“設計”から始める製造業DX、3Dデータを核とする変革で新たな可能性の扉を開くオートデスクの日

不確実性が高まる時代、製造業や建設業における設計の在り方も変革の時を迎えようとしている。特に、働き方改革やDXへの対応は急務であり、企業として大きな決断が迫られている。オンラインセミナー「オートデスクの日 Otsuka & AUTODESK Collaboration DAY “2021”」では、その重要な第一歩をどのように踏み出したらよいのか、製造業/建設業におけるDXの実現、業務改善のヒントを、キーノート、ユーザー事例、テクニカルセッションから構成される全40セッションを通じて提示。本稿では同セミナーの見どころをダイジェストでお届けする。

» 2021年05月28日 10時00分 公開
[PR/MONOist]
PR
「オートデスクの日 Otsuka & AUTODESK Collaboration DAY “2021”」のダイジェスト

 製造業、建設業における設計を取り巻く環境は、大きな変革の時を迎えようとしている。企業の働き方改革やデジタルトランスフォーメーション(DX)への取り組みはコロナ禍で一気に加速し、テレワークの活用を前提とするニューノーマルに対応したDX設計環境の構築などが急務となっている。

 しかし、こうした複雑な状況を目の前に、どのようにDXの取り組みを始めたらよいのか? 実際にどのような成果が得られるのか? といった疑問や不安を抱え、思うようにその第一歩を踏み出せないでいる企業も少なくない。

 そのような製造業/建設業に対して、高度な専門知識と提案力、サポート力を武器にオートデスク製品を長年取り扱ってきた大塚商会は、2021年5月13日にオンラインセミナー「オートデスクの日 Otsuka & AUTODESK Collaboration DAY “2021”」を開催。キーノート、ユーザー事例、テクニカルセッションから構成される全40セッションを通じて、オートデスクの最新技術と大塚商会のサポートソリューション、そして、製造業/建設業におけるDXの実現、業務改善のヒントを提示した。本稿では、2021年6月30日までアーカイブ配信中の同セミナーの見どころをダイジェストでお届けする。

変革待ったなし。新たな可能性は“融合”から始まる!

 キーノート「変革待ったなし。新たな可能性は“融合”から始まる!」では、オートデスク 代表取締役社長 織田浩義氏と大塚商会 取締役兼専務執行役員 鶴見裕信氏がトークセッションを繰り広げた。

(左)大塚商会 取締役兼専務執行役員 鶴見裕信氏/(右)オートデスク 代表取締役社長 織田浩義氏 (左)大塚商会 取締役兼専務執行役員 鶴見裕信氏/(右)オートデスク 代表取締役社長 織田浩義氏

 日本のビジネス環境について、オートデスクの織田氏は、深刻な人手不足や建築・土木業界のBIM/CIM原則義務化、製造業のBIMデータ納品など業種の枠を超えた融合、集まれない/移動できない制限への対応などを挙げ、“働き方改革”“変革の要求”“ニューノーマルへの対応”の3つの局面において「待ったなし」の状況にあると指摘。その上で、DXへの投資意欲の高まりや日本政府のデジタル化推進の流れを受け、「変革の時は今だ!」と訴える。

 さらに、大塚商会の鶴見氏は、コロナ禍で先行きが不透明な状況にあるが、行政や民間のデジタル化推進の動きやテレワークに代表される新しい働き方への対応、そしてAI、IoT、5Gなどの市場拡大に期待を寄せるとともに、DXの流れに伴い企業のIT活用ニーズがさらに高まると予測。中でも「行政や民間によるデジタル化推進の動きは注視していきたい」と述べ、実際、大塚商会の下にはDXの理解や導入をどのように進めたらよいか? といった相談の声が多く寄せられているという。

 では、製造業/建設業はこの変革の時をどのように受け止めればよいのか。オートデスクの織田氏は、制限多きニューノーマル時代をピンチではなく、チャンスとして捉えるべきだと強調する。さらに、日本企業の多くでいまだに旧来の働き方に固執する状況が残っており、ITやデジタルを駆使しない生産性の低い企業は淘汰(とうた)されると訴え、「遅かれ早かれ変わらなければならないのであれば、早く変わって、早くメリットを得た方がよいはずだ」との考えを述べる。

