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» 2021年05月24日 06時00分 公開

インフィニオンが電動車向けSiCパワーデバイスを強化、武器はIGBTからの移行しやすさ車載半導体

インフィニオンは、EV(電気自動車)向けのSiCパワーデバイスの展開を本格化させる。これまでハイブリッド車(HEV)など電動車向けに100万個以上の出荷実績があるIGBT搭載のモジュール「Hybrid PACK Drive」にSiC搭載版を用意し、自動車メーカーがこれまでと同じフットプリントのままインバーターをアップグレードできるようにする。

[齊藤由希,MONOist]

 インフィニオンは、EV(電気自動車)向けのSiCパワーデバイスの展開を本格化させる。これまでハイブリッド車(HEV)など電動車向けに100万個以上の出荷実績があるSiのIGBT搭載のモジュール「Hybrid PACK Drive」にSiC搭載版を用意し、自動車メーカーがこれまでと同じフットプリントのままインバーターをアップグレードできるようにする。

 SiC搭載のモジュール「Hybrid PACK Drive CoolSiC」は2021年6月から出荷を開始する。同モジュールに対応したオンライン熱シミュレーションをまもなく提供する他、バッテリー電圧が400Vや800Vの電動車向けの評価キットも2021年7〜9月ごろに展開する予定だ。

SiCパワーデバイスの信頼性を高める独自のトレンチ構造

 インフィニオンは、EVのインバーターでは車両の性格ごとにSiのIGBTとSiCがすみ分けし、共存していくと見込んでいる。SiCとSiのIGBTを比較した場合、インバーターとしてはエネルギー消費量を7割削減する効果があり、車両全体で見ると7.6%の改善が見込まれるという。走行距離としては5%以上の拡大に貢献するという。

 SiCはIGBTよりも損失を低減でき、走行距離の拡大に貢献するが、デバイスとしてみるとコストが高い。IGBTは、前後輪で駆動用モーターを使用する4WDタイプの電動車で、2つ目のモーター用インバーター向けに使われる他、搭載する駆動用バッテリーが小さい比較的安価な電動車に向くという。

SiのIGBTとSiCの使い分け(左)。インバーターに着目すると、エネルギー消費量を7割削減できる(右)(クリックして拡大) 出典:インフィニオン

 IGBT搭載のHybrid PACK Driveは25社以上との取引があり、今後2年間においてグローバルで10以上の車両プラットフォームで採用される。また、IGBT搭載のHybrid PACK Driveを搭載したEVはプラットフォームで20種類以上生産されるといい、具体的な採用モデルとしては「ID.3」に代表されるフォルクスワーゲン(VW)のEVプラットフォーム「MEB」の他、NIOの「ES8」「ES6」「EC6」、XPeng「P7」、Li Auto「LiXiang One」、Weltmeister「EX5」などがある。

 インフィニオンが6月から出荷するHybrid PACK Drive CoolSiCは、IGBT搭載のHybrid PACK Driveを拡張したモジュールという位置付けだ。自動車メーカーは短期間でSiからSiCに移行して市場投入できるとしている。Hybrid PACK Drive CoolSiCは、現代自動車(ヒュンダイ)が採用を決めた。同じバッテリー容量のまま走行距離を拡大できる点や、IGBTからSiCへの拡張が容易であることなどが評価されたという。

SiのIGBTからSiCに移行しやすくする(クリックして拡大) 出典:インフィニオン

 SiCパワーデバイスは複数のサプライヤーが手掛けている。インフィニオンは独自のトレンチ技術によって、プレナー構造や他社のトレンチ構造と比較して信頼性を向上しながら、パフォーマンスも改善する。プレナー構造は製造がシンプルだが、チップサイズが大きくなり、大電力への対応が難しいという課題がある。車載半導体メーカーの全般的な傾向としてトレンチ構造の採用に向かっている。

 インフィニオンのトレンチ構造の特徴は、酸化膜を厚めに設計している点だという。「他社の場合はゲート酸化膜を薄くしてオン抵抗を稼いでいるが、信頼性の面ではある程度の酸化膜の厚みを確保する必要がある。われわれは信頼性を重視してパフォーマンスを配分する」(インフィニオン テクノロジーズ ジャパン オートモーティブ事業本部 ヴィークルモーション シニアマネージャーの林直樹氏)。

独自のトレンチ構造によって競合他社との差別化を図る(クリックして拡大) 出典:インフィニオン

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