AutoCAD Mechanical活用で2週間以上要した納入仕様書用外形図作成が最短1日に大洋電機の設計業務改革

船舶/陸上用発電システムメーカーの大洋電機株式会社(以下、大洋電機)は、設計業務の効率化に加え、非常に手間の掛かる納入仕様書の作成負荷軽減に向けて、「AutoCAD Mechanical」を活用した「カスタマイズ機能」による取り組みを推進。かつて1冊分を仕上げるのに2週間以上かかっていた納入仕様書用外形図の作成を最短1日に短縮し、劇的な設計業務の効率化と業務改革を成し遂げた。

» 2021年08月13日 10時00分 公開
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 船舶/陸上用発電システムメーカーの大洋電機。1917年に照明・電気器具店として創業した同社は、漁船用小型発電機の製造で事業を拡大し、その後、大型船舶用発電機の開発や陸上用分野への進出、そして、海外展開なども果たしながら、長年にわたり船舶/陸上用の発電機、制御盤などを手掛け、重電機器・システムメーカーとしての地位を確立してきた。

 同社は本社を置く東京の他、国内事業所として岐阜と群馬にも拠点を構え、それぞれ複数の工場を運営し、多種多様な生産品目に対応している。また、2021年10月から稼働を開始する岐阜県・北方町に建設した新工場への移転に伴い、グループ会社に分散していた生産能力を集約し、生産能力・生産効率のさらなる向上にも取り組む。

 このように年々事業を拡大し、成長を続ける同社だが、高品質な製品を効率良く開発・生産するためには、設計現場の改革も不可欠であったという。

 大洋電機 回転機技術本部で船舶用電動機の設計などに携わる伊藤隆明氏(同社 執行役員 回転機技術本部 副本部長)、森合崇行氏(回転機技術本部 岐阜設計部 岐阜グループ 主任)、渡邊郁美氏(同)に、同社の設計現場がかつて抱えてきた課題や、「AutoCAD Mechanical」※1で実現した「カスタマイズ」による課題解決に向けた取り組みについて話を聞いた。

左から大洋電機株式会社 執行役員 回転機技術本部 副本部長の伊藤隆明氏、同社 回転機技術本部 岐阜設計部 岐阜グループ 主任の森合崇行氏、同社 回転機技術本部 岐阜設計部 岐阜グループ 主任の渡邊郁美氏。岐阜・北方町に建設した新工場前にて 左から大洋電機株式会社 執行役員 回転機技術本部 副本部長の伊藤隆明氏、同社 回転機技術本部 岐阜設計部 岐阜グループ 主任の森合崇行氏、同社 回転機技術本部 岐阜設計部 岐阜グループ 主任の渡邊郁美氏。岐阜・北方町に建設した新工場前にて

※1:AutoCADのMechanicalツールセットは、現在、AutoCAD Plus(AutoCAD including specialized toolsets)に含まれている。詳しくは後述。

納入仕様書用外形図の作成に2週間以上、手作業中心の設計業務

 大洋電機では、岐阜と群馬の2拠点で発電機などを設計製造している。同社は、顧客からの発注に応じて製品を生産する、いわゆる受注生産に対応しており、その都度、細かな仕様などが記載された何枚もの仕様書を1冊にとじた「納入仕様書」を用意する必要がある。船舶用電動機は、船種によっても異なるが、1隻当たり20〜50種類程度の用途に使用され、それぞれの用途に合わせた仕様の電動機外形図を1冊の納入仕様書にまとめなければならない。

 同社が初めてAutoCAD Mechanicalを導入したのは2002年のことだが、「それ以前は、簡易的な描画ソフトで作成した部品図を用いつつ、仕様情報の記入などは手描き中心で行っていました。そのため、当時は1冊分の納入仕様書用外形図を用意するのに最低でも2週間以上はかかっていました」と伊藤氏は当時を振り返る。