 具体的なアクションとして、織田氏は「効果最大化ピラミッド」を紹介。ムダを創出する2次元中心の業務を脱し、早期にミスや手戻りリスクを排除できる3次元での業務にシフト。次の段階では、BIMのように3次元資産に情報を付加して関係者とのコラボレーションを展開し、最終的にはクラウドを活用したより広範囲での連携、コラボレーション、自動化を実現する。オートデスクはこのピラミッドを実現し、その効果を最大化することを使命とし、さまざまなソリューションを提供している。

オートデスクの織田氏が示した「効果最大化ピラミッド」 オートデスクの織田氏が示した「効果最大化ピラミッド」

 設計環境の変化について、大塚商会の鶴見氏は「製造業におけるBIM/CIMの取り組み」と「設計業務・設計情報利用におけるクラウド/仮想環境活用の取り組み」の2つを挙げる。建築・土木業界のBIM/CIM活用の本格化を受け、建築業界向けに設備機器などを設計開発する製造業に対してもBIMデータの提供を要求する機運が高まっている。また、コロナ禍におけるテレワークや工場などの現場での設計情報活用ニーズの高まりを受け、クラウド/デスクトップ仮想化を用いた設計環境に対する期待も大きいという。

 オートデスクの織田氏は「今後、IT/デジタルを駆使する企業と現状にとどまる企業との差はより大きなものになるだろう」と述べ、オートデスクは建築・土木、製造、メディア&エンターテインメントといった幅広い分野に対して提供する、設計ツールとクラウド連携基盤を、“連携・コラボレーション”“自動化”“コンバージェンス”の3つの方向性で進化させていくという。また、こうしたテクノロジーの進化に加え、これらを駆使して顧客企業がビジネス変革を実現するためには、製造と建築の両方の業界に対応できるパートナーの力が不可欠であるとし、大塚商会の存在に大きな信頼と期待を寄せる。

製造業のDXを支えるオートデスクの最新テクノロジー

 続いて紹介するのは、オートデスク 製造業 インダストリー マネージャーのジョン・ウォンジン氏の講演「製造業のデジタル化を進めるなら今! ものづくりのDXを支えるオートデスクの最新テクノロジー」だ。

 ウォンジン氏は、製造業のビジネス変革を実現するDXの取り組みについて、企業ごとにその成熟度は異なるとし、設計データの流れや管理、共有や活用のレベルを中心に捉えた5段階のステップを紹介。「2次元図面が主なコミュニケーション手段で、図面管理がされておらず、メール添付で図面をやりとりしている状況であればレベル1の手前の“レベル0”に相当する」と述べる。

 海外のDX事例を参考に、全てをまねてデジタル変革に取り組もうとする企業もあるが、「そうではなく、まずは自社の現状がどの段階にあるかを把握し、その1つ上のレベルを目指すことが大切だ。日本の製造業は4割弱が2次元図面だけで設計を行っている。そういう現場では、いきなりレベル5のデジタルツインの実現を目指すのではなく、まずは3次元設計を目指してステップアップしていくべきだ」(ウォンジン氏)。

 また、製造業DXの取っ掛かりとして、ウォンジン氏は「設計から始めるべきだ」と訴える。なぜならDXの中心はデータであり、その中で設計データは非常に重要な役割を担うデータの1つだからだ。それと同時に、製造業DXの中核をなす設計データはプロセス間や関係者同士でつながらないと意味がなく、データを必要とする人が、いつでもどこからでもアクセスできる環境が求められる。そのキーとなるのがクラウドであり、その存在を否定するのではなく、「競合他社との差別化を実現する有効手段として活用すべきだ」と主張する。

 オートデスクは製造業のDX推進を支援し、顧客企業が競争力と品質、そして利益率の高い体質へと変革できるよう、さまざまなテクノロジーを開発、提供している。具体的には3Dデータを軸に、「データ&プロセス」「自動化」「設計と製造の融合」「製造と建築・土木の融合」「デジタルファクトリー&デジタルツイン」「VR/AR」の6つの領域に対してソリューション群を提供する。

