連載
» 2021年07月01日 11時00分 公開

JIS製図って何ですか!? 「第三角法」について考える3D CADとJIS製図(2)(1/2 ページ)

連載「3D CADとJIS製図の基礎」では、“3D CAD運用が当たり前になりつつある今、どのように設計力を高めていけばよいのか”をテーマに、JIS製図を意識した正しい設計/製図力に基づく3D CAD活用について解説する。第2回は、3D CADの運用を意識した上で、設計製図の基本であり、2D図面の作成に不可欠な「第三角法」について取り上げる。

[土橋美博/飯沼ゲージ製作所,MONOist]

はじめに

 今回は、2D/3D設計でその基礎となる「第三角法」の説明と、アセンブリ設計からパーツ設計へ展開する際の“モデルの向き”に関する考え方を、JIS製図の知識を交えながら解説します。この内容を通じて、設計成果物としての2D/3D図面の“一義性(意味が一種類で他の解釈の余地を残さない)”について理解を深めていただければと思います。

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「図面」とは?

 「JIS Z 8310:2010 製図総則」を確認してみると、図面とは「必要な情報を伝えるもの」「一義性をもつ」という考え方が記されています(図1)。

JIS Z 8310:2010 製図総則からの抜粋 図1 JIS Z 8310:2010 製図総則からの抜粋 [クリックで拡大]

 3D図面の形状は、誰が見ても同じ形として理解できることから、情報伝達、一義性の観点からも優れているといえます。

 現在は、3D CADとCAMの連携も普及していますが、全ての加工現場でCAMが使用されているわけではなく、いまだにその多くは、3D図面から2D図面を作成して加工現場に渡すという流れが一般的です。

※【CAM(Computer Aided Manufacturing)】:(3D)CADで作成された形状データを入力データとして、NC(数値制御)工作機械で加工するためのNCプログラム作成をコンピュータ上で行うシステムのこと。

 筆者自身、社内で3D CAD推進を担う立場として、3D(3D図面)を中心とした一気通貫のモノづくり(CAM活用なども含む)の実現を追求する一方、2D図面の必要性が残る現状を踏まえ、3D CADを利用する設計者であっても、2D図面の重要性を理解し、おろそかにしてはいけないという認識を持っています。

 図面を作成する上で重要なことは、2D/3Dも同じで、「必要な情報を確実に伝える」「一義性をもつ」ということです。そういう意味で、JIS製図の知識が欠かせません。ということで、今回は3D CADの運用を意識した上で、設計製図の基本であり、2D図面の作成に不可欠な第三角法について解説していきます。

「第三角法」とは?

 3Dモデルのような立体形状は、「投影」という方法によって平面上に表現されますが、この投影法の1つが第三角法です。非常に一般的な投影法で、広く活用されている第三角法ですが、「“第一”はないの?」と疑問に思う人もいるかもしれません。「JIS Z 8315-2:1999 製図−投影法−第2部:正投影法」を見てみると、「第一角法」と第三角法、「矢示法」についての記載を確認できます。

JIS Z 8315-2:1999 製図−投影法−第2部:正投影法からの抜粋 図2 JIS Z 8315-2:1999 製図−投影法−第2部:正投影法からの抜粋 [クリックで拡大]

 さらに、「JIS B 0001:2019 機械製図」を見てみると、投影図の作成には第三角法を使用する旨が記されています。

JIS B 0001:2019 機械製図からの抜粋 図3 JIS B 0001:2019 機械製図からの抜粋 [クリックで拡大]

 それでは、第一角法(図4)と第三角法(図5)の違いを比較してみましょう。

第一角法/第一角法の2D図面 図4 第一角法/第一角法の2D図面 [クリックで拡大]
第三角法/第三角法の2D図面 図5 第三角法/第三角法の2D図面 [クリックで拡大]

 第一角法、第三角法ともに「平行投影」を用いていますが、これを「正投影」といいます。また、第一角法では投影面が3Dモデルの奥にあるのに対して、第三角法では投影面が3Dモデルの手前にあり、それぞれ「投影図」が作られています。

 立体形状は1つの投影図だけで表現することができないため、複数の投影面が用いられます。なお、筆者が使用している「SOLIDWORKS」では、3D図面から2D図面を作成する際、シートプロパティ上で投影図タイプ(第1角法/第3角法)を設定でき、それぞれ切り替えると2D図面が自動で更新されます。

「SOLIDWORKS」のシートプロパティの一部 図6 「SOLIDWORKS」のシートプロパティの一部 [クリックで拡大]

 筆者が設計者になったばかりのころ、製図の理解不足から、間違って第一角法で2D図面を作成してしまったことがあります。その当時は製図台で図面を手描きしていました。第一角法そのものは間違いではありませんが、JISでは“第三角法を使用すること”が定められています。

 現在、3D CADで作成した3D図面から2D図面を作成する機能は、ほとんどの3D CADで標準的に提供されています。それも、ほぼ自動で生成できるため、設計者は特に意識することなく2D図面を簡単に用意できます。しかし、だからといって2D図面の作成を全てツール任せにしてよいわけではありません。この優れた機能を実務でしっかりと使いこなすためには、投影図、第三角法の理解が必要となります。

 これは前回お届けした「正面とは何か」のお話が、今回の投影図の内容とつながる部分でもあります。例えば、過去の2D図面や2D図面が描かれた部品カタログなどを読み取る際、設計製図の基本ともいえる第三角法を理解していることによって、頭の中で正しく形状を認識でき、それを3D CAD上で正しく表現する(3D図面に落とし込める)ことが可能になります。

 ちなみに、SOLIDWORKSでは2D図面を作成する際、パーツの正面/平面/右側面の設定に基づき、ビューを図面シート上にドラッグするだけで、第三角法に基づく2D図面を作成できます。

「SOLIDWORKS」の2D図面作成機能 図7 「SOLIDWORKS」の2D図面作成機能 [クリックで拡大]
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