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Moxaは「ネットワーク防御」で現場を守る、次世代産業用ファイアウォールを発表産業制御システムのセキュリティ

Moxa Japanが次世代産業用ファイアウォール「EtherFire IEF-G9010シリーズ」を発表。工場など現場のサイバーセキュリティ対策で最適な「ネットワーク防御」に求められる最新の機能を搭載していることが特徴。新製品などの投入と併せて、日本国内の産業ネットワーク市場における事業展開も拡大していく方針だ。

» 2021年09月02日 08時00分 公開
[朴尚洙MONOist]
Moxa Japanの長澤宣和氏 Moxa Japanの長澤宣和氏。手に持っているのが新製品の「EtherFire IEF-G9010シリーズ」だ

 Moxa Japanは2021年8月31日、オンライン展示会「ITmedia Virtual EXPO 2021 秋」(会期:2021年9月1〜30日)の新製品発表会において、次世代産業用ファイアウォール「EtherFire IEF-G9010シリーズ(以下、EtherFire)」を発表した。工場など現場のサイバーセキュリティ対策で最適な「ネットワーク防御」に求められる最新の機能を搭載していることが特徴。新製品などの投入と併せて、日本国内の産業ネットワーク市場における事業展開も拡大していく方針だ。

 新製品のEtherFireは、産業ネットワーク全体を小さな複数のネットワークに分割するネットワークセグメンテーション用のコンパクトな産業用ファイアウォールである。ネットワークのセグメント化によって、攻撃の対象となるネットワークの範囲を縮小し、管理の容易化やきめ細かなアクセス制御によってネットワーク防御を実現する。Moxa Japan IIoT 事業開発マネージャの長澤宣和氏は「工場などの現場において、ITセキュリティで広く用いられてきたアンチウイルスソフトウェアなどによる『エンドポイントプロテクション』は難しい。どうしても互換性の問題やパフォーマンスの問題が出てしまう。そこで当社は、現場のサイバーセキュリティ対策として、ネットワークを起点に守るネットワーク防御が最適だと考えている」と語る。

エンドポイントプロテクションは難しい最適なのはネットワーク防御 現場における「エンドポイントプロテクション」は難しい(左)。最適なのは「ネットワーク防御」だという(右)(クリックで拡大) 出典:Moxa Japan

 さらに、EtherFireは、アプリケーションの要件に基づいて産業用プロトコルをフィルタリングし、ユーザーがネットワークトラフィックをよりきめ細かに制御できる、高度なディープパケットインスペクション(DPI:Deep Packet Inspection)技術を採用している。これにより、重要なコントローラーに対して制御システムトラフィックのきめ細かいコマンドを提供する産業用プロトコル認識機能を提供できる。また、MoxaのDPIは、トレンドマイクロとの合弁企業であるTXOne Networksが開発した技術を用いており、工場のサイバーセキュリティ対策で課題として挙げられがちなレイテンシを500μs以下に抑えられるという。

ディープパケットインスペクション機能のレイテンシは500μs以下 ディープパケットインスペクション機能のレイテンシは500μs以下(クリックで拡大) 出典:Moxa Japan

 EtherFireの外形寸法は幅64×奥行き105×高さ135mmで、既存のPLCなどと並べて運用できる寸法に収まっている。ギガビットイーサネットポートはSFP対応×2、通常ポート×8があり、産業用スイッチとして運用できる機能を備えている。産業ネットワークでも求められるようになっているNAT(ネットワークアドレス変換)にも対応する。また、Moxaが同社の産業ネットワーク製品と併せて展開しているセキュリティ管理プラットフォーム「Security Dashboard Console(SDC)」を併用することで、一元的な可視化やネットワーク解析、パターンファイルの自動更新などの保護機能も提供可能になる。

「EtherFire」の機能と特徴「EtherFire」の機能と特徴 「EtherFire」の機能と特徴(クリックで拡大) 出典:Moxa Japan

 動作温度範囲とパターンファイル(ウイルス定義ファイル)の更新ライセンスが異なる「IEF-G9010-2MGSFP-Pro」「同Pro-T」「同Pro-H」「同Pro-H-T」の4モデルをラインアップした。動作温度範囲は、ProとPro-Hが−10〜60℃、Pro-TとPro-H-Tが−40〜75℃。ProとPro-Tは、1年間のパターンファイル更新ライセンスが付属している。

国内事業拡大に向けてパートナーネットワークを広げる

Moxaのチャールズ・チェン氏 Moxaのチャールズ・チェン氏

 Moxa Japanの親会社である台湾Moxaは、産業ネットワーク分野で30年以上事業を展開してきた企業だ。世界中で5000万台以上のデバイス接続実績を持ち、シリアル接続のサプライヤーとして世界トップ、産業用イーサネットインフラストラクチャのサプライヤーとしても世界3位に入るという。

 そのMoxaが日本法人のMoxa Japanを立ち上げ、今回発表のEtherFireを投入するなど事業展開を強化している。この狙いについて、Moxa Asia & Pacific Directorのチャールズ・チェン(Charles Chen)氏は「日本の産業ネットワーク市場は年率20%で成長しており、これは他地域の成長率10%の2倍に当たる。また、日本政府が推し進めるデジタル化施策でも、FA分野でMoxaの製品は大きく貢献できる。Moxaにとって日本に投資するのは、今が最適なタイミングだと考えている」と説明する。

 日本国内の事業拡大に向けてパートナーネットワークを広げていきたい考えだ。現在、Moxa Japanの国内販売代理店は3社あるが、重要顧客への浸透に向けたソリューションパートナーを今後3年間で15社を目標に増やしていく。ソリューションパートナーの例としては、関西エリアをはじめ地域での展開に強いパートナーや、自動車や化学などの各産業分野に強いパートナーなどを検討している。

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