人を苦役から解放する物流ロボットの実現へ、PFNとPALの協業が生み出すもの物流のスマート化(1/2 ページ)

物流ソリューション事業への参入を発表したPreferred Networks(PFN)は、その第1弾としてデパレタイジング(荷降ろし)ロボット用コントローラーの提供を開始する。その最初のパートナーとなったのが、物流センター業務のデジタル化で多数の実績を持つPALだ。両社は協業によって物流現場の自動化をどのように進めようとしているのだろうか。

» 2021年07月02日 10時00分 公開
[朴尚洙MONOist]

 さまざまな製造業にAI(人工知能)技術を提供しているPreferred Networks(PFN)は2021年5月、物流ソリューション事業への参入を発表した。その第1弾として、デパレタイジング(荷降ろし)ロボット用のコントローラーを提供するとともに、物流現場でのロボットの普及を目指して「PFNロジスティクスパートナープログラム」を開始することを表明。併せて、物流センター業務のデジタル化で多数の実績を持つPALとの提携により、デパレタイジングシステムの開発ならびに複数現場へのソリューションの導入を共同で進めることも明らかにした。

「アマゾン・ピッキング・チャレンジ」で好成績も芽が出ず

PFNは「アマゾン・ピッキング・チャレンジ」に参加して好成績を収めた PFNは「アマゾン・ピッキング・チャレンジ」に参加して好成績を収めた(クリックで拡大) 出典:PFN

 PFNの物流ロボット技術と言えば、2016年6〜7月に行われた米国アマゾン(Amazon.com)主催の物流向けロボットの精度を競う「アマゾン・ピッキング・チャレンジ」における好成績を記憶している人も多いだろう。棚からアイテムを取り出すタスクで世界第2位、格納するタスクで世界第4位となり、同社のAIやロボットの高い技術を広く知らしめることができた。

 また、2018年の「CEATEC」では、物流ロボットの関連技術ともいえる、散らかった部屋の中のさまざまなモノを片付ける「全自動お片付けロボットシステム」を披露するなどしている。

CEATECにおける「全自動お片付けロボットシステム」の展示 CEATECにおける「全自動お片付けロボットシステム」の展示(クリックで拡大)
PFNの比戸将平氏 PFNの比戸将平氏

 PFN 執行役員 インダストリーソリューション担当VPの比戸将平氏は「当社が製造業向けを中心に事業を展開していく中で、アマゾン・ピッキング・チャレンジで見せた物流分野の技術については、そこからなかなか芽が出なかった。しかし、CEATECの展示をきっかけに物流業務のデジタル化で有力なPALとの接点ができ、今回の物流ソリューション事業への参入につなげることができた」と語る。

 PFNの物流ソリューション事業の第1弾となるのが、デパレタイジングロボット用のコントローラーである。物流センターにおいて、トラックで運ばれてくるさまざまな重さ、形状の荷物を、行先ごとにかご車やコンベヤーなどに載せ替えるデパレタイジングは、作業者にとって最も負荷の大きい物流業務の一つとされている。

PALの芦田慎作氏 PALの芦田慎作氏

 PAL 取締役 ロジテック推進室の芦田慎作氏は「当社は物流業務で人と機械の協働によってパフォーマンスを発揮できるような自動化を目指している。特に、人にとって“苦役”になることの自動化が重要だが、その代表例が入荷業務におけるデパレタイジングだろう。CEATECの展示でPFNの技術に注目し、2019年ごろからデパレタイジングの自動化に向けて協業を進めてきた」と説明する。

 PFNとPALの協業では、PFNが提供するデパレタイジングロボット用コントローラーを用いて両社でデパレタイジングシステムをパッケージ化し、これを顧客の現場に最適な形でPALが納入するという役割分担になっている。芦田氏は「荷物が積載されているパレットから、最速ルートでかご車やコンベヤーに荷物を載せられるように、施設レイアウトなども考慮した上でシステムを納入する。このシステムのパッケージ化において、物流現場の実業務に詳しい当社の知見やノウハウを活用できる」と述べる。

デパレタイジングシステムのイメージ デパレタイジングシステムのイメージ(クリックで拡大) 出典:PFN
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