「自動車100年に1度の変革期」で枯渇する開発リソースをいかに補うのかCASE時代の開発力

自動車業界に「100年に1度」の変革期が訪れる中、クルマやモビリティの概念が大きく変化しようとしている。こうした中で自動車関連メーカーには、多岐にわたる技術開発が求められ、これら全てを自社内で開発するのが難しくなりつつある。この変革期に求められる開発体制をどのように構築していくべきだろうか。

» 2021年09月01日 10時00分 公開
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 自動車業界はCASE(コネクテッド、自動運転、サービス/シェアリング、電動化)などを含む大変革期に巻き込まれている。その中で、多くの自動車関連メーカーが頭を悩ませているのが、膨大な開発リソースが必要になる中で開発体制をどのように構築するのかという点である。

 特に、各国政府などがエンジン車に対する期限付き規制強化の姿勢を強める中で、電動化に向けた開発強化は全ての自動車メーカーにとって大きな課題となっている。ただ、移行期においては、ガソリン車やEV(電動車)、HEV(ハイブリッド車)、PHEV(プラグインハイブリッド車)、マイルドハイブリッド車など、さまざまなプラットフォームを並行展開する必要があり、開発リソースを順番にシフトすることが難しい状況だ。自社内のみの開発リソースで全てのプラットフォーム開発が難しくなる中、注目を集めているのが、外部のエンジニアリング企業の活用だ。

計測、シミュレーション、エンジニアリングの3つを支援

 こうした業界の動向を背景に、電動車の開発支援を強化するのが、オーストリアのAVLである。AVLは1948年創業の自動車向けの独立系エンジニアリング企業だ。全世界に1万1000人の従業員を抱え、その内の65%がエンジニアだという。パワートレインシステムを中心に、開発、シミュレーション、試験を行う。ガソリンエンジンでの開発支援では既に日本でも多くの実績を持つ。さらに現在は電動車向けの支援を強化しているところだ。

photo エイヴィエルジャパン パワートレインエンジニアリング事業部の相木宏介氏

 AVLの特徴が、自動車開発を支える3つのサービスを全て備えているという点である。パワートレイン開発を直接支援するPTE(Powertrain Engineering)サービスの他、計測器の販売や計測サービスなどを展開するITS(Instrumentation and Test Systems)サービス、シミュレーションテストの販売やサービスを展開するAST(Advanced Simulation Technologies)サービスという3つの事業を展開している。

 AVLの日本法人であるエイヴィエルジャパン パワートレインエンジニアリング事業部 の相木宏介氏は「計測、シミュレーションまでを内部に抱えているエンジニアリング企業は少なく、これら3つのシナジーを発揮できることがAVLの特徴です。実機での計測とシミュレーションを組み合わせ、その結果をエンジニアリングに反映させるようなことが可能で、開発リードタイム削減などに貢献できます」と強みについて語っている。

リアルからバーチャルまで一元化した開発基盤

 こうした強みを、システムとして具現化したのが「IODP(Integrated and Open Development Platform)」である。これは、開発モデルとシミュレーションモデル、テストベッドによる実機テスト結果などを一元的に管理する開発プラットフォームだ。バーチャルとリアルを緊密に連携させ、オープンな開発エコシステムを構築する。コンセプトデザインから車両の使用段階に至るまでの全ての段階でシステムとしての接続性を確保しデータの共有を可能としている。

 EV開発では、電池性能と走行距離の問題や、EV独自の乗り心地の開発など、まだまだ正解例のない領域も残されている。これらの領域で、連携されたデータを活用しながら、テストと検証を高速に回転させることで、より高品質な開発を短いリードタイムで実現することが可能となる。

 AVLの特徴はさらに、これらを実現するツールも自社開発で数多く備える点だ。1D/3Dのソフトウェアやモデルおよびハードウェアをつないで連成計算するためのプラットフォームである「Model.CONNECT」や、シミュレーションモデルをリアルタイムシステムにスムーズに接続する「Testbed.CONNECT」、設備や車両搭載コントローラーなどのデバイスを相互にリンクさせてモニタリングする「Device.CONNECT」などを用意し、リアルとバーチャルを緊密に連携させた開発を行えるようにしている。

 相木氏は「リアルでの計測やバーチャルでのシミュレーション、エンジニアリング力を全て持つからこそできる仕組みです。それぞれのツールも自社開発しており、新たな車両開発に必要な計測器やシミュレーションツールから開発支援を行うことができます」と技術力を強調する。

photo 「IODP(Integrated and Open Development Platform)」によるシステムイメージ(クリックで拡大)出典:AVL

国内でのEV用テスト環境も用意

 AVLではこれらのリアルとバーチャルを組み合わせた枠組みを日本でも展開。神奈川県川崎市にはテストセンターであるAVL Japan Technical Center(JTC)を設置し、実機とシミュレーションを組み合わせた開発支援を行う。JTCには、4輪シャシーダイナモメーターによるパワートレインテストベッド、軽負荷用のエンジンテストベッド、重負荷用のエンジンテストベッド、現在準備中のバーチャルテストベッド(HiL)、250kWバッテリーエミュレーターという5つのテスト用エレメントを備えている。

photo AVL Japan Technical Centerのテスト用エレメント(クリックで拡大)出典:AVL

 4輪シャシーダイナモメーターによるパワートレインテストベッドでは、バッテリーエミュレーターにより「250kW、1200V、800A」などの電力環境を構築しつつ走行実証を行うことができる。車輪ごとに260kWの出力が可能で、3000RPMの回転数でのテストが可能だ。「基本的な走行環境をイメージしたテストが行えます」(相木氏)としている。