 この「2週間以上」という期間に対して、納期短縮を要望する顧客の声に何とかして応えたいという思い、そして、工場の増産体制への移行に伴う設計業務を効率化したいという思いもあったという。だが当時は、顧客から仕様変更や修正の依頼が来れば、仕様書を手描きで修正、あるいは紙のページを丸ごと差し替えなければならなかった。そのため、ミスも誘発しやすく、その対応にさらに工数がかかるといった事態も起こり得た。

 そして、描画ソフトと手作業を中心とした業務にいよいよ限界を覚え始めたころ、CADの本格導入に向けた検討をスタートさせたのだ。

AutoCAD Mechanical導入の背景と採用の決め手

 実は、同社にはAutoCAD Mechanicalを本格活用する以前にも、CADを導入した経験がある。だが、社内導入したライセンス数にも限りがあったことから思うように浸透せず、結果的にあまり使われなかったという。

 この苦い経験を生かし、“まずは現場で使ってもらえなければ浸透しない”ということで、CADソフトの選定をあらためて実施。そのとき、真っ先に頭に浮かんだのが、業界的にも広く普及しているオートデスク株式会社(以下、オートデスク)のAutoCAD Mechanicalだった。データの信頼性も高く、他社とのやりとりもしやすいという点が、AutoCAD Mechanicalを採用する決め手になったという。

 2002年、同じ岐阜県に本社を構える株式会社イマオコーポレーション(以下、イマオコーポレーション)を介して、AutoCAD Mechanicalを約20本導入。ここから、本格的なCAD運用による大洋電機の設計効率化の取り組みが加速していくことになる。

 この先の取り組みを推進していく上では、イマオコーポレーションの存在も大きかった。イマオコーポレーションは、機械部品などの製造販売を手掛ける一方で、オートデスクの販売代理店としてAutoCAD Mechanicalの販売に加えて、導入に向けたコンサルティングやトレーニング、CADカスタマイズサービスなども展開している。リセラーとして、デベロッパーとして、豊富な実績を誇るCADのエキスパートであるとともに、何よりも自身が製造業であることで、これまで培ってきた業務ノウハウや知見を生かしたCADのカスタマイズ提案が行える点を大きな強みとする。

AutoCAD Mechanicalを活用した大洋電機の設計業務改革

 大洋電機はイマオコーポレーションと協力して、まず以前のCADで作成した設計データをDXFファイル形式に変換するプログラムを開発し、AutoCAD Mechanicalを設計環境の基盤として整備。同時に、イマオコーポレーションのトレーニング支援を受け、AutoCAD Mechanicalの基本操作を習得しながら現場への浸透を図った。

 また、設計の標準化も推進。本格的なCAD導入を成し遂げ、CADデータでの社内承認などが当たり前となった2013年には、カスタマイズによる作業の自動化にも取り組んだ。具体的には、イマオコーポレーションと開発した「自動作表システム」を導入したことによって、かつて2週間以上もかかっていた納入仕様書用外形図の作成を劇的に効率化したのだ。

新工場内にある岐阜設計部のフロアの様子 新工場内にある岐阜設計部のフロアの様子

 自動作表システムは、設計者がExcelシート上に入力した電動機の仕様をCSVファイル形式で出力し、それをAutoCAD Mechanicalで読み込んで、寸法などの設計情報を反映した部品図を仕様書として自動生成するというものだ。併せて、電流値や特性データなどの仕様情報を記した表も自動的に組み込まれ、ケーブル表やオプションなど、必要な情報も自動で添付される。CSVファイルを読み込んだ後の、一連の自動作表の仕組みがAutoCAD Mechanicalを活用したカスタマイズ機能によって構築されている。

 その効果は絶大で、伊藤氏は「手描きが中心だった当時、納入仕様書用外形図の作成に2週間以上かかっていたものが、AutoCAD Mechanicalの導入、そしてカスタマイズ機能のおかげで、最短1日で完了できるようになりました。また、自動化によって人的ミスも減り、1枚ずつ隅々までチェックする必要もなくなり、確認や承認のプロセスも劇的に効率化できました」と高く評価する。設計者自身も効率化によって生まれた時間を、新製品や特注品の設計などに割り当てられるようになった。

