立つことだろう。そして、RTX A5000やRTX A4000が加わってラインアップが拡充したことで、より多くの設計開発者がAmpereアーキテクチャの高い処理性能の恩恵を受けられる素地は固まりつつあるとい言えそうだ。

左から、アスクの白澤圭司氏、エヌビディアの高橋想氏、デルの中島章氏、川口剛史氏 左から、アスクの白澤圭司氏、エヌビディアの高橋想氏、デルの中島章氏、川口剛史氏。中央にあるのが「RTX A6000」を2枚組み込んだ「Dell Precision 7920 Tower」だ(クリックで拡大)

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アイティメディア営業企画/制作:MONOist 編集部/掲載内容有効期限:2021年6月11日