製造業DXの実現に向けてオートデスクがソリューション提供する6つの領域について説明するオートデスクのウォンジン氏 製造業DXの実現に向けてオートデスクがソリューション提供する6つの領域について説明するオートデスクのウォンジン氏

 その一部を紹介すると、例えば、データ&プロセスであれば「Autodesk Vault」や、Vaultのデータ管理と柔軟性の高いクラウドPLM「Fusion 360 Manage」の良いとこ取りをした「Autodesk Vault PLM」などを新たに提供。自動化では、機械設計CAD「Autodesk Inventor」で自動設計機能を実現する「iLogic」や、AIがクラウドのコンピュータリソースを活用して無数の設計案を提案してくれるジェネレーティブデザイン機能がある。設計と製造の融合では、設計から製造まであらゆるツールを1つにまとめたトータルパッケージ「Product Design & Manufacturing Collection」を提供する他、クラウドCADの「Autodesk Fusion 360」に追加可能な製造関連のさまざまなエクステンションを投入し始めているという。また、製造と建築・土木の融合では、Inventorと建築CAD「Autodesk Revit」とのシームレスな連携を実現。その他、デジタルファクトリー&デジタルツインのサービス構築に有効なWebサービスAPIの「Autodesk Forge」、デザインレビューや教育だけでなく、営業促進にも役立つVR/ARの活用アプローチなどについて触れた。

2次元設計から3次元化を実現して得たもの

 次に、製造業向けセッションのユーザー事例から、日本製衡所 営業本部 営業企画課 課長の青木賢史氏による講演「2次元設計から3次元化を実現して得たもの 〜作業時間最大8割減、工数平均5割減を可能にした設計体系とは〜」を紹介する。

 日本製衡所は産業用はかりの設計、製作を行う総合計量器メーカーで、大型のトラックスケールを主力製品にビジネスを展開している。特に昨今では、トラックなどの商用車に対する過積載の取り締まり強化を背景に、国内だけでなく、海外からの引き合いも多いという。

 本セッションのテーマでもある設計環境の変遷について、日本製衡所は2000〜2001年にかけてドラフターから2D CAD(AutoCAD)へシフトし、その後、2012〜2014年にかけて3D CAD(Autodesk Inventor)を導入。途中、リーマン・ショックの影響で一時的に売上が減少した時期もあったが、現在のコロナ禍においても海外売上こそ減少に転じたが大きな影響もなく、順調に業績を伸ばし続けている。

 日本製衡所は、なぜ3D CAD導入に踏み切ったのか。その理由について青木氏は「CAE」と「ビジュアライゼーション」の活用を挙げる。2次元設計で製品開発をしていた当時、既存顧客から定評のあった自社製品の優れた耐久性について、その根拠をうまく説明できなかったが、CAEの導入によりそれらを数値化、可視化することで、新規顧客の獲得や設計の妥当性を証明する手段にしたいと考えた。また、従来は最終製品が完成してから製品カタログなどを準備していたが、3Dモデルを基にしたビジュアライゼーションの活用により、実機の完成を待たずに製品イメージを先行して作成することで、早期に販売活動につなげられるとの狙いがあった。

ビジュアライゼーションの活用で得られる効果について語る日本製衡所の青木氏 ビジュアライゼーションの活用で得られる効果について語る日本製衡所の青木氏

 だが、新たなツール導入には障壁が付き物だ。日本製衡所では「高額なイニシャルコスト」と「設計者たちの理解を得ること」の2つが障壁となった。特に、設計者たちは通常業務で手いっぱいの状態で「新しいことをお願いすることが難しかった」(青木氏)。また、2D CADで業務が回っているのに、なぜ3D化するのか? との反応も見られたという。そういう意味で、設計者たちの理解を得ることはイニシャルコスト以上の大きな障壁だったといえる。

 ここ20年以上の売上推移を見ても業績は順調で、日本製衡所の経営は非常に安定していた。しかし、この変化のない状態をあえて悪く捉えれば「成長がない状態」と言い換えることもできる。事実、2D CAD導入後、日本製衡所はメーカーでありながら通常業務に追われ、新製品をほとんど市場投入してこなかった。青木氏は、3D CAD導入でこの状況を何とか打破したいと考えていた。

