製造業×品質、転換期を迎えるモノづくりの在り方 特集
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» 2021年07月05日 06時30分 公開

三菱電機は検査不正の連鎖を断ち切れるか、杉山社長が新体制に託し辞任へ品質不正問題(1/2 ページ)

三菱電機は長崎製作所が製造する鉄道車両用空調装置などにおける不適切検査の調査結果について説明。1985〜2020年にかけて約80社に納入した約8万4600台の鉄道車両用空調装置など対象。同社 執行役社長の杉山武史氏は、新たな経営トップの下での調査実施と再発防止に向けて社長を辞任する方針を明らかにした。

[朴尚洙,MONOist]
三菱電機の杉山武史氏 三菱電機の杉山武史氏。社長を辞任する方針を明らかにした(写真は2021年6月3日の経営説明会のもの) 出典:三菱電機

 三菱電機は2021年7月2日、オンラインで会見を開き、同社の長崎製作所(長崎県時津町)が製造する鉄道車両用空調装置などにおける不適切検査の調査結果について説明した。不適切検査を行っていたのは、鉄道車両用空調装置が1985〜2020年にかけて約80社に納入した約8万4600台と、ドアやブレーキに用いる鉄道車両用空気圧縮機が直近15年で約20社に納入した約1500台。また、同社 執行役社長の杉山武史氏は、今回の不適切検査が2018〜2019年度に行った「品質保証体制の再点検(全社再点検)」の際にも報告されなかったことに加えて、外部の弁護士などを含む調査委員会の活動を新たな経営トップの下で実施できるようにするため、社長を辞任する方針を明らかにした。

 杉山氏は会見の冒頭で「当社の品質に関する不適切行為は、これまで3回、当社および当社子会社の点検を実施してきたが、その後も複数の品質事案が発生しており、自ら発見、是正できなかったことは誠に申し訳ない」と陳謝した。

 特に、3回目となる2018〜2019年度にかけて実施した全社再点検では、2016年度と2017年度の2回の点検における反省を踏まえて、三菱電機の国内全事業所と子会社121社を点検対象とした上で、同社部門と子会社自身による品質データの実地確認と、同社監査部、経営企画室、品質保証推進部、研究所などで構成した社内点検チームによる客観的な検証を実施していた。ただし、この全社再点検は、全社の品質を統括する生産システム担当執行役がトップとなり、第三者は入らず自社内で完結する形で行われた。この全社再点検の体制を決定したのは、2018年6月に執行役社長に就任した杉山氏である。

 今回の長崎製作所における不適切検査が、この全社再点検では見つけられなかったことを受けて、2021年7月2日付で社長を室長とする緊急対策室の設置を決めた。同室では、不適切事案の事実調査、真因究明と再発防止策の策定に加え、品質風土改革を実行していくことになるが、今回は社外弁護士を委員長とする調査委員会を設けるとともに、監査委員会とも連携しながら、社外視点を入れた実態解明を進めていく体制に改める。

品質風土改革に向けた体制 品質風土改革に向けた体制(クリックで拡大) 出典:三菱電機

 これら品質風土改革に向けた新たな体制では、まずは長崎製作所における不適切検査の詳細な調査結果と再発防止策を同年9月をめどに行う予定。これと並行して、全社各部門の調査を並行して実施し、完了したタイミングで極力速やかに公表するとしている。

 杉山氏は、今回の長崎製作所における不適切検査を見つけ出せなかった前回の全社再点検の体制を決定したことの責任を取るとともに、品質風土改革に向けた新たな体制の中核となる緊急対策室の室長には新社長が就くべきとして、社長職の辞任を決断したという。今後は、正式に杉山氏の辞任と新社長の選定が取締役会などで進められるが、それまでは杉山氏が社長職と緊急対策室の室長を兼任する。

 杉山氏は「2021年2月に創立100周年を迎えられたのは、ひとえに顧客や社会をはじめとする全てのステークホルダーからの信頼があったからこそだ。しかし、品質問題、労務問題、不正アクセス問題など、異なる性質の問題が立て続けに発生し、皆さまからの信頼を損ねていることを社長として厳粛に受け止めるとともに、責任を痛感している。2018年の社長就任から現在までの経緯を踏まえ、社長であり続けるべきかどうかを自問したが、結論として社長を辞任し、新しい体制で信頼回復に取り組んでいくことが必要との判断に至った。信頼回復には相当の時間を要すると思うが、新たな社長の下、社内外の意見にしっかり耳を傾けながら変革に取り組んでほしい」と述べている。

35年にわたった不適切検査はなぜ見過ごされてきたのか

 今回の不適切検査が判明したきっかけは、2021年6月初旬に行った検査の自動化/IT化投資に向けた長崎製作所内における鉄道車両用空調装置の検査工程の調査だった。この調査が進む中で、6月14日に不適切検査の存在が認識され、そこから所内調査・検証、関係者ヒアリングが進められた。6月25日の段階で、経済産業省と顧客に鉄道車両用空調装置の不適切検査を報告したものの、6月28日の2次ヒアリングの際に鉄道車両用空気圧縮機の不適切検査の事実が判明。この空気圧縮機の調査を完了してから改めて報道発表すべきと判断し、翌日6月29日の株主総会では既に一部報道が出ていた不適切検査については説明を行わず、6月30日になってから東証開示とニュースリリースを行っている。

長崎製作所における不適切検査発覚から調査の経緯 長崎製作所における不適切検査発覚から調査の経緯(クリックで拡大) 出典:三菱電機

 杉山氏は、報道陣からの、株主総会で鉄道車両用空調装置に絞ってでも早期に不適切検査の説明を行うべきだったという指摘に対して「真摯に受け止めて今後の体制に生かしていきたい」と述べた。

 なお、ここまでの調査は不適切検査による製品の不具合リスクなどを確認するものであり、約35年間不適切検査が見過ごされてきた経緯などについてはまだ調査が及んでいない。今後の詳細な調査は、緊急対策室を中心とする新たな体制で進められることになる。

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