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» 2021年08月27日 09時00分 公開

モビリティでリアルタイム情報収集を実現、AI活用でさらに強力なツールに製造業DXが生む3つの価値(1/2 ページ)

製造業でも多くの関心が寄せられている「DX」。前回連載の「製造業に必要なDX戦略とは」では、製造業におけるDXへの取り組み方を3つ例に挙げて解説した。本連載では、DX基盤を構築したその先で、具体的に「何が実現できるのか」を紹介する。

[栗田巧/Rootstock Japan,MONOist]

 本論に入る前に製造業DX(デジタルトランスフォーメーション)関連の話題として、2021年7月27日に実施されたマイクロソフトとグーグル(その親会社であるアルファベット)による決算説明会の内容を紹介させてください。これらの説明会では、この世界で最も強力で影響力のある2つの企業のCEO(最高経営責任者)が、新しいデジタル世界秩序形成における、「AI(人工知能)」の潜在力と可能性について言及しています。

 アルファベット CEOであるサンダー・ピチャイ(Sundar Pichai)氏は冒頭のあいさつでAIの技術開発を最優先事項とすると語りました。数年前、アルファベットは新たな検索アルゴリズム「MUM(Multitask Unified Models)」の開発に着手しました。アルファベットはMUMによって検索エンジンは1000倍も強力になり、75の言語を学習し知識を伝達する能力を得ると発表しています。また、深層学習用アーキテクチャ「Transformer」をベースとしたAI会話技術「LaMDA」の運用実績、またアルファベットの子会社DeepMindの新技術開発についても報告しました。

 一方で、マイクロソフト CEOであるサティア・ナデラ(Satya Nadella)氏は、AIとクラウド型ERP(基幹システム)「Dynamics 365」の結び付きについて言及しました。マーケティング&セールス、カスタマーサポート、サプライチェーンなど、あらゆるビジネス領域のシステム、機能が「AIファースト」の号令の基、再構築される必要があるという内容です。中でも興味を引かれたのが、今までのビジネスアプリケーションが過去に起こったことを記録、集計するものだったという話です。1990年代から多くの需要予測ツールがリリースされていますが、正直なところ、かなり限定的な精度に止まっています。今後、AIの進化に伴い、明日や来月、四半期先に起きる出来事をそれなりの確度で予測することができるようになるかもしれません。

グーグルとマイクロソフトのAI開発の方向性は違うようだ

 非常に面白いのは、同じAI技術といってもアルファベットは検索や会話向けのAIを、マイクロソフトは予測分析向けAIの開発などを目指しており、方向性がかなり異なるところです。多くの企業が1つの技術テーマに対して異なるアプローチをすることが、技術進歩のポイントなのかもしれません。


リアルタイムでの情報収集を実現する仕組み

 少し長くなりましたが、本題に入りましょう。今回お話しするのはモビリティについてです。

 モビリティとは、「可動性」「移動性」「動きやすさ」などの意味で、一般的には乗り物や人の移動に関する用語として使用されていますが、ここではシステム運用の可動性という意味とお考えください。

 モビリティの目指すところは何か。端的に言えば、本社を含めたオフィスや工場などの国内外拠点、また社内外を問わず、「いつでもどこにいても判断ができるシステム環境」ということになるでしょう。必要な情報というのは、販売管理情報や生産管理情報、品質管理情報などが該当します。トレーサビリティーシステムを構築する場合には、これらの複数情報を組み合わせる必要もあるでしょう。いずれにしても、経営判断に必要な情報に迅速にアクセス可能な環境を整備することが求められているのです。

 ここで注意したいのは、「どこからでもアクセスできる」という点に引っ張られて、モビリティの最終目標をERPへの外部接続の実現だと捉えてしまうことです。コロナ禍の中で「いつでもどこからでもつながる」システム運用への注目度は高まりを見せています。しかし、VPNなどを介してデータセンター上のシステムに外部接続することや、ローカルサーバにリモートアクセスするシステム自体はずっと以前から存在しており、新規のものではありません。

 一番重要なことは、リアルタイム性の追求であり、それを実現するためのアーキテクチャの採用です。従来は、自社を取り巻く状況を素早く認識するためには、販売管理や設計管理、ERP、品質管理やその他システムをインテグレーションして、統合システムを開発することが一般的でした。例えばBI(ビジネスインテリジェンス)ツールを用いて、複数の管理データを統合すれば、KPI(重要業績評価指標)分析などに活用できるでしょう。しかし、残念ながらダッシュボードに表示されているのは最新状況ではなく、過去の情報です。これではリアルタイムに重要な判断を行うのは難しいと言わざるを得ません。

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