 また、Eドライブテストベッドでは、バッテリーとインバーター、モーターを接続し回転数や動きなどを試験できる。AVLではさらにこれらを進化させ、さまざまな計測データの収集とテストの制御を一元的に管理し、自動化できるシステムなどを用意している。テストベッドの自動運転システム「PUMA」や、データの統合システム「INDICOM」、1つのデバイスでモジュールを入れ替えることでさまざまなデータを計測できる計測装置「X-ion」などを駆使し、テストそのものの効率化やデータ活用の容易化などを実現している。

photo AVL Japan Technical CenterのEドライブテストベッド(クリックで拡大)

 「自動車開発における検証は、そのものが大きな負荷となる一方、求めるデータを最適な形で取得することが難しいケースもあります。データ活用の前に必要な時間を削減できるツールやシステムを用意し、さらにテストそのものの自動化なども行えるようにすることで、テストの人的コストや期間的なコストを削減できるようにし、開発リードタイムの削減を実現できます」と相木氏はその価値について述べている。

モジュラーバッテリーなど部品をパッケージ化して提供する動きも

photo カセットタイプの電動車用モジュラーバッテリー(クリックで拡大)

 これらの開発環境そのものの支援に加えて、AVLでは開発期間の短縮につながる共通領域について、最適化したパーツの提供なども行う。その1つの例がカセットタイプの電動車用モジュラーバッテリーである。1つのモジュールの中に18650ベースのバッテリーセル192個が入っており、システム電圧700Vでクルマのスペックに応じて、カセットを追加することで電池容量を決めることができるというものだ。

 「既に特殊車両での試験なども進んでいます。1つの1つの車種で電池周辺のシステム開発を一から行うことは負荷が大きすぎる状況がある車両では、パッケージとして組み込むことで電動化ができるというモジュラーパッケージは評価を受けています」と相木氏は述べる。

photo 電動アクスル(クリックで拡大)

 さらに、48V電動アクスルもパーツとして用意する。電動アクスルは、駆動用モーターとインバーター、減速機やデフ、ハウジングなどのギアボックスを一体化したものだ。電動化が加速することで、個別で電動パワートレインの開発を行う負荷が高まっているために、これらを一括で外注するような動きも増えてきており、これらに対応するために用意したという。こちらについても「既に欧州ではテストを行っています。日本でも今後訴求していきたいと考えています。低コストのHEVではニーズはあると考えています」(相木氏)とする。電動アクスルについては、48V仕様だけでなく高電圧化した400Vや800Vタイプもラインアップとして用意している。また、最近は駆動用モーターの回転数を3万rpmまで高回転化した小型かつ高効率なものも開発しているという。

「協調領域」については外部リソースを有効活用する時代に

 日本の自動車業界では、内部での開発が基本となっており、外部のエンジニアリング会社を活用するケースは他の地域に比べて少ないが「電動化だけをとっても各メーカーの開発負荷は高まっています。その中で全てを自社開発するというのは現実的ではなくなってきています。さまざまな技術領域で開発の優先順位を付けて取捨選択していく動きが今後さらに広がってきます」と相木氏は今後の市場を展望する。

 一方で、これらの技術的な枠組みの変革とともに、商流としても新たに自動車業界に関わる企業が増えたり、既存のサプライヤーが業容を変革したりするなどの動きも生まれている。ただ、こうした企業にとっては、自動車業界への深い知見がないためさまざまな課題を抱えているのが現実だ。

 相木氏は、こうした市場変化に対し「差別化につながらない領域については、外部のリソースを使うことで、自社の開発リソースを有効活用できます。AVLは、リアルとバーチャルを組み合わせた高度な試験環境やエンジニアリングの技術力により、効率的で高度な開発を支援することができます。また、新たな参入企業に対してもグローバルのネットワークも含めて、70年以上自動車業界に関わってきた知見を含めたサービスや製品を提供できます。これらの支援を通じて、日本の自動車業界における開発効率化や価値創出に貢献していきます」とその価値を強調する。

 「100年に1度」の変革期とされる自動車業界で、あらゆる開発を滞りなく進めるためには自社の競争力に直結する「競争領域」と、差別化につながらない「協調領域」に分け選別していくことが求められている。そして、「協調領域」については徹底的に自社リソースを消費しない形で既存技術の活用や外部リソースの活用を進めていくことが必要だ。その中で、自動車業界への長年の深い知見を持ち、電動化におけるさまざまな開発支援環境を持つAVLは変革期に伴走する貴重なパートナーになり得るといえる。

エイヴィエルジャパン

URL:http://www.avl.com

問い合わせ先:Marketing.Japan@avl.com


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