GR86と新型BRZでさらなる盛り上がり、ワンメイクの「86/BRZレース」とはモータースポーツ超入門(9)(2/3 ページ)

» 2021年08月27日 06時00分 公開
[福岡雄洋MONOist]

 モータースポーツはレギュレーション(規則)の範囲内でベース車両を改造し、エンジンの出力特性や走行性能、ブレーキ性能、ボディー剛性などを高め、ライバルよりコンマ1秒でも早く走るためのチューニングを施すのが一般的だ。ところが、86/BRZレースで認められている改造範囲は極めて最小限にとどまる。それはイコールコンディションを維持するために他ならない。同レースを統括するトヨタカーズ・レース・アソシエイション(T.R.A)によって細かな車両規定が定められている。

 「道路運送車両法の保安基準に適合した有効な自動車検査証(車検証)を有し、本競技規定・車両規定に定められていない項目は、競技中においても保安基準に合致する状態でなくてはならない」。86/BRZレースの車両規定の冒頭にはこう記載されている。レーシングカーでありながらも、公道が走行できる仕様でなくてはならないということが記されているわけだ。

 改造は広範囲で規制されている。「エンジン・エンジン補機類」「電気系統」「吸排気系」「冷却系統」「駆動系」「制動装置」「サスペンション」「タイヤ・ホイール」「車体」など規制はあらゆるパーツに及ぶ。

【エンジン・エンジン補機類】

 パワーアップにつながるエンジンの加工、変更はもちろん禁止。フライホイールやオイルポンプも改造はできない。変更できるのはオイルフィルターとオイルフィラーキャップだけだ。

【電気系統】

 オルタネーター、点火プラグ、ECUの加工、変更は禁止。ボディーアース線の追加や加工、変更も認められていない。

【吸排気系】

 吸排気系の改造はチューニングの基本だが、86/BRZレースではこの領域にも規制が入る。吸排気マニホールド、マフラー、排気管の改造は禁止。ただ、エアクリーナーに関してはT.R.A認定部品への交換が可能となっている。

【冷却系統】

 エンジンを高回転まで回すレーシングカー。冷却系統の強化は必須だが、ラジエーター、サーモスタット、オイルクーラーの変更、加工は禁止。その中でも水温を計測する温度センサーの取り付けに伴う最小限の加工は認められている。

【駆動系・ディファレンシャル】

 規制が多い部品の中で、変更自由度の高いのが駆動系だ。クラッチディスクとカバーの変更は自由。シングルタイプに限り変更が認められている。トランスミッションについてはT.R.A認定部品が使用できる。ディファレンシャルも認定部品が使えるが、最終減速比の加工、変更の改造は認められていない。

【制動装置】

 ブレーキ性能の強化はラップタイムの短縮に直結する。それだけにブレーキパーツの加工、変更も規制されている。キャリパーとローターの改造は禁止。消耗部品でもあるパッドのみ変更可能となっている。ただ、冷却性能を高めるダクトについては、安全確保の観点からT.R.A指定部品の使用が義務付けされている。

【サスペンション】

 操縦安定性を高めるサスペンション廻りはスプリング、ショックアブソーバーのみT.R.A認定部品の使用が認められる。一方、スタビライザーについては加工、変更は不可能となっている。

【シャシー・車体】

 最低地上高は9cm以上を確保しなければならない。全長、全幅の変更はできないが、ラバーマウント、ブッシュについてはT.R.A認定部品の使用が認められている。空力性能の向上につながるバンパーやエンジンアンダーカバーの追加や加工、変更は不可。ボディーを補強するための充填剤の使用などは一切禁止となっている。ただ、フロントストラットタワーバーだけは装着が認められる。シートについては運転席、助手席ともに変更可能。フルバケットシートの使用は運転席のみ可能となっている。ステアリングホイールは変更できない。

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