自動車向け炭素繊維複合材の市場は2035年に約9倍に、環境規制強化が後押し材料技術(2/2 ページ)

» 2021年07月19日 06時00分 公開
[齊藤由希MONOist]
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 炭素繊維複合材の加工時に発生する端材を利用した成形加工品の市場規模は、2035年に2020年比5.7倍の804億円に拡大すると予測する。現在は静電部品や家電、自動車などの部品で採用されている。

 端材を利用した成形加工品の市場拡大を後押しするのは、自動車や航空機でリサイクル技術の確立が重視される点だ。自動車では、リサイクル繊維の加工品の品質安定化に向けた技術開発が進む。航空機分野では、エアバスが端材の95%をリサイクル市場に流通させ、残りの5%を航空機部品で再利用する目標を掲げている。短期的にはCFRPの端材が市場の中心だが、中長期的にはリサイクル性の高いCFRTPの端材利用が本格化するとしている。

用途別の見通し

 自動車用では、炭素繊維複合材は軽量化ニーズの高いEV(電気自動車)での採用が中心となっている。主な採用車種がモデル末期で販売が減少している点や、コロナ禍での自動車生産台数の減少により、2020年の市場規模は大幅に縮小した。各国で2030年ごろから強化される環境規制に向けて、2025年ごろから車体軽量化へのニーズが活発化すると見込む。金属と他の素材を組み合わせたマルチマテリアル化により、炭素繊維複合材の需要が拡大する見通しだ。

 航空機用はコロナ禍で大型機体のキャンセルや、大手航空機メーカーでのシステムトラブルによる生産停止、受注のキャンセルなどによって市場が縮小した。しかし、リージョナルジェットやシングルアイル機体の増産が受容をけん引し、2025年ごろに2019年の市場規模を上回ると見込む。オートクレーブ成型から脱却する技術の確立により、量産機体での採用が増えるとしている。

 風力発電用ブレードは、洋上風力発電の増加やブレードの大型化によって高強度で高剛性なCFRPの採用が増えている。コロナ禍の影響は限定的だった。今後はカーボンニュートラルに向けた環境意識の高まりから市場拡大が期待できるという。

用途ごとの市場成長の見通し(クリックして拡大) 出典:富士経済

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