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» 2021年05月14日 10時00分 公開

規制改革と海外企業参入で活性化する米国医療AI市場海外医療技術トレンド(71)(1/3 ページ)

本連載第67回で、米国のトランプ政権からバイデン政権への移行期における医療イノベーション支援策を取り上げた。今回は、それらのイノベーション支援策の中から医療AIに焦点を当てて取り組みを紹介する。

[笹原英司,MONOist]

 本連載第67回で、米国のトランプ政権からバイデン政権への移行期における医療イノベーション支援策を取り上げた。今回は、それらのイノベーション支援策の中から医療AI(人工知能)に焦点を当てて取り組みを紹介する。

⇒連載「海外医療技術トレンド」バックナンバー

米国FDAがAI/MLベースのSaMD行動計画を公表

 2021年1月12日、米国保健福祉省(HHS)食品医薬品局(FDA)医療機器・放射線保健センター(CDRH)傘下のデジタルヘルス・センター・オブ・エクセレンス(DHCoE)は、「人工知能/機械学習(AI/ML)ベースのソフトウェア・アズ・ア・メディカルデバイス(SaMD)行動計画」を公表した(関連情報)。

 DHCoEは、責任ある高品質のデジタルヘルス・ソリューションを促進することによって、医療を進化させるようステークホルダーに権限を付与することを目標として、2020年9月22日に設置された新組織であり(関連情報)、以下のようなサービス機能を所管している。

  • デジタルヘルス政策・技術の支援とトレーニング
  • 医療機器サイバーセキュリティ
  • AI/ML(機械学習)
  • レギュラトリーサイエンスの進化
  • 規制レビューの支援と調整
  • 先進的製造
  • リアルワールドエビデンスと先進的な臨床研究
  • 規制イノベーション
  • 戦略的パートナーシップ

 DHCoEは、過去にFDAが取り組んできた活動の中で、サイバーセキュリティ、デジタルヘルスソフトウェア事前認証(Pre-Cert)パイロットプログラム、AIやMLの機能を有するSaMD、モバイルヘルス機器、医療機器として使用されるウェアラブルなどを引き継いでいる。

 DHCoEは、FDAが2019年4月9日に公表した「人工知能/機械学習(AI/ML)ベースのソフトウェア・アズ・ア・メディカルデバイス(SaMD)を修正するための規制フレームワーク提案」(関連情報、PDF)と題するディスカッション・ペーパーおよびそれに対するフィードバックを踏まえ、AIおよびMLについて、以下のように定義している。

  • AIは、インテリジェントマシン、特にインテリジェントなコンピュータプログラムを作る科学および工学と広く定義されている。人工知能は、データ統計分析に基づくモデル、if-then文に本来依存しているエキスパートシステム、機械学習など、さまざまな技術を利用することができる
  • MLは、データから学習し、稼働するソフトウェア・アルゴリズムを設計・教育することができる人工知能技術である。ソフトウェア開発者は、機能が変わらないように「ロックされた」、または行動が新たなデータに基づき経時変化できるように「適応的な」アルゴリズムを構築するために、機械学習を利用することができる

 その上で、AI/MLベースのSaMD行動計画では、以下の5つの行動領域を設定している。

  1. AI/MLベースのSaMD向けテーラーメイドの規制フレームワーク:
    • あらかじめ設定された変更コントロール計画に関するガイダンスの発行など、AI/MLベースのSaMD向けに提案されたフレームワークを更新する
  2. グッド・マシンラーニング・プラクティス(GMLP):
    • グッド・マシンラーニング・プラクティス構築のハーモナイゼーションを推奨する
  3. ユーザーに対する透明性を組み込んだ患者中心のアプローチ:
    • AI/MLベースの機器に関する最近のFDA患者エンゲージメント諮問委員会会合に従って、次のステップは、機器表示がユーザーに対する透明性を支援し、AI/MLベースの機器における信頼性を強化する方法に関する公開ワークショップを開催することである
  4. アルゴリズムのバイアスと堅牢(けんろう)性に関するレギュラトリーサイエンス手法:
    • バイアスの特定と消去、アルゴリズムの堅牢性の評価と促進など、機械学習の評価と改善のための手法を開発するためのレギュラトリーサイエンスへの取り組みを支援する
  5. リアルワールドパフォーマンス(RWP):
    • AI/MLベースのSaMD向けのRWPプロセスを検証しているステークホルダーとともに、取り組む

 なお、AI/MLベースのSaMDのサイバーセキュリティについては、「2.グッド・マシンラーニング・プラクティス(GMLP)」の中で、FDAの医療機器サイバーセキュリティプログラムと連携しながら追求するとしている。

 2021年2月1日には、FDAの医療機器・放射線保健センター(CDRH)が、医療機器サイバーセキュリティのディレクター代理(任期:1年)に、ミシガン大学准教授のケビン・フー氏が指名されたことが公表された(関連情報)。フー氏は、DHCoEのサイバーセキュリティ部門も統括するほか、保健福祉省(HHS)傘下の他部局や国土安全保障省(DHS)傘下のサイバーセキュリティ・インフラストラクチャ庁(CISA)などとの調整業務も担うことになっている。

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