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» 2021年06月23日 10時00分 公開

タテとヨコのデジタル化によるコマツの設計プロセス改革とシミュレーション活用SIMULIA Community Virtual Conference Japan 2021(4/5 ページ)

[八木沢篤,MONOist]

(2)詳細設計におけるシミュレーション活用事例

 続いて、横山氏は詳細設計におけるシミュレーション活用事例として、耐圧応力解析について取り上げた。

 耐圧応力解析とは、油圧負荷時、部品内部に発生する応力を予測する解析のことで、例えば、キリ穴交差部などに発生する応力を確認する際などに用いられる。さまざまな油圧機器に対して行われるため、解析対象となる部品の種類が非常に多いことが特徴として挙げられる。「そのため、部品によっては部品独自の解析ノウハウがあり、標準的な方法として手順書に落とし込むのに苦労していて、解析する際はモデルチェンジ前の部品や類似部品の解析結果を参考に解析することも多い」(横山氏)という。

 また、従来は解析者に依存した解析プロセスであり、設計者が解析専任者に解析を依頼する流れであったが、近年、解析件数が増加傾向にあり、解析専任者の工数が不足し、設計者自らが解析を行うケースも生じていた。その結果、解析品質のバラツキや間違いの発生、報告書の未作成や解析データ埋没の恐れなどが課題となっていた。

 こうした課題に対して、同社は「タテのデジタル化」を推進。解析専任者の手順を自動化した解析プロセスを実現し、かつ解析結果を自動で残すようにした。「これにより、誰でも専任者品質の解析(解析品質安定化)の実現と、解析経験をモレなく蓄積する(管理された解析プロセスと、経歴が明確なデータで解析ナレッジを深化させる)ことを狙う」(横山氏)。

耐圧応力解析:プロセスの課題と対応 耐圧応力解析:プロセスの課題と対応 ※出典:小松製作所 [クリックで拡大]

 では、解析プロセスの整理と自動化をどのように進めていったのか。まず、ベテランの解析専任者が過去に実施した耐圧応力解析について整理を行った。具体的には、解析手順、設定や確認のポイントについて、解析対象で共通する部分と、解析対象に依存する部分を整理した。また、解析で参照すべき根拠情報の整理も併せて行った。横山氏は「これにより、技術標準、NG事例など、解析の根拠情報が整理され、若手が学びやすくなった。根拠を知ることで、改善を考えるきっかけになることを期待している」と語る。

 そして、整理した解析プロセスの自動化に関しては、全てを自動化するのではなく、自動化の狙い、工数、効果を比較し、対象範囲を決定した。例えば、応力を確認したい場所は部品により異なるため、詳細結果は人がデータを直接確認すると割り切り、自動レポートは共通項目の必要最小限で構成するようにした。また、解析プロセスの自動化については、解析部分はPythonスクリプトで「SIMULIA Abaqus」を操作し、レポート部分はVBAスクリプトでExcelを操作する形にし、それをダッソー・システムズが提供する「3DEXPERIENCEプラットフォーム」上に実装したという。

耐圧応力解析:プロセスの整理と自動化 耐圧応力解析:プロセスの整理と自動化 ※出典:小松製作所 [クリックで拡大]

 実際の活用手順としては、解析準備として、解析モデルの準備(自動設定用の目印作成)と条件ファイルの準備(目印に対応する条件の設定)を行う。解析の投入では、3DEXPERIENCEプラットフォーム上で実行する解析プロセスを選択し、解析に必要な情報(解析モデルと条件ファイル)の登録を行って、解析を実行する。解析は自動で行われる。結果確認は、生成された定型レポートを基に、計算異常の有無や計算値を確認する。また、必要に応じて、詳細を3Dモデルで確認することも可能だ。「解析プロセスの自動化により、これまで人が行っていた解析ツールの複雑な操作が不要となり、解析品質を安定化できた」(横山氏)。

耐圧応力解析:自動化したプロセスの流れ 耐圧応力解析:自動化したプロセスの流れ ※出典:小松製作所 [クリックで拡大]

現在進行形で取り組む「ヨコのデジタル化」(2)

 さらに講演では、現在“構築中”の解析プロセスにおける「ヨコのデジタル化」の取り組みについても紹介した。

 従来は、仕様取り交わしで要求仕様書が固まり、構想設計で設計情報が決まると、必要な解析を属人的に判断して決めていた。また、解析で参照すべき情報に関しても属人的に集めていた。そのため、「担当者の経験や知識量によるバラツキの恐れ」「過去のデータやナレッジなど、参照すべき情報を見逃す恐れ」が課題として挙げられていたという。

 これを、属人的なアプローチから脱却し、データのつながりで情報が集まるプロセスとすることで、「例えば、要求仕様で圧力が変更され、設計情報でケース部品が変更された場合、この変更したデータにひも付く解析はどれかとたどることで『耐圧応力解析が必要だ』ということが誰でも分かるようになる」(横山氏)。また、耐圧応力解析を行う際に必要となる情報もつながって、そろうようにしておく。これにより、設計品質安定化、ナレッジの共有と活用最大化を狙う。「こういった上流データと連動するプロセスを現在構築している」と横山氏は説明する。

耐圧応力解析:プロセスの「ヨコのデジタル化」 耐圧応力解析:プロセスの「ヨコのデジタル化」 ※出典:小松製作所 [クリックで拡大]

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