「自動作表システム」による出力イメージ 「自動作表システム」による出力イメージ

 伊藤氏の下で設計業務に当たる森合氏と渡邊氏は、自動作表システムが導入された後に大洋電機に入社している。幸いにして、それ以前の苦労は知らず、それが当たり前である中で日々忙しい業務をこなしている。

 AutoCAD Mechanicalについて、森合氏は「大学で他のCADを使用していましたが、AutoCAD Mechanicalはそれよりも格段に使いやすいCADだと感じています。特にブロックの機能は干渉確認にも使えて重宝しています」と述べる。実は、自動作表システムを実現するに当たっても、AutoCAD Mechanicalのブロック機能は重要な役割を果たしている。一方、渡邊氏は入社するまでCADに触った経験がなく、その当時、業務に対する不安もあったというが、「CAD操作そのものに精通していなくても自動作表システムのおかげで、部品図の作成や仕様確認が簡単にできて非常に助かりました」と話す。単に業務を自動化するだけでなく、スキルギャップを埋めるという効果も自動作表システムはもたらしている。

さらなる業務効率化に向けて

 その後、2019年に群馬工場でもAutoCAD Mechanicalを12本導入。岐阜と群馬の設計現場のCADはAutoCAD Mechanicalに統一され、納入仕様書の作成もより効率的に行えるようになった。また、サポート窓口もイマオコーポレーションに1本化し、群馬拠点への自動作表システムの展開もスムーズに行われた。

 そして、現在、大洋電機では2022年の運用開始を目指し、自動作表システムのパフォーマンス向上と機能強化を計画している。例えば、AutoCAD Mechanicalをよりカスタマイズして最適化することで、処理速度の向上を図りたい考えだ。導入済みの「Product Design & Manufacturing Collection」にあるツールをさらに積極活用することも検討していく。また、顧客要望に対してより柔軟に対応できるシステムとして構築することで、適用の幅やさらなる業務効率化を狙う。



 以上、大洋電機の自動作表システムを中心とする業務効率化の取り組みは、AutoCAD Mechanicalのカスタマイズ機能によってなし得たものだ。もし、同じように設計業務の改革を目指すのであれば、大洋電機の事例は大いに参考になることだろう。その際、ポイントとなるのが言うまでもなくAutoCAD Mechanicalの存在だ。

 実は2021年5月に、オートデスクは日本市場向けにAutoCADの提供について戦略的な見直しを行った。注目すべきは従来の「AutoCAD LT」の提供価格はそのままに、業種別ツールセットを除くAutoCADのフル機能が使えるという点だ。具体的には3Dモデリングやビジュアライゼーション、VBAやAutoLISP、ObjectARX、.NETなどのAPIを使ったカスタマイズなどがAutoCAD LTの価格で新たに利用可能となった。大洋電機がメインで使用しているMechanicalツールセットを含んだ「AutoCAD including specialized toolsets」の構成に変更はないが、「AutoCAD Plus」という通称が付いた。機械設計の効率化のためにMechanicalツールセットを使いたければ、AutoCAD Plusを選べばよい。

 AutoCAD LTでは実現できなかったAutoCADのフル機能を魅力的な価格帯で利用できるようになった点はぜひ押さえておきたいポイントだ。また従来通り、業種に特化した専用機能による設計効率化を図りたいのであれば、AutoCAD Plusを選択することができる。ご興味のある方は30日間の無償体験版(AutoCADAutoCAD Plus)を試してみたらどうだろう。AutoCADについては使い方のチュートリアルも用意されているので、順を追って機能の確認ができそうだ。

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提供:オートデスク株式会社
アイティメディア営業企画/制作:MONOist 編集部/掲載内容有効期限:2021年8月27日