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» 2021年07月21日 11時45分 公開

いまさら聞けない「CO2ゼロ工場」5分で読める簡単解説(1/2 ページ)

「カーボンニュートラル化」が注目を集める中、製造業にとっては工場の「実質的CO2排出ゼロ化」が大きなポイントとなります。本稿では「CO2ゼロ工場」のポイントと実現に向けてどういうことを行うのかを簡単に分かりやすく紹介します。

[三島一孝,MONOist]

 世界各国の政府や企業が「カーボンニュートラル化」を宣言するなど、地球環境問題への取り組みが加速しています。工場を抱える製造業にとってはCO2排出の“実質ゼロ化”は容易なことではありませんが、こうした世界の動きを受け、今本格的に「CO2ゼロ工場(カーボンニュートラル工場)」への取り組みが進み始めています。そこで本稿では「CO2ゼロ工場」のポイントと実現に向けてどういうことを行うのかを簡単に分かりやすく紹介します(※)

(※)カーボンニュートラルに向けてはCO2だけではなく、メタンやN2O、フロンガスなどの温室効果ガスを対象としておりそれぞれに係数などが用意されていますが、ここではあえてシンプル化するためにCO2に絞って話を進めたいと思います。

「CO2ゼロ工場」とは

 「CO2ゼロ工場」とは、CO2排出量が“実質的に”ゼロとなる工場のことを指します。ポイントは“実質的に”という点です。工場で生産活動を行えば必然的に何らかの形でCO2は発生するため、実際にCO2の発生をゼロにすることは不可能です。そこで、太陽光発電システムなど工場で電気を「作る」ことや、植林やCO2を吸収するような技術を使用することで相殺し「工場の活動によりCO2排出量が増えない」という状況を生み出すことを指します。

 CO2排出量を削減するには、「エネルギー消費量」と「CO2排出原単位」を下げていく必要があります。「CO2排出原単位」とは、燃料を燃やしたり電気や熱を使用したりする一定量のエネルギーの使用に対し、CO2がどれだけ排出されるかを示す単位です。つまり、エネルギーの使用量を減らすとともに、CO2排出量が少ないエネルギーの活用へ切り替えていくということが求められているということになります。

photo CO2排出削減のイメージ(クリックで拡大)出典:経済産業省 第3回 グリーンイノベーション戦略推進会議

 「CO2排出量の実質ゼロ」を実現するためには、先述したように、主に使用するエネルギー量を削減する「省エネルギー、エネルギー効率の向上」、電源の脱炭素化により「CO2排出原単位の低減」などに加え、「電力以外のエネルギーを使用する領域の電化」、植林や貯蓄などで大気中のCO2の量を直接削減する取り組みを行う「ネガティブエミッション」などの取り組みが必要だとされています。

 工場での取り組みとしては、「ネガティブエミッション」としての取り組みは限られてきますので、それ以外の3つの取り組みを中心に考えていくことになるでしょう。

工場での具体的な3つの取り組み

 省エネ化への取り組みは工場のコスト削減や、生産性改善などの一環として以前から積極的に取り組まれてきました。エネルギー使用量の削減を進めるためには、工程内の無理、無駄を省くような改善活動が効果を発揮する他、LED照明への切り替えなど、省エネ機器の導入などが積極的に進められています。

 ただ「CO2ゼロ工場」の実現に向けてポイントになっているのが、CO2排出原単位の低い再生可能エネルギーへの切り替えです。工場の屋根や空きスペースに太陽光発電システムを設置したり、地熱発電を利用したりすることで、工場で使用する電力をまかないます。

 再生可能エネルギーは発電効率の面で、工場の電力全てをまかなうほどの発電量を得られないという課題があります。また、再生可能エネルギーは自然由来のものが多く、工場でのエネルギー需要のタイミングと一致するわけではありません。使用したい時に必要分の発電が行えるわけではないという課題もあります。これらの課題を解決するためには「必要エネルギー量に合わせて敷地を用意する」や「蓄電池システムを用意する」ということで解決できる可能性はありますが、費用対効果を考えれば現実的だとはいえません。

 そのため、工場内での再生可能エネルギーの発電量で、工場の電力全てをまかなうということは非常に難しいといえるでしょう。そこで残りの電力を得るために使用されているのが、「再生可能エネルギー100%が保証された電力の調達」となります。「グリーン電力証書」などで保証された再生可能エネルギーを購入することで「使用する電力が再生可能エネルギーで発電されたものだとする」という仕組みです。

 現在CO2の実質排出量ゼロを達成している工場でも多くの電力は、この外部調達に頼っているのが現実です。CO2ゼロ工場達成のためには、以下の3つのステップが基本となっているといえるでしょう。

  1. 改善活動などで使用するエネルギー量全体の削減を進める
  2. 再生可能エネルギーを利活用し化石燃料由来のものと置き換える
  3. 残りの必要電力を外部から調達する
photo パナソニックが全工場のCO2排出量実質ゼロ化に向けて進める取り組みのイメージ(クリックで拡大)出典:パナソニック
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