丁寧な「現品管理」でスムーズな工程管理と高い生産性を実現する工程管理は、あらゆる現場問題を解決する(7)(3/3 ページ)

» 2021年07月01日 10時00分 公開
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3.5 保管

 物品の保管については、下記の「(1)保管の要件」を満たし、「(2)保管の要領」に基づいて、丁寧に保管することが大切です。

  • (1)保管の要件
    • (a)保管品は、必要時に速やかに出庫できること
    • (b)保管品は、常に変形や変質、破損の有無および数量の確認を行いやすく、速やかに棚卸しができること
    • (c)最も経済的に、かつ安全で衛生的に保管すること
  • (2)保管の要領
    • (a)最も適切な場所を選定する
    • (b)保管区分に応じて、明確に区分しておく
    • (c)同一品種では、寸法順や図番順などの序列に従い保管する
    • (d)小物品は、箱や戸棚、棚などに置く
    • (e)大型のものは下、小型のものは上に置く
    • (f)重いものは下、軽いものは上に置く、入出庫の頻繁なものは出入口の近辺で、取り扱いやすいように置くことで、重心のバランスを保つこと
    • (g)最も適当とする積み重ね方法によること
    • (h)区分や場所を表示する
    • (i)数量把握が容易な保管方法によること
    • (j)先入先出を原則とする保管方法とする
    • (k)出し入れに支障がないように、通路を確保すること
    • (l)管理データと実数の差異防止に留意する
    • (m)安全性を確保した保管をする

3.6 配膳

 組立作業前に必要な部品を取りそろえる配膳作業は、組立作業開始の準備でもあり、作業組立図に基づく構成部品の取りそろえと員数チェックを行います。構成部品が各組立図で共通的に使用される場合には、それぞれの組立図に必要員数を図番ごとに配分し、組立図単位に配膳箱に整埋して一時待機とします。作業開始のチャージ指示があればいつでも配送できるように準備する作業のことを言います。

 例えば、コンベヤーシステムにおいては、各工程のポジションに対して、途切れることなくタイムリーに、そして品質的にもムラのない形で、材料や部品、半製品などを供給することが必要です。配膳の成否がシステム全体にも影響してくるので、もし材料や部品の過不足や不良品の混入などの不具合が発生した場合は、速やかに関係部署に連絡し、対策を依頼しなければなりません。また、配膳箱への整理方法は、使う順序に、使用時に部品を反転させることなく使う向きに収納されていればさらに作業効率が向上します。

 一般的に、配膳作業場所と一時待機品置き場の面積と、組立作業場所の面積は、ほぼ同一になっている工場が多いようです。それだけ、配膳作業は、作業効率の面で重要視されているといえます。

3.7 現品管理の帳票の整備

 一般的に部品倉庫における現品管理では、ややもすれば「自分の課で使うものだから」という観念に陥りやすいため「記録する」「動きを把握する」ことをおろそかにしがちです。しかし、生産資材を効率的に供給し、生産活動を円滑に遂行させる使命を果たす上では、常に現在の状況を確実に把握しておく必要があります。それには、帳簿、記録が重要となります。部門間の融通にも必ずその都度、伝票で処理を行う必要があります。現品管理上、最小限、整備すべき帳票として、一般的に活用されている帳票類を表1に列挙しておきましたので、参考としてください。

表1 表1 現品管理のための帳票類(例)(クリックで拡大)

◇     ◇     ◇     ◇

 資材、仕掛品、製品などの“物”について、特定の時点における所在場所と数量を確認することを「現品管理」というわけですが、作業あるいはその前後の運搬や保管の際に発生する遅れや進み、あるいは加工不良、変質、破損、紛失などによって、あるべき数量と実際の数量の間に食い違いが生じてくることは、時折発生しても不思議ではありません。このような状態を放置しておくと、計画生産数量や在庫量に過不足を生じ、工程管理や生産効率に支障を来すばかりでなく、物の取り扱いに関する責任があいまいになり、経済的な損失面では計り知れないものがあります。また、その発生原因の追究もままならず、いつまでたっても改善されないという最悪の状況を招きかねません。

 そこで実際に「何が、どこに、幾つあるか」を的確に掌握して、過不足がある場合には、その原因を調べ、処置をとることが必要になってきます。通常、資材倉庫と製品倉庫における現物管理は比較的容易ですが、工程間、すなわち仕掛かり品の管理は、物が絶えず移動していますので把握しにくいというのが一般的です。

 現品管理の方法としては、受払台帳や移動票、出庫伝票あるいは検査結果票などの帳票によって予定と実績を対比する方式と、棚卸しによる実際の数量チェックの方法があります。しかし、棚卸しは、かなりの手間を要しますので、むしろ、積極的に不具合の発生を防ぎ、計画量あるいは帳票上の数量と実際の数量が常に一致するようにしておくことが望ましい対応といえます。

筆者紹介

MIC綜合事務所 所長
福田 祐二(ふくた ゆうじ)

日立製作所にて、高効率生産ラインの構築やJIT生産システム構築、新製品立ち上げに従事。退職後、MIC綜合事務所を設立。部品加工、装置組み立て、金属材料メーカーなどの経営管理、生産革新、人材育成、JIT生産システムなどのコンサルティング、管理者研修講師、技術者研修講師などで活躍中。日本生産管理学会員。



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