特集:IoTがもたらす製造業の革新〜進化する製品、サービス、工場のかたち〜
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» 2021年06月17日 11時45分 公開

“柔軟に変化する生産ライン”のカギであるAGV、その価値と課題いまさら聞けないスマートファクトリー(9)(1/4 ページ)

成果が出ないスマートファクトリーの課題を掘り下げ、より多くの製造業が成果を得られるようにするために、考え方を整理し分かりやすく紹介する本連載。前回から製造現場でつまずくポイントとその対策についてお伝えしていますが、第9回では、マスカスタマイゼーション実現のカギとみられる無人搬送車(AGV、AMR)について取り上げます。

[三島一孝,MONOist]

 スマートファクトリー化は製造業にとって大きな関心事であるにもかかわらず、なかなか成果が出ない課題を抱えています。本連載では、スマートファクトリーでなかなか成果が出ないために活動を縮小する動きに危機感を持ち、より多くの製造業が成果を得られるように、考え方を整理し分かりやすく紹介します。第9回となる今回は、スマートファクトリー化で期待されるマスカスタマイゼーションに向けポイントとなる無人搬送車(AGV、AMR、さまざまな定義がありますが本稿ではAGVで統一)の価値と課題について取り上げていきます。

本連載の趣旨

 本連載は「いまさら聞けないスマートファクトリー」とし、スマートファクトリーで成果がなかなか出ない要因を解き明かし、少しでも多くの製造業がスマートファクトリー化で成果が出せるように、考え方や情報を整理してお伝えする場としたいと考えています。単純に解説するだけでは退屈ですので、架空のメーカー担当者を用意し、具体的なエピソードを通じてご紹介します。

架空企業の背景

 従業員300人規模の部品メーカー「グーチョキパーツ」の生産技術部長である矢面辰二郎氏はある日、社長から「第4次産業革命を進める」と指示され途方に暮れます。そこで、第4次産業革命研究家の印出鳥代氏に話を聞きに伺い、さまざまな課題をクリアしていきます。


本連載の登場人物

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矢面 辰二郎(やおもて たつじろう)

自動車部品や機械用部品を製造する部品メーカー「グーチョキパーツ」の生産技術部長兼IoTビジネス推進室室長。ある日社長から「君、うちも第4次産業革命をやらんといかん」と言われたことから、どっぷりのめり込む。最近閉塞感にさいなまれている。


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印出 鳥代(いんだす とりよ)

ドイツのインダストリー4.0などを中心に第4次産業革命をさまざまな面で研究するドイツ出身の研究者。インダストリー4.0などを中心に製造業のデジタル化についてのさまざまな疑問に答えてくれる。サバサバした性格。


*編集部注:本記事はフィクションです。実在の人物団体などとは一切関係ありません。

前回のあらすじ

 さて、前回のおさらいです。第8回の「工場で広がる『無線』への期待と課題、ローカル5Gは何を変えるのか」では、スマートファクトリー化で注目度が増している無線通信への期待と課題について取り上げました。

 デジタル技術によるデータ活用が必須となるスマート工場において、ネットワークは重要な基盤です。ただ、従来は工場内で使用されるネットワークは一部で限定的に使用されるものでした。しかし、スマート工場化が進む中で、扱う情報量や接続する機器数、データの種類なども大幅に増えています。そこで、ネットワークがボトルネックになり、工場内でさまざまな支障が出るケースが増えてきました。

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グーチョキパーツも「工場内ネットワークの在り方」を考える時が来たのかもしれないわね。


 こうした中で、工場など産業用で活用するためのネットワーク技術や無線通信技術も進化を遂げつつあります。その中で、有線通信と無線通信の選択肢があります。有線通信は、信頼性が高いメリットの代わりにケーブル敷設などのコストや負担が大きくなるデメリットがあります。無線通信は逆に設置が楽ですぐに使えるというメリットがある一方、遅延も含めた信頼性に課題があります。また、無線通信技術には免許が必要な免許型と、自由に設置できる非免許型が存在します。これらの選択肢の中から、将来を見据えつつ、それぞれの工場にふさわしいネットワーク環境を選ぶべきだということでしたね。

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有線では難しかったところで、通信が必要なところに最適な技術を当てはめるという順番かしら。無線通信である必然性みたいなところね。


 また、新たな無線通信技術として、特に工場での活用が期待されているのがローカル5Gです。ローカル5Gは免許型の無線通信技術となりますが、現状では免許申請などで実証そのものを始めるのに大きな負担がある他、基地局や関連システムの設置に大きなコストが発生します。ただ、印出さんは、高速大容量通信、低遅延、多拠点接続という5Gの利点を将来的に生かす必然性があるのであれば、早めに実証を進めるべきだと主張していました。

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5Gの利点は、高速大容量通信、低遅延、多拠点接続などがあるといわれているけど、その利点を生かさなければできないことがあるのであれば、早めに実証を進めた方がいいかもしれないわ。


 ローカル5Gは将来的には期待の大きい技術ですが、現状ではさまざまな技術的な制約、費用対コストの問題などさまざまな課題があります。有線ネットワークではケーブル配線だけで多大な費用がかかる「大規模な敷地面積の工場」など、一部のケースを除いては、すぐに費用対効果を得るのは難しい場合も数多く存在します。こうした「限界」を冷静に見極めた中で、将来的なロードマップを描きどの領域で活用するのかを見定めていくことが重要だという話でしたね。


 さて、今回はスマート工場化の理想とされる「マスカスタマイゼーション」実現のカギとされる、AGVの価値と課題について取り上げていきます。

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