 では、どうやって2つの障壁をクリアしたのか。イニシャルコストについては、行政や地方自治体による助成金などを活用して費用を賄った。また、設計者たちの理解については、まずビジュアライゼーションの実現にフォーカスし、それがどういう効果をもたらすか、実際の製品開発の中でやって見せたという。しかも、ビジュアライゼーションを活用して作られた製品カタログによって、量産の前段階で受注を獲得。この成功体験は社内の理解を得る大きな原動力となった。

 実際の3D CAD導入に関しては、「イニシャルコストだけでなく、ランニングコストも見落としてはならない」と青木氏は指摘する。何とか3D CADを導入できたとしても、実際に成果を生み出すまでに何年もかかっているようではランニングコストばかりが膨れ上がり、本末転倒になってしまう。そこで、青木氏はITベンダーが提供する立ち上げ支援サービスを活用することを推奨する。そのコストをイニシャルコストの中に含めて、3D CAD実用化の垂直立ち上げを目指すというアプローチだ。実際、日本製衡所では大塚商会の立ち上げ支援サービスを活用し、事前の徹底的なヒアリングや業務分析を経て、トータル48時間で3D CAD実用化の立ち上げを実現した。その際、3D設計の社内ルールをマニュアル化するとともに、設計者の1人を3D CAD導入の推進者として位置付けたことも、3D化へのスムーズな移行の大きな助けになった。

 3D CAD導入の効果に関して、青木氏は「期待を裏切らず予想を裏切る効果」と表現する。CAE、ビジュアライゼーション活用の実現まで5年程度かかると見込んでいたが、実際には3年でそれらを成し遂げた。また、2D CAD導入以降、すっかり止まっていた新規製品の開発も加速し、3D CAD導入後は怒濤(どとう)の新製品ラッシュが続いている。製品開発では、コンセプト段階や試作前からCAEを活用することで、試作回数を劇的に減らし、“手戻りゼロ”の状況を生み出している。これにより、本来注力すべき設計や製造に多くの時間を割くことができるようになった。他にも、3D CADで設計したモデルからCAMデータへ変換したり、3Dから2次元図面を生成したりといった作業が非常に楽に行える点も、「使ってみて初めて知る良さだ」(青木氏)と評価する。

3D CAD導入後、停滞していた新規製品の開発も加速 3D CAD導入後、停滞していた新規製品の開発も加速

 青木氏は3D CAD導入を検討する企業に向けて、「3D化の効果は設計だけでなく、試作や生産、営業など、さまざまな所に波及する。そのため、設計単体ではなく、会社全体として3D化を議論すべきだ。総工数に着目して3D CAD導入を検討することが成功の秘訣(ひけつ)だ」とアドバイスする。

 そして、3Dで成果を挙げる日本製衡所の進化は止まらない。普段、持ち運びが不可能な大型の産業用はかりを取り扱っていることから、現在AR/MRの活用に注目しているという。実際、Inventorで設計した3DモデルをOBJ形式で書き出し、それをAppleが提供する無償ARツール「Reality Converter」でUSDZ形式に変換。このファイルをiOSデバイスで読み込むことで、大きな産業用はかりをAR空間に配置し、リアルスケールでの製品レビューや検証に活用する取り組みにも着手し始めている。

オートデスクの日:全40セッションをアーカイブ配信でお届け!!

2021年5月13日に開催されたオンラインセミナー「オートデスクの日 Otsuka & AUTODESK Collaboration DAY “2021”」でお届けした、キーノート、ユーザー事例、テクニカルセッションから構成される全40セッションのアーカイブ配信を2021年6月30日まで実施している。オートデスクの最新技術と大塚商会のサポートソリューション、そして、製造業/建設業におけるDXの実現、業務改善のヒントを余すことなくお届けする!

>>アーカイブ配信の視聴 申し込みはコチラ<<


Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.


提供:株式会社大塚商会、オートデスク株式会社、SB C&S株式会社
アイティメディア営業企画/制作:MONOist 編集部/掲載内容有効期限:2021年6月22日