後れを取る日本のデジタル競争力、製造業オペレーションDXの現在地モノづくり最前線レポート(1/2 ページ)

ダッソー・システムズ主催のオンライン年次カンファレンス「3DEXPERIENCE CONFERENCE JAPAN 2021」において、アクセンチュア インダストリーXグループ 日本統括の河野真一郎氏は「製造業オペレーションDXの現在地、デジタル変革の検証フェーズから抜け出しスケールするには」をテーマに、デジタル化の進行状況に関する調査結果の解説とともにDXのPoCから抜け出すためのカギとなる成功要因などを紹介した。

» 2021年07月19日 11時30分 公開
[長町基MONOist]

 ダッソー・システムズ主催のオンライン年次カンファレンス「3DEXPERIENCE CONFERENCE JAPAN 2021」(会期:2021年6月15日〜7月9日)において、アクセンチュア インダストリーXグループ 日本統括の河野真一郎氏は「製造業オペレーションDXの現在地、デジタル変革の検証フェーズから抜け出しスケールするには」をテーマに、デジタル化の進行状況に関する調査結果の解説とともにDX(デジタルトランスフォーメーション)のPoC(概念実証)から抜け出すためのカギとなる成功要因などを紹介した。

弱まる日本企業の競争力

photo アクセンチュア インダストリーXグループ 日本統括の河野真一郎氏

 製造業の労働生産性(労働人口一人当たり付加価値)を比較すると、1990年代から2000年にかけて世界ナンバーワンであった日本の製造業は欧米諸国などに抜かれて、2018年OECD加盟37ヵ国中16位という状況になっている。この原因はデジタル化の遅れ、設備投資額の減少、新製品開発の停滞、配当性向の高まりなどが考えられる。

 加えて、国内生産人口(働く人の数)も減少フェーズに入っている。ほぼピークとなった2000年の国内生産人口は8700万人だが、これが2050年にかけて36%減少する予測がある。生産性が下がっていることと、生産人口が減少することを掛け合わせて考えると、総合的な付加価値は一層の低下が見込まれる状況である。

 また、研究開発費については堅調な伸びを見せるものの、米国、中国、ドイツと比べると見劣りする状況が続いている。現在世界第3位だが、第4位となっているドイツの研究開発費の伸び率は日本の約5倍大きい。河野氏は「現時点での研究開発費は10年後に大きなパフォーマンスの差を生むことになる」と指摘する。さらに、理系人材も減少しており、デジタル活用もなかなか進まない状況だ。

photo 研究開発費の比較(クリックで拡大)出典:アクセンチュア

 こうした状況にあるにもかかわらず、日本企業では約7割がリスクを取る経営に消極的であり、革新的なイノベーションが生まれにくい環境にある。2018年に経済産業省が発行したDX(デジタルトランスフォーメーション)レポートでは、既存システム課題の放置により、2025年以降、最大で年間12兆円の経済損失が生じる可能性を示唆している。その他にも、同レポートには、DX全般にわたって、日本がやるべきこと、そのシナリオなどが細かく記載されている。このレポートを見て、経営者からは「ITコストの抜本的見直し」「データを活用した新ビジネスの発掘」「品質のバラツキの縮小化」などの意見が出てきているところだ。

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