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» 2021年09月06日 11時00分 公開

工業が縮小する工業立国である日本、歪な「日本型グローバリズム」とは「ファクト」から考える中小製造業の生きる道(7)(3/7 ページ)

[小川真由/小川製作所,MONOist]

日本企業における海外事業は右肩上がりに成長

 さて、今回のテーマの「企業のグローバル化」について話を進めたいと思います。皆さんは企業のグローバル化というとどのようなことを思い浮かべるでしょうか。

 企業のグローバル化には大きく3つの側面があります。1つ目は輸出や輸入など海外との取引である「貿易の活発化」です。こちらについては主に前回取り上げました。日本の場合、年々貿易額は増えていますが、経済活動全体に占める割合は小さく、先進国の中では「貿易が少ない国」だといえます。

 2つ目は、企業の株式の中で外国資本が存在感を増す「企業所有の国際化」です。日本も外国人投資家の存在が大きくなっているといわれています。この点については、いずれ機会があれば取り上げていきたいと思います。

 そして3つ目が、企業の海外事業の活発化による「企業活動の多国籍化」です。企業が多国籍化し、本社の所在する国とは半ば独立して事業活動を広げています。今回はこの企業活動の多国籍化に焦点を当ててみましょう。

 企業の多国籍化は、企業が本社の所在する国と異なる外国で事業を行うことを意味しますが、具体的には「支店」と「現地法人」の2つの手段があります。近年では、現地法人を設立した多国籍化が増えているようです。

 本社企業からすると、現地法人でビジネスをすることで、その利益を配当金として還流させることが可能で、この配当金は営業外利益として利益に加算されます。本社企業には当然、税引き前の当期純利益に対して法人税などが課されますが、この配当金に対しては「受取配当金等の益金不算入」という制度が適用され、日本では税金がほぼ課せられません(もちろん現地国では納税しますので、2重課税を避けるという意味です)。

 このように、企業の多国籍化は、本社企業にとっては海外に活動の幅を広げるとともに、その果実を本社にも還流させる手段となります。日本では、先に取り上げたように国内経済が停滞していますので、新たな市場を求めての海外進出が加速しているといわれています。図5は日本企業の現地法人の状況をまとめたグラフです。

photo 図5 日本企業における現地法人の企業数と常時従業者数の推移(クリックで拡大)出典:「海外事業活動基本調査」を基に筆者が作成

 これを見ると、現地法人の企業数も、現地で雇用された従業者数も右肩上がりで増大しています。2018年の時点では、現地法人が約2万5000社で、約600万人の現地従業者を雇用していることになります。日本の労働者が5000万〜6000万人といわれていますので、その約10分の1にあたる労働者が、日本企業によって海外で雇用されていることになります。

 では、これらの海外現地法人の売り上げや利益は伸びているのでしょうか。図6が日本企業の現地法人の売上高、経常利益、当期純利益をまとめたものです。

photo 図6 日本企業における現地法人の売上高・経常利益・当期純利益(クリックで拡大)出典:「海外事業活動基本調査」を基に筆者が作成

 グラフでは、いずれも右肩上がりで増大していることが見て取れます。日本企業の売上高は全体で1500兆円(法人企業統計調査)ほどですが、1990年のバブル崩壊以降停滞しています。現地法人の売上高が直近で300兆円ほどですので、国内全体の5分の1にあたる規模の事業が、既に海外の現地法人で行われているわけです。日本の国内事業が横ばいなのに対して、海外事業は大きく成長していることが分かります。

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